任意整理の弁護士費用|費用を抑える4つのポイント
任意整理は裁判所を通さない手続きであるため、発生するのは弁護士費用のみです。 しかし、任意整理を検討しているほどお金に困っている状態で、弁護士費用を用意することが難しいと思っている人もいるでしょう。
実は、任意整理をする人のほとんどが弁護士・司法書士に依頼しています。なぜなら、手持ちがなくても以下のように費用を支払う方法あるからです。
- 法テラスを利用する
- 分割払いにする
- 債権者への返済をストップする など
この記事では、任意整理の弁護士費用や、費用を抑えるポイントを解説します。
任意整理の弁護士費用の内訳相場
任意整理の弁護士費用の内訳は、「相談料」「着手金」「減額報酬金」「その他実費」「過払い金報酬金」があり、目安は次の表の通りです。
任意整理の弁護士費用内訳 |
||
相談料 |
1万円程度 |
正式に受任してもらう前に、弁護士に相談した場合に発生する費用。事務所によっては無料のケースもある。 |
着手金 |
3~5万円/1社 |
弁護士に受任してもらった際に一律で支払う費用。 |
解決報酬金 |
2万円程度/1社 |
業者との事件が解決したこと自体により発生する費用。 |
減額報酬金 |
減額できた金額の10%/1社 |
減額できた場合に支払う費用。 |
その他実費 |
- |
その他実費。 |
過払い金報酬金 |
過払い金の20%~25%程度 |
過払い金が発生しており、取り戻せた場合に支払う費用。 |
それぞれの内容を確認してみましょう。
相談料
相談料は、弁護士と法律相談を行った場合に支払う費用のことです。 事務所にもよりますが、初回の相談料を無料に設定している事務所や、メールや電話での相談は無料としている事務所もあります。 相談料は、30分~1時間で5,000円~1万円程度が通常です。
着手金|1社あたり2~4万円
着手金は、仕事を依頼した際に支払う費用です。任意整理を行う業者の数ごとに着手金を設けている事務所が多く、相場として1社あたり2~4万円です。 なお、着手金は依頼後に弁護士を変える場合であっても返金されません。
減額報酬金|減額できた金額の10%
減額報酬金とは、任意整理を行って将来利息がカットできた際に、その減額に応じて支払う成功報酬のようなものです。任意整理の場合、主に利息を免除して浮いた分の10%が減額報酬金の相場です。
また、成功報酬は基本的に1社ごとに発生しますので、複数の業者から借り入れを行っている場合は、その分高くなります。複数の業者から借り入れをしている人は、あらかじめ1社ごとの計算なのか、減額できた金額の合計から10%なのか確認しましょう。
その他実費・日当
弁護士が業者と交渉する際の交通費、通信費、コピー代などが実費として別途必要になる場合があります。 あらかじめ見積もりを確認しておくことで、想定外な高額費用を請求されることを回避できます。
過払金報酬金|過払い金請求をした場合
過払い金が発生している場合、任意整理においては返還請求を行い、元金の充当に充てます。そのため、過払い金がある場合には、減額報酬金のほかに過払金報酬金も発生します。 過払い金の報酬金は回収できた金額の20%が相場です。
任意整理の減額分より弁護士費用が高くつくことは少ない
任意整理によって減額できた金額よりも弁護士費用が高くついてしまっては元も子もありませんが、そのような状況は基本的におきません。
なぜなら、弁護士費用のうち多くを占めるのは減額に応じて発生する成功報酬であり、その成功報酬も減額分の10%程度だからです。
次のような状況で考えてみましょう。
借金額 |
300万円 |
金利 |
18.0% |
任意整理での完済期間 |
5年 |
この場合、5年で完済した場合の利息は157万775円になります。この時の弁護士費用は次の通りです。
相談料 |
1万円 |
着手金 |
3万円 |
減額報酬金 |
15万7,078円(157万775円×10%) |
その他実費 |
1万円 |
合計 |
20万7,078円 |
任意整理によってカットできる利息は157万775円ですが、弁護士費用は20万円程度です。
上記の通り、任意整理による減額分よりも弁護士費用が高額になることは基本的にありません。念のため、依頼前に費用倒れにならないか確認しておくと安心です。
弁護士費用をできるだけ抑える4つのポイント
将来利息分のカットに比べれば、ずいぶんと少ない金額である弁護士費用ですが、それでもまとまった金額が必要になるのには変わりありません。
では、弁護士費用を抑えるためにはどうすればよいのでしょうか。ここで確認しておきましょう。
相談料が無料の事務所を選ぶ
相談料を無料としている事務所もあります。 弁護士費用全体に比べると相談料が占める割合は低いものですが、弁護士費用を少しでも下げたいのであれば、相談料無料の弁護士事務所を選ぶべきでしょう。
なお、「ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)」では、相談料無料の弁護士事務所を検索できます。
相談料無料という条件がありますので、選択して検索してみてください。
分割払い可能な事務所を選ぶ
事務所によっては、弁護士費用の分割払いに応じてくれるケースもあります。これらの事務所を選ぶことによって、当面の出費を抑えるという方法もあります。
「ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)」では、弁護士費用の分割払いや後払いに応じてくれる事務所も多数掲載しています。相談料無料と同様、「分割払い・後払い」に条件を絞って検索してみてください。
日本弁護士連合会が定める報酬規制と比較する
任意整理の弁護士報酬は、債務整理事件の規律を定める規定によって上限が定められています。
これら上限と比較して、安い事務所を選ぶのも費用を抑える一つの方法だといえるでしょう。報酬の上限は次の通りです。
減額報酬金 |
減額成功額の10%相当額 |
過払い金回収金 |
・20%相当額(交渉の場合) ・25%相当額(訴訟の場合) |
解決報酬金(※) |
1社あたり2万円 |
- 解決報酬金
- 解決報酬金とは、減額報酬金とは別に、任意整理の結果、減額できた場合に支払う費用。弁護士事務所によっては請求していない。
最終的な費用合計が安いか判断する
相談料や着手金を無料にしている事務所も少なくありません。ただし、報酬金が高ければトータルの弁護士費用が高額になってしまうことも考えられます。 このようなケースを回避するためにも、最終的な費用合計がいくらになるのか事前に確認しておき、複数の事務所で見積もりを取るようにするとよいでしょう。
【関連記事】任意整理を弁護士に相談する5つのメリットと費用
それでも弁護士費用の支払いが難しい場合
上記のことを考慮しても、弁護士費用の支払いが困難で任意整理ができないケースもあるかもしれません。
そういった場合の対処法として次の4つが挙げられます。
- 法テラスを利用する
- 司法書士に依頼する
- 債権者の督促を一時的にストップする
- 自分で手続きをする
それぞれの内容を確認してみましょう。
法テラスを利用する
法テラスとは、一定額以下の収入の方に向けた法的支援サービスを行っている機関で、全国各地に事務所を設けています。 法テラスでは弁護士・司法書士による無料相談を実施しているほか、法テラスを通じて弁護士に依頼すると減額報酬金が通常の半額になるといった場合があります。
さらに、法テラスでは民事法律扶助制度の利用が可能です。民事法律扶助制度では、一定の収入を下回る人を対象に弁護士費用の立替などを行ってくれます。 民事法律扶助制度を利用するためには、収入要件・資産要件等をクリアする必要があります。詳しくは「法テラスとは|弁護士に無料相談できる機関の特徴と利用のメリット」をご覧ください。
司法書士に依頼する
任意整理は、弁護士だけでなく司法書士でも可能なケースがあります。そして、司法書士の費用は弁護士費用と比べて低く設定されている傾向にありますので、司法書士に依頼することで費用を抑えることができます。
ただし注意が必要なのは、司法書士に依頼できるのは借金額が140万円以下のケースに限られる点です。さらに、引き直し計算後に140万円以上の過払い金があるケースも司法書士は介入できません。 借金額が140万円以下で、過払い金もそれほど多くないケースでは、司法書士に依頼することも検討しましょう。
債権者の督促を一時的に止める
債権者からの督促を一時的に止めて、本来であれば借金返済に充てていた金額を、弁護士費用として充当するという方法もあります。 任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、「受任通知」というものを債権者に送付します。受任通知は一定の法的な効力があり、債権者は任意整理が終わるまで借金の督促をストップしなければなりません。
そして、任意整理は終了まで3ヶ月程度かかることが通常ですから、その3ヶ月間に返済するはずだった借金額が浮きます。たとえば、毎月の返済額が7万円だった場合、3ヶ月間で21万円をプールできます。 この21万円を弁護士費用に充てれば、手持ちがなかったとしても支払いが可能になるというわけです。
自分で手続きする
どうしても費用を捻出できないのであれば、自分で任意整理を行うという手もあります。ただし、任意整理は貸金業者と裁判外で交渉しなければならず、ご自身で交渉しても応じてもらえるケースはほとんどありません。
多くの人が任意整理を弁護士に依頼するのは、弁護士でなければ貸金業者が任意整理に応じてくれないからです。 そのため、自分で手続きすることはおすすめできません。任意整理の経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載している成功事例
ここでは、任意整理を行って月々の返済額が減額できた例を紹介します。債務整理によってどの程度減額できるかの参考にしてください。
任意整理で毎月の返済額が20万円から4万円に減額
任意整理によって、毎月の返済額が20万円から4万円にまで減額できたケースです。
相談者は会社員の40代女性で、生活費や交際費等で借入を行い、借り入れ者数は3社、総額は220万円で、月々の返済額は20万円でした。 司法書士が貸金業者と交渉を行った結果、月々の支払いが3社合計で4万円まで減額することに成功しました。
任意整理前 |
|
借金総額 |
220万円 |
借入社数 |
3社 |
月々の返済額 |
20万円 |
返済期間 |
4年0ヶ月 |
債務整理後 |
|
月々の返済額 |
4万円 |
消滅時効の援用で200万円の借金がゼロに
こちらは、司法書士に任意整理の相談をしたところ、結果的に消滅時効の援用で200万円の借金が0にできたというケースです。
相談者は会社員の40代男性で、自営業をしていた時の機材購入などによって200万円の借金をしていました。 主要な取引先が倒産し、相談者も体を壊して仕事ができなくなり実家で療養していたとき、督促状が届いたことをきっかけに、司法書士に任意整理を相談しました。 請求額は数年分の遅延損害金がついて200万円となっていましたが、相談者は5年以上返済しておらず、消滅時効を援用できる可能性があることが分かりました。 債権調査をすると、最終支払日から6年以上経過していることが分かり、消滅時効の援用によって200万円ある借金がゼロにすることができました。
このように弁護士・司法書士へ相談することで、思いもよらぬ解決方法を提案してくれることもあります。
任意整理前 |
|
借金総額 |
200万円 |
借入社数 |
1社 |
返済期間 |
5年0ヶ月 |
債務整理後 |
|
借金総額 |
0円 |
まとめ|その他の債務整理にかかる弁護士費用
この記事では、任意整理に係る弁護士費用について解説しました。債務整理の方法としては、任意整理以外にも、「個人再生」「自己破産」といった方法があります。
個人再生や自己破産は、裁判を通じた手続きですので、弁護士費用以外にも裁判所に支払う費用も発生します。それぞれの費用目安は次の通りです。
【個人再生】 |
||
費用 |
費用額 |
内容 |
弁護士費用 |
50万円程度 |
着手金や報酬金など |
裁判所費用 |
20万円程度 |
予納金や手数料など |
合計 |
70万円程度 |
【自己破産】 |
||
費用 |
費用額 |
内容 |
弁護士費用 |
30万~50万円程度 |
着手金や報酬金など |
裁判所費用 |
3万円~30万円程度 |
予納金や手数料など |
合計 |
合計33万円~ |
任意整理の弁護士費用はある程度のまとまった金額になりますが、次のような方法で費用を抑えることが可能です。
- 相談料が無料の事務所を選ぶ
- 分割払い可能な事務所を選ぶ
- 法テラスを利用する
- 返済をストップさせてその分の返済金をプールする など
任意整理をすると、上記のように月々の支払いを減額させることが可能です。費用で躊躇するよりも、まずは弁護士・司法書士へ相談してみましょう。ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)では、相談料無料の事務所もたくさん掲載していますので、まずは相談することから始めてみましょう。
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