法人破産とは?手続きの流れ・費用・デメリットをわかりやすく解説
法人を終わらせる手続きのひとつに「法人破産」があります。
法人破産は支払不能・債務超過の法人の借金を整理し、法人を消滅させる手続きです。
そのため、資金繰りや財務状況が悪化している場合は法人破産を検討すべきでしょう。
本記事では「法人破産とは」と調べている方に向けて以下の内容について説明します。
- 法人破産の定義や意味
- 法人破産をするための主な要件
- 法人破産を選択したほうがよいケース
- 法人破産をするメリット・デメリット
- 法人破産をおこなう際の大まかな流れ
- 法人破産にかかる費用の内訳と相場
本記事を読んで、法人破産の要件・ケース・流れ・費用などを正しく理解しましょう。
法人破産とは?法人の財産・負債を整理し、法人そのものを消滅させる手続き
法人破産とは支払不能の法人が財産と負債を整理し、その法人を消滅させる手続きです。
法人を終了させる手続きには「清算」もありますが、法人破産では裁判所が関与します。
破産法によって認められた制度であり、裁判所の許可を得たうえで法人を消滅させます。
なお、令和6年の司法統計年報によると、法人破産の申立て件数は8,498件となりました。
法人破産をするための主な要件
法人破産をするには、以下のような要件を満たしている必要があります。
- 支払不能または債務超過の状態にあること
- 破産手続きの予納金が支払われていること
- 不当・不誠実な申立てではないこと
ここでは、法人破産をおこなうための主な要件について確認しましょう。
1.支払不能または債務超過の状態にあること
法人破産は、支払不能または債務超過の状態の法人が対象です(破産法第15条、16条)。
- 支払不能:支払能力を欠いており支払いができない状態のこと
- 債務超過:法人の債務について財産で完済できない状態のこと
平たくいうと、資金繰り・財務状況が悪化し、経営が困難な状態の法人が対象となります。
支払能力や財務状況に問題がない場合は、法人破産を選択することはできないでしょう。
2.破産手続きの予納金が支払われていること
法人破産をするには、予納金を収める必要があります(破産法第30条1項1号)。
予納金とは、法人破産に必要な管財人報酬や官報広告費用などに充てられるお金です。
仮に予納金を支払わなかった場合は、破産手続開始の申立てが却下されてしまいます。
3.不当・不誠実な申立てではないこと
不当・不誠実な法人破産も禁止されています(破産法第30条1項2号)。
たとえば、以下のようなケースでは、法人破産が認められないでしょう。
- 自分の手元に財産を残したいがために、財産隠しや虚偽報告などをおこなう
- 新会社に事業・財産を譲渡したのちに、債務の残った旧会社の法人破産をする
- 破産するつもりはないのに、債権者からの取立てを止めるためだけに手続きをする
このような不当・不誠実といえるケースでも、破産手続開始の申立ては却下されます。
法人破産を選択するべきケース
以下のようなケースに当てはまる場合は、法人破産を検討するべきでしょう。
- 給与や家賃などの滞納が続いている場合
- 銀行からの追加融資が見込めない場合
- 事業再建の見込みがまったくない場合
ここでは、経営者が法人破産を選択したほうがよいケースについて説明します。
1.給与や家賃などの滞納が続いている場合
以下のように滞納が続いている場合は、法人破産を検討すべきタイミングです。
- 従業員に給与を支払えていない
- 取引先の買掛金の支払いに遅れが出ている
- 大家に家賃の支払いを待ってもらっている
- 社会保険料や税金などが未払いになっている など
入金サイクルのズレを理由とする一時的な支払い遅れなどなら改善は期待できます。
しかし、慢性的に支払い遅れが発生している場合は、経営難にあるといえるでしょう。
2.銀行からの追加融資が見込めない場合
銀行から追加融資を断られた場合も、法人破産を検討したほうがよいでしょう。
追加融資が見込めないということは、資金ショートに陥る可能性が高いといえます。
その結果、前述した「給与・家賃の滞納」などにつながってしまうと考えられます。
3.事業再建の見込みがまったくない場合
経営難の状態にある法人には、以下のように法人破産以外の選択肢も残されています。
- 私的整理:債権者と直接交渉して返済条件などを調整してもらう手続き
- 民事再生:裁判所の許可を得て、事業を継続しながら債務を圧縮してもらう手続き
こうした手続きをしても事業の再建が難しい場合は法人破産を選択するのが望ましいです。
法人破産を選択することで得られる3つのメリット
法人破産を選択するメリットには以下のようなものがあります。
- 借金の返済義務がなくなる
- 取立てや督促などを止められる
- 再スタートを切れるようになる
ここでは、法人破産を選択するメリットについてそれぞれ確認しましょう。
1.借金の返済義務がなくなる
法人破産は、法人の財産・債務を全て整理する手続きです。
そのため、以下のような支払い義務を全てなくすことができます。
- 金融機関からの借金
- 従業員に対する未払い給与
- 取引先への買掛金や未払金
- 滞納している社会保険料や税金 など
無事に法人破産が完了すれば、将来的に支払いを求められることもありません。
支払いや返済の義務がなくなることで、強い精神的な重圧から解放されるでしょう。
2.取立てや督促などを止められる
裁判所から法人破産の開始決定が出されると、以下のようなメリットがあります。
- 債権者からの取立て・督促が止まる(破産法第100条1項)
- 強制執行や差押えなどが中断される(同法第42条)
このように法人破産を開始すると、取立てや督促などを止めることが可能です。
なお、実務上は弁護士が債権者へ受任通知を送れば、すぐに取立てや督促を止められます。
3.再スタートを切れるようになる
法人破産をすることで、法人を消滅させ、再スタートを切れるようになります。
また、個人の自己破産と異なり、法人破産では以下の観点からも再起しやすいです。
- 経営者が法人の借金を背負う必要がない(連帯保証人の場合を除く)
- 信用情報機関に事故情報が登録されることはない
これまでの経験やノウハウを活かして、新たにビジネスを始めることもできるでしょう。
法人破産をする前に知っておくべきデメリットと影響
法人破産には以下のようなデメリットもあります。
- 現在の事業を継続できなくなる
- 手元に財産を残すことはできない
- 従業員や取引先などに迷惑がかかる
- 経営者の自己破産が必要になることが多い
ここでは、法人破産をするデメリットや影響などについて説明します。
1.現在の事業を継続できなくなる
法人破産は法人自体を消滅させるため、現在の事業を継続することはできません。
これまで築いてきた信頼関係・ブランド・ネットワークなどは全てリセットされます。
なお、個人事業主や新会社などで同種の事業をおこなうこと自体は認められています。
2.手元に財産を残すことはできない
法人破産では財産も処分されるため、手元に財産を残すことはできません。
不動産・自動車・オフィス機器・商品・売掛金などは全て処分されてしまいます。
また、許認可や知的財産権(特許権など)も失うことになってしまうでしょう。
なお、このような財産は全て換価されたのち、債権者へと分配されることになります。
3.従業員や取引先などに迷惑がかかる
法人破産をすることで、従業員や取引先などに迷惑がかかります。
- 従業員:全員解雇する必要がある
- 取引先:全ての取引を終了させる必要がある
なお、迷惑がかかるからといって何も説明しないことは不誠実です。
特に従業員に対しては、慎重に事情を説明しておく必要があるでしょう。
4.経営者の自己破産が必要になることが多い
法人破産をする場合、必ずしも経営者の自己破産が必要になるわけではありません。
しかし、中小企業経営者が金融機関から融資を受ける際は個人保証をすることが多いです。
個人保証とは連帯保証契約のことであり、法人の借金を経営者が保証するというものです。
経営者が法人の借金を返済できない場合は、経営者自身の自己破産も必要になるでしょう。
法人破産の準備から手続き完了までの流れ|6ステップ
法人破産の手続きは、大まかには以下のように進んでいきます。
- 弁護士へ相談・依頼する
- 従業員の解雇やテナントの明け渡しをする
- 裁判所に対して法人破産の申立てをおこなう
- 破産管財人が選任され会社の財産が処分される
- 債権者集会が開かれて配当の手続きがおこなわれる
- 破産手続きが終了となり法人格の消滅登記がされる
ここでは、法人破産をおこなう際の大まかな流れについて説明します。
1.弁護士へ相談・依頼する
法人破産は経営者自身でもできますが、通常は弁護士に依頼しておこないます。
そこでまずは、法人破産に対応している法律事務所を探して相談するとよいでしょう。
弁護士は「ベンナビ債務整理 」や「企業法務弁護士ナビ 」などを使うと簡単に探せます。
複数相談してみて「納得感がある」「相性がよい」と感じられる弁護士に依頼しましょう。
2.従業員の解雇やテナントの明け渡しをする
弁護士と委任契約を締結すると、すぐに債権者に受任通知を発送してくれます。
また、弁護士のサポートを受けつつ従業員の解雇やテナントの明け渡しをおこないます。
ほかにも、リース物件の返却など、法人破産をおこなうまでに必要な手続きを進めます。
3.裁判所に対して法人破産の申立てをおこなう
法人破産をおこなう際は、裁判所に様々な資料を提出する必要があります。
必要書類は弁護士の指示に従い集め、申立書は弁護士に作成してもらいましょう。
申立書や必要書類の準備ができたら、裁判所に対して法人破産の申立てをおこないます。
申立てをおこなうと、通常は2週間程度で裁判所から「破産手続開始決定」が出されます。
4.破産管財人が選任され会社の財産が処分される
破産手続開始決定が出されると同時に、法人の財産を管理する破産管財人も選任されます。
破産管財人は法人の財産を調査して、不動産・備品・在庫などを金銭へと変えていきます。
なお、破産管財人から要請があった場合は、経営者は全面的に協力する必要があります。
5.債権者集会が開かれて配当の手続きがおこなわれる
破産手続開始決定から3ヵ月程度経つと、債権者集会が開催されることになります。
この集会では破産者や債権者などが集まり、破産の経緯などに関する説明があります。
また、すでに財産の処分・換価が完了している場合には、配当(分配)がおこなわれます。
6.破産手続きが終了となり法人格の消滅登記がされる
配当手続きが完了すると、裁判所から「破産手続終結決定」が出されます。
また、裁判所から法務局に登記の嘱託がおこなわれて法人格は消滅します。
法人を失ってしまいますが、借金返済や取立てなどからも解放されるでしょう。
法人破産にかかる費用の相場|裁判所費用と弁護士費用
法人破産をおこなう場合は一般的に裁判所費用と弁護士費用が必要になります。
ここでは、裁判所費用と弁護士費用それぞれの目安や相場について説明します。
裁判所費用|少なくとも20万円以上
法人破産の裁判所費用は、管轄の裁判所や手続きの種類によって異なります。
| 少額管財事件 | 予納金:20万円 申立手数料:1,000円 官報公告費:1万4,786円 予納郵券:4,400円 |
| 通常管財事件 | 予納金:70万円~(負債総額で変わる) 申立手数料:1,000円 官報公告費:1万4,786円 予納郵券:4,400円 |
少額管財事件は、小規模な破産事件で取られる迅速かつ安価な破産手続きです。
一方、通常管財事件は大規模・複雑な破産事件で取られる破産手続きとなります。
少額管財なら20万円以上、通常管財なら70万円以上の費用が必要になるでしょう。
弁護士費用|少なくとも100万円以上
旧日本弁護士連合会報酬等基準を参考にすると、弁護士費用の目安は以下のとおりです。
- 法律相談料:5,000円~2万5,000円(30分ごと)
- 着手金:50万円以上
- 報酬金:50万円以上
ただし、現在は上記の報酬基準は廃止され、法律事務所が自由に報酬額を設定できます。
事前に見積もりを取り、費用の詳細を十分確認してから依頼することをおすすめします。
法人破産に関するよくある質問
最後に、法人破産に関するよくある質問に回答します。
Q.法人破産の申立てができるのは誰か?
法人破産の申立ては、以下の人がおこなえます(破産法第18条、第19条)。
- 法人(債務者)
- 準債務者
- 債権者
- 代理人
実務上は、弁護士に依頼して法人破産の手続きをおこなうことが一般的でしょう。
Q.法人破産をしないとどのようなリスクがあるか?
法人破産をせずに事業を続けるリスクには、以下のようなものが挙げられます。
- 裁判所費用・弁護士費用のためのお金も使ってしまう
- 支払い遅れがある場合は従業員や取引先に迷惑がかかる
- 支払い遅れがある場合に取立てや督促などがおこなわれる など
事業を再建できる見込みがある場合を除けば、単に問題を先送りにするだけといえます。
Q.決算書や帳簿がない状態でも法人破産の手続きは可能か?
決算書や帳簿などがない場合でも法人破産の申立ては可能です。
ただし、これらの資料がないと以下のような問題点が生じます。
- 決算書などに代わる資料を準備する必要がある
- 追加資料の提出や補足の説明などを求められる
- 債権者名簿を一から作成する必要がある
- 経営者による財産隠しを疑われてしまう など
法人破産の準備や手続きに、通常よりも多くの時間がかかってしまうと予想されます。
また、管財人による調査に時間がかかり、費用が増加してしまう可能性もあるでしょう。
さいごに|法人破産が必要な場合は早めに弁護士に相談を!
法人破産とは裁判所の許可を得て財産・債務を整理し、法人を消滅させる手続きです。
支払不能・債務超過の状態になっている法人は、法人破産を検討する必要があります。
ただし、法人破産は経営者だけでするのは難しいため弁護士のサポートが必須となります。
まずは「ベンナビ債務整理」などで弁護士を探して法人破産について相談してみましょう。
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