個人再生で退職金はどうなるの?ケース別の計算方法や必要書類を解説
個人再生を行う前、もしくは手続き中に退職金によりまとまったお金を受け取るケースもあります。受け取るタイミング次第では、全額が財産として計上されてしまい、希望していた債務の圧縮額と異なる結果となる可能性もあります。
この記事では、個人再生における退職金の取り扱いについて紹介します。
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個人再生する際の退職金の扱い
債務整理の手続きのひとつである個人再生において、一定額を超える退職金は「清算価値」として計上されます。清算価値とは所有している財産(一部を除く)のことです。
例えば、99万円を超える現金などが該当します。仮に所有している財産が借金額を上回っている場合には、「清算価値保障原則」により全額返済が必要なので注意が必要です。
清算価値保障原則とは、「個人再生で弁済する率が自己破産する際の配当率以上でなければならない」という原則を指します。
このため、退職金を含む資産価値の価額や借金額次第では、個人再生の手続きをする意味がなくなる恐れがあります。手続きに入る前には、借金額と清算価値を比較することが重要です。
個人再生では「清算価値」として計上される
前述のとおり、退職金は「所有している財産」として計上されます。ただし所有している財産に計上されるからといって、退職しなければいけないわけでも差し押さえられるわけでもありません。あくまで返済額を決めるために計上されるだけです。
また、基本的に退職金の全額が計上されるわけではなく、計上されるのはあくまで一部だけです。ただし、退職金を受け取るタイミング次第では全額計上されることもあります。
退職金が「確定拠出年金」の場合の取り扱い
退職金が「確定拠出年金」の場合、所有している財産には計上されません。なぜなら、この場合は全額差押禁止債権にあたるためです。そのことは、確定拠出年金法32条にて以下の通り定められています。
(受給権の譲渡等の禁止等)
第三十二条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
引用元:確定拠出年金法32条
また、退職金の代わりとして使用されている確定給付企業年金の場合も同様です。
【ケース別】退職金のうち清算価値として計上される割合
個人再生の手続きでは退職金は清算価値として計上されますが、必ずしも全額が清算価値として計上されるわけではありません。なぜなら、退職金が確実に受給できるとは限らないためです。
このため清算価値として計上される割合は、退職金をどのタイミングで受け取るか、どのタイミングで受け取る予定かによって異なります。
タイミングによっては全額計上されることになります。まとめると以下の通りで、ここではケースごとにそれぞれ解説します。
①すでに退職して退職金を受け取っている場合
すでに退職して退職金を受け取っている場合は、預貯金もしくは現金と考えるため、清算価値として全額計上されます。
②すでに退職しているがまだ退職金を受け取っていない・もうすぐ退職予定の場合
すでに退職しているがまだ退職金を受け取っていない・もうすぐ退職予定の場合は、再生計画認可の時点での受給見込額の4分の1が清算価値として計上されます。
その理由は、退職予定がない場合と比較すると退職金を受け取れる可能性が高いうえに、金額も確定しやすいためです。
例えば、400万円の退職金を受け取る見込みであれば、100万円が清算価値に含まれることになります。
③退職予定がない場合
退職予定がない場合は、清算価値に計上される割合が最も少なく、再生計画時点での受給見込額の8分の1が計上されます。
清算価値に計上される割合が低い理由としては、他のケースよりも退職金を受け取れるかどうか不確定なためです。
とはいえ、無事に退職金を受け取れたと仮定すると、「再生計画の認可が決定した段階で退職予定がない場合」が最も手元に多く残せることになります。
個人再生する際は5年未満でも退職金見込額証明書が必要
一般的には、勤続年数が5年を経過した場合に退職金を受け取れる会社が多いようで、「5年未満であれば退職金も出ないから何の書類も準備しなくてよい」と思う方もいるかもしれません。
しかし実際のところは会社ごとに規定が異なるため、まずは会社の退職金規定を確認しましょう。そして勤続年数が5年未満であろうと退職金を受け取れるのであれば、退職金見込額証明書という書類が必要です。なお退職金が出ない場合でも、なかには退職金が出ないことを証明する資料などを求められるケースもあります。
ここでは、退職金見込額証明書の概要や入手方法、退職金がない場合の対応などを解説します。
退職金見込額証明書とは
退職金見込額証明書とは、発行時点で退職した場合に支給される退職金の金額を証明する書類です。支払い支給金の他に控除額や勤務年数などが記載されており、勤務先の会社が発行してくれます。
ただし、このような証明書の発行を申請するケースはいくつかに限られているため、勤務先が個人再生の手続きを行うことを知る可能性もゼロではありません。深く探ってくることは少ないと思いますが、個人再生のことを会社に知られたくない人は、納得してもらえる言い訳を考える必要があるでしょう。
なお、会社が多額の借金を抱えている従業員に対し、借金があることを理由に解雇することは基本的に難しいため(労働契約法16条参照)、借金がバレたら解雇されると不安に思っている人は安心してください。
個人再生することを会社に知られずに発行してもらう方法
個人再生の手続きを行うことを会社に知られずに退職金見込額証明書を発行してもらうには、納得してもらえる理由をあらかじめ用意しておくしかないでしょう。
退職金見込み額証明書はローン審査でも必要になりますので、「住宅ローンの審査で必要」や「教育ローンの審査で必要」などの理由がおすすめです。
退職金がない場合の対応
退職金がない場合はそのことを証明する資料を求められるケースもあります。
就業規則に退職金について記載があれば、それを資料として使用できますが、記載がない場合は会社に作成してもらう必要があるでしょう。
その際も、退職金見込額証明書の場合と同様に、個人再生の手続きを行うことを会社に知られる可能性があります。あらかじめ作成するための理由を考えておきましょう。
退職金見込額証明書がもらえない場合の対処法
なかには退職金見込額証明書を作成してもらえなかったり、どうしても言いにくい人もいると思います。
もし退職金見込み額証明書をもらえない場合は、就業規則の規定をもとに計算しましょう。
退職金規定のある会社であれば、就業規則などに退職金の計算方法が記載されているため、まずは就業規則をよく確認します。計算方法がよくわからない場合は弁護士に就業規則をわたし、退職金を計算してもらいましょう。
算出した退職金見込額と就業規則などの退職金規定に関する書類のコピーを提出すれば、退職金見込額証明書が無くても裁判所が許可してくれることがあります。
まとめ
個人再生の手続きをする際、退職金は清算価値として計上されます。たとえまだ退職金を受け取っていないとしても、将来的には手にする可能性が高い資産であるため仕方がありません。
しかし退職金は、老後の生活で重要な資産となります。
個人再生手続きにおいて退職金がどのように考慮されるかをしっかり理解した上で、ご自身の老後生活をご検討いただきたいと思います。
そして、個人再生の手続きは、退職金見込額証明書などの必要書類の収集や、退職金の計算などの手続きに追われることになります。自力で行うことは難しいので、是非弁護士に一度相談して下さい。
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