個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは|仕組みをわかりやすく解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
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債務整理の1つである個人再生を行う際は、『住宅ローン特則』を利用することで、住居を所有したまま住宅ローンの返済を延期できます。

 

住宅ローン特則(じゅうたくろーんとくそく)とは、個人再生手続において住宅ローンを債務圧縮の対象外とすることで、住居の所有を維持しながら、住宅ローンの返済を延期し、付着したマイホームの担保権実行を回避することができます。

 

住宅ローンを延滞すると住宅に付された担保権が実行されて競売にかけられてしまう可能性がありますが、住宅ローン特則を利用することで、このような担保権の実行を回避することが可能となるのです。

 

住宅ローン特則を利用するには、口座が凍結されていない住宅ローンの返済を6ヶ月以上延滞していないといった条件をクリアしている必要があります。

※住宅ローン特則の利用条件については、後述の住宅ローン特則の利用条件をお読みください。

 

この記事では、住宅ローン特則の種類や期限・利用条件、メリット・デメリットなどを詳しくご紹介していきます。

 

 

 個人再生と住宅ローン特則の関係

個人再生には、『住宅資金貸付債務に関する特則』が設けられています。一般に『住宅ローン特則』と呼ばれています。

 

住宅は、財産の1つであり債務者の経済的更生の基盤に不可欠です。そのため、債務者が借金を返済しながら従来どおり住居を所有していられるように設けられたのが、この住宅ローン特則です。

 

住宅ローン特則のメリット

住宅ローン特則のメリットは何よりも、大切な住宅を手放さなくて済むという点です。購入した住宅と土地は、生活の基盤であると同時に資産でもあります。

 

特に、一戸建ての場合は、築年数を経て建物の価値が下がっても土地の資産価値は変わらないため、住宅ローン特則の効果は大きいと言えます。

 

住宅ローン特則のデメリット

住宅ローン特則を利用すること自体のデメリットは、住宅ローンは従前どおり支払い続ける必要があるという点です。

 

また、これ以外に強いて挙げるならば、個人再生で住宅ローン特則を利用したという情報が、信用情報機関に登録される点です。いわゆるブラックリスト登録です。

 

個人再生を行った場合は、住宅ローン特則の利用の有無によらず、新たに住宅ローンが組みにくくなるという難点があります。

 

もし、個人再生後に住宅ローンを組みたい場合は、ブラックリストからご自身の名前が削除されるのを待つ必要があります。

 

個人再生で住宅ローン特則が利用できる理由

 

住宅が債務者の経済的更生の基盤に不可欠であることが、住宅ローン特則が定められている1つの理由です。

 

住宅には、「抵当権」といって、債務者がローンなどの債務を返済できない場合の担保にできる権利が付いています。ローンの支払いが延滞してしまうと、この抵当権が実行され、住宅は売却されることになります。

 

この売却代金は、抵当権を持っている保証会社や銀行に支払われ、そこから残りの住宅ローンが引かれます。ここでもし、売却金額よりもローン残債のほうが多ければ、債権者には1円も振り分けられません。

 

したがって、住宅ローン特則がなければ、債務者は個人再生手続で住居を失い、しかも他の債権者の弁済金にも回すことができないという困った事態に陥りかねないのです。

 

これは債務者に酷だということで、住宅ローン特則が設けられています。

 

住宅ローン特則の4つの型

住宅ローン特則には4つの型があり、それぞれ返済期限や支払い方法が異なります

 

どのタイプを選ぶかは、もともとの住宅ローンの契約内容、債務者の支払い能力,住宅ローン債権者の対応、再生計画によって支払う住宅ローン以外の負債の見込額などの諸事情によるので、さまざまな事情を検討し、個人再生を依頼した弁護士や司法書士個人再生委員会(※)とも相談の上、決めていく必要があります。

 

※個人再生委員は、再生手続きを監督する者で、個人再生をする場合に負債額が大きい場合や、債務者と債権者で意見の対立が生じたりした場合に、裁判所によって選任されます。

 

期限延長型(そのまま型)

従来どおりの住宅ローンの返済が難しい場合に、まず利用できる制度が『期限延長型』です。住宅ローンの支払いを最長で10年延長することで、月々の支払い額を抑えます。

 

ただし、延長期限は原則として債務者が70歳になるまでと定められています。

 

期限の利益回復型

住宅ローン返済に6ヶ月以下の延滞がある場合に、延滞している分の元金と損害金(返済を延滞した場合にペナルティとして払わなければならないお金)を3~5年間で分割払いする制度が『期限の利益回復型』です。

 

この3~5年間で元々の住宅ローンと延滞した分の元金および損害金の両方を返済します。

 

元金猶予期間併用型

期限延長型でも住宅ローンの支払いが難しい場合に利用できる制度が『元金猶予期間併用型』です。債務者が他の借金を返済するのに精一杯で、住宅ローンの返済をすると経済的な負担が過大になってしまう場合に利用できます。

 

元金猶予期間併用型では、他の借金を返済している間は、住宅ローンについては元金および利息を支払っていくのみになります。

 

 同意型

債権者の同意のもと、住宅ローンの支払い内容や方法を自由に決める制度です。上記3つの型以外の特則を設けることができます。

 

ただし、住宅ローンの返済を延長できても、住宅ローンの減額ができるケースは稀です。同意型の例としては、返済期間の10年以上の延長やボーナス払いの取りやめなどが挙げられます。

 

 

 

住宅ローン特則の利用条件は7つ

前提条件として、住宅ローン特則は債務者1人につき住宅1戸まで 利用できます。

 

さらに、住宅ローン特則を利用するには下記の「住宅ローン」と「住宅」に関する条件をクリアしていなければなりません。

 

ご自身の住宅ローンと住宅の契約内容を見直し、該当するかどうか確かめてみましょう。

 

住宅ローンに関する条件3つ

 

住宅ローンについては、下記3つの条件を満たしている必要があります。

 

①住宅の建設・購入または住宅の改良に必要な資金の借り入れであること

住宅の新築・購入や土地の購入などのほか、住宅を増改築やバリアフリー化のための住宅改良工事費用の借入なども住宅ローンに該当するので、住宅ローン特則を受けられます。

 

②資金の返済が分割払いになっていること

一括払いの貸付は住宅ローンには該当しないため、住宅ローン特則を受けることができません。

 

③抵抗権が設定されていること

住宅を購入する際に借り入れたローンに抵当権が設定されていれば、借り入れたローンは住宅ローンに該当します。したがって、住宅ローン特則を利用できます。

 

住宅に関する条件2つ

ローンを組んでいる住宅そのものについては、下記2つの条件を満たしている必要があります。

 

①債務者が所有し居住する建物であること

債務者が所有しており、現在住んでいる、あるいは住む予定の建物であれば、住宅ローン特則の対象になります。

 

②住居の床面積の2分の1以上を債務者が使用する場合

基本的に、債務者が所有し居住している住居は、債務者が住居の床面積の2分の1以上を使用しているはずなので、ほとんどの住居が住宅ローン特則の対象になります。

 

例外として、店舗や事務所が併用している住居であっても、住居全体の床面積の2分の1以上を債務者が居住のために使用しているのであれば、住宅ローン特則が適用されます。

 

住宅ローン特則が利用できない場合

上記の、住宅ローンと住宅の条件をクリアしていても、下記の4つのケースに該当する場合は住宅ローン特則を利用できないので注意してください。

 

①住宅ローン以外の抵当権がある場合

該当の住宅に、他の債務を担保するための抵当権が付いている場合は、住宅ローン特則を利用できません。その抵当権を有する者が抵当権を実行して住宅を売却してしまうと、自身の住宅ローンを支払えなくなる可能性が高いからです。

 

②連帯保証人が住宅ローン債権を取得した場合(法定代位)

もし、身内や知人が連帯保証人として債務者に代わって住宅ローンを返済すると、連帯保証人が、抵当権とその他の権利を行使できるようになります。これを法定代位と言います。その場合、債務者本人は住宅ローン特則を利用できなくなります。

 

③保証会社が保証債務を履行してから6ヶ月以上が経過した場合

民事再生法では、債務者がローンを返済できない場合、保証会社などが返済を肩代わりする『保証債務』を行ってから6ヶ月以上経った場合は、住宅ローン特則の利用を禁じています。

 

④住宅が差し押さえられている場合

住宅ローン特則は、債務者が税金の支払いを滞納し、差し押え登記されている場合は適用されません。もし税金を滞納しているのであれば、早急に返済しましょう。

 

住宅ローンや住宅の契約内容が確認できない場合

住宅ローンの契約書類を紛失してしまったなどの理由により、住宅ローンの契約内容が分からない場合は、契約会社に問い合わせてみましょう

 

契約内容は、再度確認できるように書面などの視覚化した形で提示してもらうことをおすすめします。

 

住宅の所有者が分からない場合は、法務局に家屋番号や地番を問い合わせ、登記簿謄本を取得しましょう。1通600円で登記簿謄本を取得できます。

 

個人再生後に住宅ローンを組むには

 

原則的に早める方法はない

個人再生をした場合、個人再生をしたことが信用情報機関に5~7年間、個人再生をしたことが記録されます(ブラックリスト登録)。

 

銀行系の住宅ローンを組んでいる場合は、政府の広報誌にも10年間、情報が記録されます。

 

残念ながら、ブラックリストに記録されている期間中は、住宅ローンを組めない可能性が極めて高いです。もし、個人再生後に住宅ローンを組みたいのであれば、下記の方法を取りましょう。

 

ブラックリストからご自身の情報が削除されるのを待つ

情報が登録されている期間は、住宅ローンの申請に向けて頭金を貯金しておき、ブラックリストからご自身の情報が削除されたら住宅ローンを組むという方法です。

 

下記3つの信用情報機関のいずれかに問い合わせることで、ご自身の情報がブラックリストに登録されているかが確認できます。

 

・株式会社日本信用情報機関(JICC)

・株式会社シー・アイ・シー(CIC)

・全国銀行個人信用情報センター(KSC)

 

 住宅ローン特則を利用する際の注意点

債務者が個人再生をした際に、財産を換金したら全額払わなくてはいけないという『清算価値担保の原則』により、住宅ローンの残高よりも、現時点で住宅を売却した価格の方が高くなってしまう場合は、住宅ローン特則を利用できても、売却価格とローンの差額を全て債権者に支払わなければなりません。

 

住宅ローン特則は、基本的に住宅ローンの返済を延期することで債務者の住宅所有を可能にする制度であり、債務者の手元に余剰の資金が残ったり、返済額が減ったりすることはないので注意してください。

 

もし住宅ローンの返済を延滞したら

住宅ローンの返済を3ヶ月以上延滞すると、借入先の銀行などの金融機関は『催告状』を送ります。催告状には、「債務者(ローン名義人)は住宅ローンを分割して支払う権利を失います。」という内容が書かれており、債務者は住宅ローンの延滞分を一括で払うことが要求されます。

 

催告状の内容を無視して延滞分を支払わなかった場合、金融機関が『競売開始通知』を送り、債務者の住宅を競売にかけます。そうなると、住宅を手放さなくてはいけません

 

将来も住宅を所有し続けたいのであれば、住宅ローン特則を利用し、無理のない返済を行うのが善後策であると言えます。

 

まとめ

住宅ローン特則を利用すると、生活の基盤であり資産でもある住居を残すことが可能です。

 

住宅ローン特則には4つの種類があり、弁護士や個人再生委員と相談しながら、ご自身の債務返済計画に適したタイプを選ぶことになります。

 

なお、住宅ローン特則を利用するには、住宅ローンと住宅に関する条件をクリアしている必要があるので、ご自身の住宅ローンの契約内容や住宅に関する情報を確認しましょう。もしも、確認作業に支障が出たならば、個人再生を依頼した弁護士や司法書士に住宅ローン特則の申請も依頼した方が無難です。

 

債務整理ナビでは、個人再生を得意とする弁護士や司法書士を掲載しているので、ぜひご活用ください。

 

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

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