個人再生に失敗したらどうなる?|失敗パターンと成功のための対策
個人再生(こじんさいせい)とは、住宅ローンを払いながら、それ以外の借金を大きく圧縮できる借金問題の解決方法です。
特に住宅ローンで自宅を購入した方にとっては、原則として自宅の売却が必要となる自己破産と比べると住宅を持ったまま他の借金を圧縮できるという意味で使いやすい制度ですが、失敗してしまう場合もあります。
個人再生が失敗してしまわないか不安な方や、既に失敗してしまった方にとって、以下の点は気になるでしょう。
- 個人再生は何が原因で失敗するのか
- 個人再生を成功させるコツはあるのか
- 個人再生が万が一失敗してしまった場合どう対処すればよいか
個人再生に失敗してしまう事は非常に少ないので、当記事で説明する内容を理解した上で手続きを行えば、問題なく個人再生手続きを行うことが可能です。
また、仮にあなたが個人再生に失敗しても、失敗した原因を分析して再申請したり、他の債務整理手段をとったりするなどで借金問題を解決することができます。
この記事では、個人再生に関するお悩みを持つ方に向けて、個人再生に失敗するパターンと失敗した場合の対処方法、そして成功するためのポイントについて詳しく解説します。
借金の解決策には、個人再生以外にも任意整理や自己破産があります。
これらの債務整理には、それぞれメリット・デメリットがあり、自身の状況にあった方法を選択することになります。
あなたの状況次第では、個人再生ができない、あるいはベストな選択肢ではない可能性もあるでしょう。
個人再生を検討中の方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
依頼するメリットは以下の通りです。
- 自分にあった解決策を提示してもらえる
- めんどくさい手続きをすべて任せられる
- 受任通知で、催促・取り立てが停止する など
自力で個人再生をして失敗すると、準備にかかったお金や時間を無駄にしてしまう恐れがあります。
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、借金問題でお悩みの方は、まずは下記よりご相談ください。
個人再生が失敗する確率
司法統計によれば、個人再生の申立てた人のうち、約94%が無事終結していることがわかります。
項目 | 総数 | 成功 | 失敗 | その他 |
---|---|---|---|---|
件数 | 1万3,479件 | 94% | 3% | 3% |
参考:第109表 再生既済事件数―事件の種類及び終局区分別―全地方裁判所|司法統計
失敗した理由は様々ですが、数字上では約3%と低いものとなっており、適切な準備を行えば成功する可能性は高いといえるでしょう。
※再生手続き終結を「成功」、廃止・不認可・却下・取り消しなどを「失敗」と定義して失敗の割合を算出
個人再生の申立てが失敗する4つのケース
個人再生は個人事業主や小規模な事業を経営している人、サラリーマン等、一定の収入がある人を対象にした手続きです。
個人再生が失敗する4つのケースについて説明します。
1.個人再生の申立てが棄却される
個人再生の申立てを開始するには、一定の条件が必要です。
次のような条件に満たない場合には申し立てが棄却・却下される可能性がありますので注意が必要です。
- ①個人再生の対象者に該当していない
- ②個人再生の費用や書類を期限までに用意できていない
- ③再生計画案に認可の見込みがないのが明らかである
- ④申立の目的が不当・不誠実である
司法統計の再生既済事件数によれば、裁判所に申し立てが棄却されるケースは37件です。
全件数が1万3,601件ですから、1%にも届きせん。通常個人再生は弁護士に依頼して申立をしますから、要件を満たさずに失敗するケースはほとんどないのが現状なようです。
個人再生の対象者に該当していない
申立の対象者に該当するには主に次の条件を満たす必要があります。
- 借金の総額が5,000万円以下(住宅ローンは除く)
- 今後も継続的な収入が見込めること
- 給料など収入の金額が安定していること
個人再生の費用や書類を期限までに用意できていない
個人再生をする際には、予納金等の手続き費用3万円程を期限までに一括で支払う必要があります。
費用の支払いが出来なければ当然に手続きは進みません。
代理人弁護士を付けずに申立てを行う場合には、裁判所が個人再生委員を選任することになりますので、個人再生委員の報酬として15~25万円程を支払う必要があります。
もっとも、この費用は、基本的に履行テストで積み立てたお金から最終的に精算されますので、別途用意する必要はありません。
再生計画案の認可に見込みがないのが明らかである
個人再生は、再生計画案を作成しそれに沿って返済していくことになります。
そのため、再生計画案は実行可能な内容でなければなりません。
もし、明らかに認可できないと思われるような内容の場合、個人再生は失敗してしまいます。
申立の目的が不当・不誠実である
個人再生は、法的手続きにしたがっておこなわれるため、申立ての目的が正当でなければなりません。
不当・不誠実に該当するケースは、以下の例が考えられます。
- もっぱら担保権の抹消を目的とする
- 否認権行使を目的とする
2.個人再生手続きが途中で打ち切りになる
個人再生は、申立てをしたからといって安心できません。
手続きの途中で打ち切り、つまり廃止になるケースも、十分に考えられます。
具体的には次のようなものが代表例です。
- ①再生計画案を期限までに提出できない
- ②再生計画案が書面決議で否決された
個人再生の手続きが途中で打ち切りになるのは、司法統計の再生既済事件数によれば353件となっており、確率としては2.6%となっています。
失敗する割合が3%程度ですから、ほとんどが途中の打ち切りによって失敗しているようです。
再生計画案を期限までに提出できない
個人再生では、再生計画案を裁判所に提出し、認可されたら借金が減額されます。
再生計画案は、個人再生によって減額された借金を、どの債権者に対してどれくらいの金額を返済するのか定めたものです。
個人再生において、必要な書類関係の提出期限も審査の対象となっています。
期日通りに提出できない場合、借金の返済においても期日を守らないと判断され、個人再生は廃止になります。
再生計画案にも提出期限は明確に定められているため、期日までに提出できるようにしましょう。
再生計画案が書面決議で否決された
個人再生のうち、小規模個人再生では再生計画案の決議は再生債権者によっておこなわれます。
この決議は書面でおこなわれ、一定数の債権者によって否決されると個人再生の手続きが廃止されてしまいます。
再生計画が否決となる要件は「債権者の過半数の不同意」もしくは「債権額の過半数を超える債権者による不同意です。
これは、民事再生法第230条第6項によります。
(再生計画案の決議)
第4項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず,かつ,その議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないときは,再生計画案の可決があったものとみなす。
再生計画案を作成する場合には、債権者からの許可が得られるように最適な案を作成する必要があります。
借金の状況や債務者自身の収支によって最適な計画は異なります。
個人再生を利用する場合には必ず弁護士に依頼する必要があるといえるでしょう。
3.個人再生の再生計画案が許可されない
再生計画案が債権者による書面決議で可決されても、裁判所の判断によって許可されないこともあります。
具体的には次のようなものが挙げられます。
- 返済能力に問題があると認められた
- 再生計画案の返済額が法律で定められた弁済額を下回っていた
司法統計の再生既済事件数によれば、再生計画不許可によって個人再生が失敗したのは42件です。
こちらも1%にも届いていません。弁護士に依頼すれば適切に再生計画案を作成してくれますから、通常、個人再生の再生計画案が裁判所に許可されないことはあまりないのが現状なようです。
返済能力に問題があると認められた
再生計画案は、当人が確実に遂行できる計画でなければなりません。
再生計画案を実現が難しい返済計画にしてしまうと、認可されないことが多いです。
具体的には、以下のケースに該当する場合は返済計画に無理があると判断されやすいでしょう。
- 毎月の収入に対して、返済額が大きすぎる
- 個人再生の履行中の収入の減少が確実である
再生計画案が不認可とならないためには、現在の収入に対して妥当な返済額を設定する必要があります。
再生計画案の返済額が法律で定められた弁済額を下回っていた
個人再生では、最低弁済額が決められています。
具体的には次の3つの減額基準の中で、最も高い金額を最低限支払わなければなりません。
- 最低弁済額の法定基準
- 清算価値保障基準
- 可処分所得基準(給与所得者等再生の場合)
返済額が減額基準より低い場合には、再生計画案は裁判所に認可されません。
自己破産した場合よりも個人再生の返済額が少ないのであれば、債権者の権利が小さくなることに正当性が認められないからです。
4.再生計画が不履行になる
再生計画が認可されると、それに従って原則3年かけて返済をしなければなりません。
もし、計画に沿って返済ができない場合には個人再生は失敗となってしまいます。
なお、勤務先が倒産したなどの事情があり返済が難しくなった場合には、裁判所に再生計画の変更を求めることが可能です。
また、一定金額返済していたにもかかわらず。
病気などのやむを得ない事情で返済が難しくなった場合には「ハードシップ免責」(235条)が利用可能です。
ハードシップ免責が認められると残りの返済は免除されます。
ハードシップ免責を利用するには次の条件等を満たしていなければなりません。
- 3/4以上を返済している
- 再生債務者に責任を問えない事情により再生計画の遂行が極めて困難となったこと
司法統計の再生既済事件数では、2019年度、再生計画が不履行になることで個人再生が失敗したケースはありませんでした。
ですので、これによって個人再生が失敗するということはあまり心配がなさそうだといえるでしょう。
個人再生に失敗すると借金はどうなる?
個人再生に失敗してしまうと、借金は一切減額されないことになります。
加えて、個人再生の手続きによって生じた、差し押さえ等の中止といった法的な効力もなくなってしまいます。
つまり、個人再生を申立てる前と何も変わらない状況になるのです。
さらに言えば、個人再生に必要な弁護士費用や裁判所費用を支払う必要があり、借金が増えてしまったということにもなりかねません。
なお、小規模個人再生で失敗したという場合でも、給与所得者等再生で進めるという方法もなくはありません。
もっとも、給与所得者等再生は小規模個人再生より減額幅が小さくなることが多いことから、再生債権者からの同意が得られなかったという場合を除いては選ぶメリットがあまりありません。
後述するように、どうしても借金問題を解決したい場合には、個人再生だけでなく自己破産も検討する必要があるといえるでしょう。
個人再生を成功させる4つのポイント
個人再生を成功させるにはどのようにすればよいのでしょうか。
次の4つのポイントを押さえるようにしてください。
1.個人再生が自分に合った債務整理方法か確認する
まずは個人再生という債務整理方法が、現在の借金額を整理する上で本当に合っているのかを考えてみましょう。
多くの場合、自己破産と迷うと思いますが、借金があまりにも多く収入が少ない人が無理に個人再生してしまうと、最終的に返済できずに個人再生を行った上に自己破産することとなります。
家を残したい気持ちも分かりますが、まずは冷静に考えてみましょう。
2.個人再生の実績がある弁護士・司法書士に依頼する
個人再生は裁判所を通して行うため、弁護士に依頼することで、スムーズな進行や成功率の向上が見込めます。
弁護士はあなたの経済状況を理解してくれるため、費用の分割払いに柔軟に対応してくれるはずです。
再生計画見込み額で分割払いとして、弁護士に履行テストをしてもらい、是非ご自身の家計が3年間という個人再生に耐えられるか否かを申立て前に体験してみてください。
体験してみて生活が厳しければ、担当の弁護士と破産手続きへの方針変更について相談してみて下さい。
まずは無料相談を行っている弁護士に相談してみましょう。
3.個人再生を反対する業者が債権者にいるか確認する
個人再生では、債権者による再生計画案の決議がおこなわれるため、反対する債権者がいないか確認しておく必要があります。
とくに、保証会社が債務者に代わって返済をおこなう代位弁済には注意が必要です。
さまざまな会社から借金をしている場合、代位弁済によって一つの保証会社に借金が集中してしまうことがあります。
借金が集中すると、保証会社はより多くの弁済を得たいという理由から否決する場合があります。
借金が集中しないためにも、日頃から借金の滞納をしないよう気を付けましょう。
4.弁護士・司法書士の指示に従う
弁護士や司法書士に依頼したらそれで必ず個人再生に成功するかといえばそうとも言い切れません。
弁護士や司法書士のアドバイスや判断に従わない場合には、個人再生が失敗に終わってしまうことも考えられます。
弁護士や司法書士から指示があった場合には、どのような内容であったとしても従うようにしてください。
少しでも不安や疑問がある場合にはしっかりと弁護士・司法書士に質問するようにしましょう。いずれにせよ、個人再生の成功する確率を上げたい場合には、弁護士・司法書士のアドバイスに素直に従うようにしてください。
個人再生が失敗した場合の対処法
個人再生に失敗した場合には、次の2つの対処法があります。
- 個人再生手続きを再申請する
- 自己破産を検討する
それぞれの内容を確認してみましょう。
個人再生手続きを再申請する
収入が増えて計画通りに借金返済をすることができるようになるなど、前回の個人再生手続きが失敗した原因を克服することができれば、再申請をすることで個人再生が行える可能性があります。
もともと個人で申請していた方が弁護士に依頼したことで、適切な個人再生手続きを行えるようになり個人再生認可となるケースもあります。
何が原因で失敗してしまったのか、その問題点を把握した上で解決するようにしましょう。
書類の不備で失敗した場合
個人再生の申立て時には、必要な書類が揃っているのか、書類に不備がないのかが非常に重要です。
必要な書類の数が多いため、提出を忘れてしまうことも多くみられます。
また、書類の数が多く内容も複雑であるため、書類内容に不備があるケースも多いです。
再度個人再生を申し立てる際には、慎重に準備を進めていきましょう。
問題行為を起こしてしまい失敗した場合
問題行為を起こしてしまった場合は、考えを改めて再度個人再生を申し立てるか、自己破産をするのか検討しましょう。
過去に個人再生の申し立てをしていた場合でも、再び個人再生の申し立てが可能です。
また、自己破産は現在抱えている全ての借金を帳消しにすることができます。
どちらを選ぶべきなのかは、弁護士へ相談するのがおすすめです。
ただし、問題行為を起こしたときに相談していた弁護士がいる場合、一度問題行為を起こして失敗していることから、受任を拒否される可能性が高いので注意しましょう。
債権者の同意が得られなかった場合
再生計画案の決議で債権者の同意が得られず否決した場合、再生計画案の見直しをおこないましょう。
無理な返済計画を立てている場合があります。今後の収入と現在の借金額を天秤にかけ、無理のない範囲で計画を立てましょう。
もし、自分で判断が難しいという方は弁護士に相談するのもおすすめです。
自己破産を検討する
個人再生に失敗した場合には、他の債務整理を検討しなければなりません。
通常は自己破産を行います。
個人再生とは異なりマイホームなどの財産なども原則として処分することになりますが、一方でほとんどの債権について免責されますので、自己破産後に借金を返済する必要がなくなります。
自己破産に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、破産法上認められた生活再建のための手段ですので、必要があれば躊躇せずに選択してください。
まとめ
個人再生を成功させるためには、しっかりと知識を身に付けるようにしましょう。
まずは基本要件をきちんと理解し、無理のない返済計画を立て、計画にしたがって返済をしていけば失敗せずに個人再生をおこなっていけるはずです。
ただし、手続きには専門的な内容が含まれるので、弁護士の協力の下、適切な個人再生手続きを行うことが失敗を極力防ぐことにつながります。
個人再生を検討している人は、必ず弁護士に依頼するようにしてください。なお、ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)では、個人再生に注力している弁護士をお住いの地域から比較して選んでいただけます。
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