個人再生でやってはいけないことは?失敗例や注意点を解説
借金の返済が苦しいとき、債務整理のひとつとして検討されるのが「個人再生」です。
しかし個人再生の手続きではやってはいけないことがあり、注意しなければ不認可となってしまいます。
本記事では、個人再生で失敗するリスクを減らすために、やってはいけないことや失敗例、個人再生など債務整理の得意な弁護士の選び方を解説します。
借金の解決策には、個人再生以外にも任意整理や自己破産があります。
これらの債務整理には、それぞれメリット・デメリットがあり、自身の状況にあった方法を選択することになります。
あなたの状況次第では、個人再生ができない、あるいはベストな選択肢ではない可能性もあるでしょう。
個人再生を検討中の方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
依頼するメリットは以下の通りです。
- 自分にあった解決策を提示してもらえる
- めんどくさい手続きをすべて任せられる
- 受任通知で、催促・取り立てが停止する など
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、借金問題でお悩みの方は、まずは下記よりご相談ください。
個人再生をするメリット・デメリット
個人再生をするメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
- 借金の元本を5分の1~10分の1程度に減らせる
- 借金の理由・職業を問わずに手続きができる
- 持ち家や車などの財産を手元に残せる可能性がある
個人再生の最大のメリットは、持ち家などの財産を維持したまま借金を大幅に減らせる可能性があることです。
デメリット
- 借金の返済は続けなければならない
- 官報(政府が発行する機関紙)に個人情報が載る
- 信用情報機関に事故情報(ブラックリスト)として登録される
- 条件を満たしていなければ、手続きができない
- 裁判所に提出する書類が多く、複雑な手続きが必要
個人再生をするデメリットとして、信用情報機関に事故情報、いわゆる「ブラックリスト」として登録されることなどが挙げられます。
また、あくまで借金の減額であり、返済は続けなければなりません。
また、個人再生をするには借金の元本総額が5,000万円以下であるなどの 条件を満たす必要があり、手続きも複雑になることはあらかじめ理解しておきましょう。
メリット・デメリットについては以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
個人再生のメリットとデメリット|後悔しない為に知るべき事
個人再生の手続きでやってはいけないこと
個人再生の手続きに関連して、以下のようなことはやってはいけません。
虚偽報告をする
弁護士や裁判所に対し、借金の金額や収入、所有財産などについて虚偽の報告をしてはいけません。
たとえば、返済額を少なくするために財産の一部を報告しないなどです。
虚偽報告が発覚すると、個人再生の申し立ては認められないので、必ず偽りなく報告しましょう。
再生計画案の提出期限を守らない
個人再生の手続きにおいて、裁判所に提出する書類のなかでも特に重要なのが、再生計画案です。
再生計画案は、減額後の借金を今後各債権者に対してどのように返済するかを記載した書面であり、提出期限が設定されています。
再生計画案の提出期限を守らなかった場合には、裁判所は個人再生手続を廃止します(民事再生法191条2号)。
どうしても期限までに提出できない事情がある場合は、事前に裁判所へ延長申請をしましょう。
特定の債権者を優先して返済する
個人再生などの債務整理には、債権者平等の原則があります。
特定の債権者(借金の借入先)を優先して返済を行ってしまうと、返済額があがってしまうなど手続き上悪影響が生じる可能性があります。
個人再生が失敗する7つの例
個人再生でやってはいけないことについて、以下では具体的に7つの例を挙げて、個人再生が失敗するケースを確認していきます。
1.申請時や再生計画案など書類に不備があった
裁判所へ提出する書類の記入漏れや不備があり、期限内に提出できなかった場合、個人再生手続が進められず失敗に終わる可能性があります。
裁判所への提出書類は記入漏れや不備が無いよう、また期限を守れるよう、慎重かつ計画的に作成しなければなりません。
以下のように提出すべき書類も多いので、本人が書類を作成する際には不備が起こりやすいです。
早めに準備することを心がけましょう。
- 申し立て書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 添付書類(源泉徴収票・給与明細・財産目録・戸籍謄本・住民票など)
2.再生計画の返済総額が最低弁済額を満たしていなかった
個人再生は、いくらでも借金を減額できるわけではありません。
最低限支払わらなければならない額(最低弁済額)が決まっており、これを下回る再生計画は認可されません。
最低弁済額の基準は、借金の総額によって以下のように異なります。
借金の総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万未満 | 全額 |
100万円~500万円未満 | 100万円 |
500万円~1,500万円未満 | 借金総額の20% |
1,500万円~3,000万円未満 | 300万円 |
3,000万円~5,000万円以下 | 借金総額の10% |
最低弁済額を決定する基準は他にも以下の2つがあり、これらのうち最も大きな金額が、最低弁済額となります。
- 清算価値保証基準:破産した場合に債権者に配当される金額
- 2年分の可処分所得額(給与所得者等再生の場合のみ)
なお、個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があり、どちらかの手続きを選ぶかによって再生計画案に記載する返済総額の下限額が変わります。
- 小規模個人再生:最低弁済額法定基準と精算価値保証基準を考慮
- 給与所得者等再生:最低弁済額法定基準、精算価値保証基準、2年分の可処分所得額を考慮
給与所得等再生に関して詳しくは、「給与所得者等再生手続き」を参考にしてください。
3.再生計画の実行が難しいと判断された
申立人は再生計画に沿って借金を返済しますが、計画通りの返済が難しいと判断される場合は、その計画案は認可されません。
判断基準は、減額された借金を返済期間内(約3年~5年)に完済できるだけの返済能力があるかという点です。
そのため、申立人が安定した収入を得ているかどうかは特に厳しく確認されます。
また、以下の要素があるときも、再生計画の実行が難しいと判断される可能性があるので注意しましょう。
- 再生計画案以外にも多額の滞納した税金を支払わなければならない
- 再生計画の履行中に、収入が確実になくなる・減ると考えられる
4.再生計画案における不正行為が発覚した
裁判所に提出する財産目録に不実記載をした等、財産隠しが発覚したような場合も個人再生手続を進められず失敗に終わる可能性があります。
特定の債権者だけを債権者一覧表に記載せず、個人再生の対象から外そうとするのも債権者平等の原則に反するのでやめましょう。
5.借金の総額が5,000万円を超えていた
個人再生は対象となる借金の総額が5,000万円以下の場合に利用できる手続きです。
したがって、借金の総額が5,000万円を超えるなら、そもそも手続き自体を進めてもらえません。
借金が5,000万円を超えているのであれば、他の方法で借金を減額してから手続きを行うか、自己破産を検討したほうがよいでしょう。
6.債権者の過半数が再生計画案に反対した
小規模個人再生では、再生計画は、債権者の可決(消極的同意)なしには認可されません。
具体的には、再生計画案に対して、再生債権者総数の半数以上の再生債権者が不同意回答をした場合や、不同意回答をした再生債権者の債権額が再生債権額総額の過半数である場合には、再生計画案は認可されません。
小規模個人再生は借金の減額率が高く、債権額が大きく減ってしまうため、債権者の意向が重視されています。
一方、給与所得者等再生では債権者の意向は関係ありませんが、こちらは減額率が低いという特徴があります。
債権者の同意を得られそうにないのであれば、給与所得者等再生を検討しましょう。
7.特定の債権者にだけ返済した
特定の債権者にだけ優先して返済をすると、手続が廃止されたり、再生計画が不認可となる可能性があります。
債権者平等の原則に反しないように、偏った返済は止めましょう。
個人再生に失敗してしまったらどうすればいい?
個人再生に失敗すると、借金が減額されず問題が解決されません。
もし個人再生が失敗してしまったら、以下の方法を検討しましょう。
借金の減額、可処分所得を増やしてから再度申し立てる
個人再生は一度不認可になっても、再び申し立てられます。
そのため、借金を5,000万円以下に減額する・可処分所得を増やすなど、不認可になった理由を改善して再度申し立てることを検討しましょう。
自己破産を検討する
個人再生に失敗した人のなかには、自己破産を選択する人もいます。
自己破産とは、借金返済の見込みがない場合に、裁判所に申立てをして借金の支払義務を免除してもらう手続です。
ただし、自己破産の場合は、手元の価値ある財産は換価され、債権者に配当することが原則です。
どの手続きを選択すべきか、慎重に検討しましょう。
個人再生の不認可を避ける為に弁護士への依頼をおすすめする理由
個人再生の手続きは、やってはいけないことや注意点が多く、自分だけでおこなうのは難しいといえます。
個人再生の手続きを円滑に進めるために、弁護士への依頼をおすすめする理由は以下のとおりです。
書類の不備がなくなる
個人再生は裁判所に提出する書類が多く、手続きも複雑です。
そのため法律に詳しくない人が書類を作成すると、不備が起こりやすく、失敗するリスクが高まります。
個人再生などの債務整理を得意とする弁護士に依頼をすれば、書類手続きをスムーズに進められるでしょう。
債権者との窓口になってくれる
弁護士は、債権者との窓口になってくれるので、自分で債権者と直接やり取りする負担もなくなります。
また、弁護士に依頼をすると、債権者に受任通知が送られます。
受任通知とは、弁護士が債務者の代理人になったことを伝えるための書面です。
これが債権者である貸金業者に届くと、原則として貸金業者は、債務者に対して直接借金の取立てを行うことができなくなります(貸金業法 21条1項9号)。
取り立ての負担から解放されるという点も、弁護士へ依頼するメリットです。
再生計画案を作成してくれる
再生計画案は、返済総額など正確に記載する必要があり、作成には非常に手間がかかります。
そのため、個人で再生計画案を作成するのは難しいでしょう。
弁護士なら再生計画案の作成をサポートしてくれるだけでなく、裁判所に認可されやすい計画案をアドバイスしてくれます。
最後に|個人再生の手続きに不安を感じたら弁護士に相談を
個人再生の手続きは、複雑なうえにやってはいけないことも多く、自分でおこなうには負担が大きいでしょう。
せっかく時間をかけたにもかかわらず失敗してしまうのは避けたいものです。
自分で書類を作成することによる不備や、債権者とのやり取りが上手くできそうにないなど、個人再生の手続きに不安を感じたら弁護士に相談しましょう。
「ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)」には、個人再生などの債務整理が得意な弁護士が多数掲載されています。
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