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奨学金が返せないとどうなる?滞納するリスクと救済措置について解説

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奨学金が返せないとどうなるのか、皆さんはご存知でしょうか。

今や大学生の約半数が利用している奨学金ですが、返せない人が増えていることが社会問題にもなっています(令和4年度学生生活調査・高等専門学校生生活調査・専門学校生生活調査|独立行政法人 日本学生支援機構)。

奨学金を滞納すると、督促されたり事故情報が登録されたりして生活に影響が出る恐れがあります。

一定期間の返済金額を減額できたりする制度もあるので、返済が厳しい場合は放置せずにすみやかに対応しましょう。

本記事では、奨学金の返済に困っている方向けに「奨学金が返せないとどうなるのか」「どうしても返せないときはどのようにすればよいのか」について解説します。

もし、あなたが奨学金の返済に困っており、どうすればよいかわからない状態に陥っているのであれば、本記事を読むことで道が開ける可能性が高まりますので、ご覧ください。

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奨学金が返せなくて延滞している人は30万人以上

奨学金には「貸与型」と「給付型」の2種類あります。

給付型の場合は返済義務が生じませんが、貸与型の場合は返済義務があります

独立行政法人日本学生支援機構が2013年12月におこなった調査では延滞者が33万4,000人ほどと、決して少なくない数字です。

下のグラフを見ても増加傾向にあるのがわかります。

奨学金が返せない人の平均返済額

上記のグラフのとおり、延滞している人の数は横ばいですが、返されていない金額は年々増加傾向にあります。

奨学金が返済できない理由はどういったところにあるのでしょうか。

その原因としては、大学を卒業するまでにかかる学費が高額なことや、高額な学費を賄うために借りる奨学金の額が高額であることが考えられます。

平均返済総額は288万円

大学を卒業するためには約200万円~500万円の学費を納める必要があります。

一方、奨学金を利用している人達の返済総額の平均は288万円だといわれています。

無利息で毎月1万5,000円の返済をしても完済までに16年かかる計算です(4割以上の人が活用した奨学金、返済額は平均288万、完済までは約16年|マイナビ 学生の窓口)。

また、奨学金利用者の中には奨学金が予め返済免除されている人もいますが、免除者を除くと返済総額の平均は324万円にもなります。

これは月々、無利息で返済しても18年の返済期間を要する金額です。

不景気な昨今ですが、大学卒業後に家庭を持つ方は多いでしょう。

奨学金の返済が生活を圧迫する要因になっている方も少なくないでしょう。

ここで、日本学生支援機構が2013年12月におこなったアンケートを基に、延滞が発生してしまう原因について紹介します。

延滞が始まった理由

理由

割合

忙しかった金融機関に行くことができなかったなど

8.2%

返還を忘れていた、口座残高を間違えていたなどのミス

7.3%

家計の収入が減った

72.9%

家計の支出が増えた

34.5%

入院、事故、災害等に遭った

18.1%

返還するものだとは思っていなかった

2.7%

その他

28.3%

※2つまで回答可能

延滞が続いている理由

理由

割合

本人の低所得

51.1%

本人が失業中無職

15.1%

本人が学生留学を含む

0.7%

本人が病気療養中

5.3%

本人の借入金の返済

19.8%

親の経済困難本人が親への経済援助をしており支出が多い

18.9%

親の経済困難本人親が返還する約束

17.7%

配偶者の経済困難

5.4%

家族の病気療養

5.7%

忙しい金融機関にけないなど)

3.5%

奨学金の延滞額の増加

29.9%

返還するものだとは思っていない

0.5%

その他

6.5%

※2つまで回答可能

近年の不景気により、なかなか収入が上がらないことや、そもそもの収入が少ないことなどが原因となっているようです。

それでは実際に返済を怠るとどのようなリスクが生じるのか、次項で詳しくみていきましょう。

奨学金を返せないと発生するリスク

当然ですが延滞している期間が長くなればなるほどリスクは大きくなります。

奨学金を延滞しているとどのようなリスクがあるのか、順を追ってみていきましょう。

年1.5%~10%の延滞金が発生する

規定の返還期日を超えて返済がされないと延滞金が1.5%~10%発生します。

第一種奨学金(無利息)か第二種奨学金(利息付き)かで割合が変わり、詳細は下記の表をご覧ください。

貸与種別

採用年度

貸与が終了した年度

延滞金の割合

第一種奨学金

無利息

平成17年3月以前採用

平成10年2月以前に貸与終了

年1回払込用紙で返済

返還期日から6ヵ月間経過した期日が

平成26年3月31日までに該当する:5%

平成26年4月1日から令和2年3月31日までに該当する:2.5%

令和2年4月1日以降に該当する:1.5%

平成10年2月以前に貸与終了

口座振替の手続きをおこなって返済

返還期日から6ヵ月間経過した期日が

平成26年3月27日までに該当する:5%

平成26年3月28日から令和2年3月27日までに該当する:2.5%

令和2年3月28日以降に該当する:1.5%

 

平成10年3月以降に貸与終了

返還期日から6ヵ月間経過した期日が

平成26年3月27日までに該当する:5%

平成26年3月28日から令和2年3月27日までに該当する:2.5%

令和2年3月28日以降に該当する:1.5%

平成17年4月以降採用

返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて

平成26年3月27日まで365日 あたり)10%

平成26年3月28日から令和2年3月27日まで:年(365日あたり)5%

令和2年3月28日以降365日たり)3% 

第二種奨学金

利息付き

平成10年2月以前に貸与終了

年1回払込用紙で返済

返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて

平成26年3月31日まで365日たり):10%

平成26年4月1日から令和2年3月31日まで:年(365日あたり)5%

令和2年4月1日以降365日たり):3%

平成10年2月以前に貸与終了

口座振替の手続きをおこなって返済

 

返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて

平成26年3月27日まで365日たり):10%

平成26年3月28日から令和2年3月27日まで:年(365日あたり)5%

令和2年3月28日以降365日たり):3%

 

平成10年3月以降に貸与終了

返還期日の翌日から返還した日までの日数に応じて

平成26年3月27日まで:年(365日あたり)10%

平成26年3月28日から令和2年3月27日まで:年(365日あたり)5%

令和2年3月28日以降:年(365日

あたり)3%

連帯保証人への請求がおこなわれる

親や知人に連帯保証人になってもらう「人的保証」の場合に延滞していると、あなただけでなく連帯保証人になってくれた人にも請求がおこなわれることになります。

3ヵ月間滞納すると個人信用情報機関に登録される

わかりやすい表現をするとブラックリストに登録されることになります。

個人信用情報機関に登録されると「経済的信用が低い」と判断され、以下のようなことが起こります。

  • 住宅ローン、自動車ローンなど各種ローンが組めなくなる
  • クレジットカードが利用停止になる、新規の発行ができない

要するに「新たに借入ができなくなる」ということです。

しかし、個人信用情報機関に登録された情報はあくまでも金融機関のみで共有されます。

そのため、金融機関で勤めていたり、司法書士・行政書士・弁護士・税理士などの士業でないかぎり、就職で不利になったり、家族に弊害が生じるといったこともありません

9ヵ月間滞納すると一括払いを求められる

返還期日が来ていない分や延滞金を含めて全てを一括で返済するように求められます。

提訴や給料・財産の差し押さえなど法的措置を取られる

継続して返済に応じなければ、給料や財産を差し押さえられる強制執行がおこなわれます。

日本国際教育支援協会が保証人になる「機関保証」を選択した方は、保証機関が未納分を代わりに支払いますが、保証機関から一括請求をされます。

支払わなければ差し押さえが入りますので、基本的な流れは変わりません。

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奨学金を返せないときに利用すべき救済処置

ここまで奨学金を返済しないと起こりえる危険性について解説してきました。

日本学生支援機構は返済期限を猶予したり、返済額を一部減額するなどの救済措置を用意しています。

それぞれに条件がありますので、あてはまるようであれば救済措置を利用するようにしましょう。

返還期限の猶予制度を利用する

返還期限の猶予制度は、災害・傷病・経済困難・失業などの返済が難しい事情が生じた方を対象にした制度です。

日本学生支援機構による審査が通れば、最大で10年返還を延長できます。

元金や利息が免除されるものではありませんが、将来的に返済の見込みがあるものの、一時的に返済できないような場合は猶予制度を利用しましょう。

具体的に、どのような条件が必要なのかみていきましょう。

病気で働くことが困難な場合

病気で働くことが困難な場合、2ヵ月以内に発行された「就労困難の記載がある診断書」が必要です。

最寄りの病院で発行してもらいましょう。

ほかにも収入・所得に関する基準などもあり、詳しくは以下のリンクを確認してください。

生活保護を受給中の場合

生活保護を受給中の場合、2ヵ月以内に発行された「生活保護受給証明書」が必要です。

生活保護受給中の方は厚生労働省に問い合わせてみましょう。

失業中の場合

失業中の場合、以下のいずれかが必要です。

  • 雇用保険受給資格者証(求職活動記録面含む)のコピー
  • 雇用保険被保険者離職票のコピー
  • 失業者退職手当受給資格証のコピー
  • 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書のコピー(喪失理由が離職で、離職年月日が確認できる場合に限る)

これらの証明書はハローワークに申請することで受け取ることができます。

もしこれらの証明書の取得が困難な場合は、退職した勤務先に「退職証明書のコピー」や「健康保険厚生年金保険資格取得(喪失)証明書のコピー」の発行を申請してください。

経済的に困窮している場合

ここでの経済困難とは、給与所得者の場合は年間収入300万円以下、給与所得以外の所得を含む場合は年間所得金額200万円以下のことを指します。

経済的に困窮している場合、以下のいずれかが必要です。

  • 令和6年度(令和5年分)所得証明書
  • 令和6年度市県民税((所得・課税))証明書
  • 令和6年度住民税非課税証明書

減額返金制度を利用する

減額返金制度は毎月の返済額を減らし、返済期限を延長する救済措置です。

減額返金と聞くと「奨学金の元金が減る」とイメージする方もいるかもしれませんが、元金や第二種奨学金でかかる利息分が減るわけではありません。

適用条件は、返還期限の猶予制度の条件に加えて、以下にあてはまることが必要です。

  • 願出および審査の時点で延滞がないこと
  • 口座振替で返済をおこなっていること
  • 月賦の返済方法でのみ適用される(年払いや半年払いでは適用外)
  • 個人信用情報の取扱いに関する同意書が提出済みであること など

企業返済支援制度を利用する

企業返済支援制度とは、勤務先が貸与型奨学金の返済を肩代わりしてくれる制度のことです。

企業によって導入の有無は異なりますが、もし勤め先が導入している場合は利用を検討しましょう。

利用条件や具体的なサポート内容などについては、総務や経理などの担当者に直接確認してください。

奨学金の返済が免除になるケース

以下のケースにあてはまる場合は、未返済の金額の全て、もしくは一部が免除になります。

本人が死亡した場合

本人が死亡した場合、本人の相続人や連帯保証人が「貸与奨学金返還免除願または給付奨学金返還免除願」と「本人死亡の事実を記載した戸籍抄本、個人事項証明書または住民票などの公的証明書」を提出することで免除されます。

精神や身体の障害で働けない場合・労働能力が極端に低下した場合

本人が精神や身体の障害で働けない場合などは、本人と連帯保証人(機関保証の場合は本人のみ)が「貸与奨学金返還免除願または給付奨学金返還免除願」や「診断書」などを提出することで免除されます。

奨学金の返済に困ったときの相談先

日本学生支援機構では奨学金の返済に困った方専用の相談センターを設けています。

奨学金を返せず困っているのであれば、まずはナビダイヤルに相談してみましょう。

自身の状況を鑑みて適切な救済措置を案内してくれるかもしれません。

奨学金は返せないし救済措置も利用できない場合の対処法

もし、返還猶予制度や減額制度なども利用できない場合は債務整理を選択するしかありません。

債務整理の方法としては、任意整理・個人再生・自己破産の3つがあります。

いずれの方法も個人信用情報機関に登録されることにはなります。

新たに借金ができなくなるといったデメリットはありますが、どうしようもない状況に陥っているのであれば利用を検討した方が良いでしょう。

検討する順番としては任意整理→個人再生→自己破産の順になりますが、3つの方法の中でどれが最適かは収入や返済額の状況によって変わります

ここでは、どのような場合にどの選択肢を選ぶのがよいのか、それぞれの特徴とあわせて解説していきます。

任意整理

任意整理は、貸金業者と返済額や返済方法を交渉して合意した金額を返済していく方法で、交渉する貸金業者を選ぶことが可能です。

たとえば、奨学金以外にも借金がある場合、奨学金以外の借金を任意整理することで合計の負担額が減り、奨学金を問題なく返せるようになるかもしれません。

奨学金以外にも多数借金があり、返済に困窮している方にはおすすめの方法です。

個人再生

任意整理を検討しても、借金の額が多すぎて返済の目処が立たないということもあるでしょう。

そんなときは個人再生を検討してみましょう。

個人再生も、任意整理と同じく借金を減額して返済していく方法になります。

大きく異なるのは「任意整理よりも借金の額が減ること」と「裁判所が介入すること」の2点です。

デメリットとしては「手続きが複雑なこと」や「必要書類の提出を怠ると手続きがなかったことになること」などが挙げられます。

任意整理でも返済していくことが難しい場合は個人再生を検討しましょう。

自己破産

自己破産は借金の返済が事実上不可能な場合に取る方法です。

自己破産をして免責許可決定を受ければ、借金を0円にして経済的に再出発が可能になります。

ただし、自己破産をすると必要最低限の財産以外は処分されるなどのデメリットもあり、あくまでも最終手段として簡単に選択すべきものではありません。

当たり前のことですが借りたお金は最大限返すように尽力しなければなりません。

どうしても返せないときにのみ自己破産をするのです。

注意しなければならないのは、裁判所に自己破産の申し立てをしたとしても免責を受けなければ借金が0円にはならないということです。

免責とは裁判所が、破産手続における配当手続によって弁済が得られなかった債権について「その債務を弁済すべき責任を免除する」と認めることです。

任意整理や個人再生でも解決しない状況であるとわかってから初めて自己破産を選択しましょう。

任意整理・個人再生・自己破産は専門家に相談するのがおすすめ

債務整理では法的な手続きや貸金業者との交渉が必要で、個人が一人でおこなおうとすると大きな負担になります。

もしあなたが任意整理・個人再生・自己破産を検討しているのであれば、債務整理が得意な弁護士に相談してみましょう。

弁護士であれば、あなたの経済状況を鑑みて、最適な方法を提案してくれます。

まとめ

奨学金の未返還問題は社会的にも注目度が高く、問題に直面している方も多いことでしょう。

奨学金の返済に困っていても、自ら命を絶つようなことだけは止めてください。

あなたを救う救済措置は存在しています。

利用できる救済制度は必ず利用して、新しい人生を歩んでください。

弁護士なら状況に応じた適切なアドバイスが望めますし、債務整理の手続きを依頼することもできるので、まずは初回無料相談を利用してみましょう。

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この記事の監修者
吉田大輔法律事務所
吉田 大輔 (仙台弁護士会)
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本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。