自己破産したら退職金はどうなる?ケース別で退職金の取り扱いを解説
自己破産した場合に自身の退職金がどうなるのか気になる方も多いことでしょう。
本記事では、自己破産手続で退職金がどのように取り扱われるのかについて説明します。
自己破産の恐れがあり、退職金がどうなるのか気になる方はぜひご覧ください。
自己破産とは
まずは自己破産とは何なのかを理解しておきましょう。
自己破産は、返済困難な債務を抱えた個人が利用できる法的救済手段です。
裁判所に申立てをおこない、審査を経て認められると、ほとんどの債務が免除されます。
ただし、一部の資産は処分され債権者への返済に充てられます。
この手続きにより債務者は経済的に再出発できますが、個人信用情報に記録が残り、将来の借入れや特定の職業に就く際に影響が出る可能性があります。
また、一定期間は新たな借入れが制限されます。
自己破産は最終手段です。
決断する前に弁護士に相談し、可能ならば他の債務整理方法も検討しましょう。
自己破産のメリット3つ
自己破産した場合、主に以下のようなメリットがあります。
- 借金の支払いを免除される
- 債権者の取り立てから解放される
- 心理的な負担が軽減される
自己破産は、借金問題から解放されるための手段の一つです。
借金の支払いを免除されるため、経済的な負担から解放され、債権者の取り立てから解放されることで精神的な負担も軽減されます。
これにより、新たな生活を始めるための第一歩を踏み出すことができます。
自己破産のデメリット3つ
続いては自己破産のデメリットを解説します。
自己破産の主なデメリットは以下の3つです。
- 財産を失う
- 信用情報に記録され、一定期間、ローンやクレジットカードが利用できなくなる
- 社会的な信用を失う可能性がある
自己破産をすると財産を失うのはもちろんのこと、信用情報に5年以上記録され、ローンやクレジットカードが利用できなくなります。
また、官報に掲載されることで周囲に知られる可能性もあり、就職や転職に不利に働くことも考えられます。
その他にも、一定期間、職業が制限される場合もあります。
このように、自己破産は人生に大きな影響を与えることになります。
自己破産し退職金がすでに支払済の場合
それでは、自己破産し破産手続開始の決定がなされた際、すでに退職金が支払済の場合、退職金はどうなるのでしょうか。
退職金が支払済の場合、現預金が破産手続きのなかで処理されます。
以下で具体的に解説します。
1. 退職金を現金として保管している場合
破産法上、99万円以下の現金は自由財産となり、破産者が保有することが可能です(破産法第34条第3項、民事執行法第131条第3号)。
そのため、退職金として支払われたものかどうかにかかわらず、99万円以下の現金は破産財団に組み込まれず、手元に残ります。
そのため、この範囲で破産者が自由に費消することができます。
一方で99万円を超える現金は、その全額が破産財団に組み込まれます。
つまり、退職金として支払われた現金が数百万あっても、99万円を超えた分の金額は破産管財人の管理下に置かれ、債権者への配当原資等に回されます。
2. 預金・貯金として保管している場合
預貯金の取り扱いは、上述した現金とは異なります。
預貯金者が金銭保管先の銀行等に対して有しているのは、預託金返還請求権という金銭債権です。
このような金銭債権は法律上当然には自由財産になりません。
そのため、預貯金はその全額が破産財団に組み入れられて配当原資に回されるのが原則です。
もっとも、東京地方裁判所の運用では預貯金残高が20万円未満である場合は、これを自由財産として扱うようです。
そのため、預貯金のうち20万円は手元に残る可能性があります。
自己破産直前に預金を引き出しても預貯金として処理される可能性がある
なお上述のように現金は99万円まで保有することができます。
自己破産直前に預金を引き出せばよいのではと考える方がいらっしゃるかもしれませんが、注意が必要です。
このような直前での引出し行為については、裁判所の判断で現金としてではなく預金として処理される可能性があるためです。
自己破産前に預貯金を引き出してよいかどうか判断がつかない場合は、自己破産に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
自己破産し退職金をまだ受領していない場合
では、勤務先を退職しているものの退職金を受領していない場合、退職金はどのように取り扱われるのでしょうか。
主に以下のケースが該当します。
退職済だが退職金がまだ支払われてない場合
この場合、勤務先に対する退職金請求権が債務者の財産として破産財団に組み込まれます。
もっとも、退職金債権は法律上4分の3の差押えが禁止され、4分の1に限り差押えが可能とされています。
また、破産法では原則差押禁止部分を破産財団に組み込むことができないとされています (破産法第34条第3項第2号、民事執行法第152条第1項第2号)。
そのため、未払いの退職金債権については4分の1部分に限り、破産財団に組み入れられるのが原則です。
しかし、破産手続開始後に、退職金について現預金として支払いがされた場合には、差押禁止債権ではなく単なる金銭債権や現金となり、上記規律の適用外となる可能性があるので、注意してください(破産法34条3項2号但書)。
まだ退職しておらず退職金を受領していない場合
まだ退職しておらず、退職金を受領していない場合の取り扱いについて解説します。
1. 破産手続中に退職することが決まっている場合
退職が近い場合、将来的に退職金を受け取ることができる可能性が高い状態といえます。
そのため、上述の勤め先を退職しているが退職金を受領していない場合と、同様の処理となる可能性が高いといえます。
2. 退職まで何年もあり、破産手続中に退職する見込みもない場合
勤め先に退職金制度があり、将来的に退職金を受け取れる可能性があるとしても、実際に受け取ることができるまで、何年もかかる場合は実際に退職金を受け取れるか否かは不確定です。
そのため、東京地裁では、(中略)退職金支給見込額の8分の7を自由財産とするという取り扱いをしているようです 。
つまり、退職金債権の8分の1のみ破産財団に組み入れることになります。
さらに、この8分の1の金額が20万円に満たない場合には、退職金債権を破産財団として把握しないという扱いをしているようです。
そのため、支給される見込の退職金額が160万円未満であれば、東京地裁の場合には退職金債権を破産手続で考慮する必要がないということになりそうです。
まとめ
自己破産は、借金問題に苦しんでいる人にとって、新たなスタートを切るための手段の一つです。
しかし、デメリットも大きいので、安易に決断することはやめましょう。
まずは債務整理に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
おすすめの相談先としては法テラスがあります。
法テラスは、経済的に困難な人に対して、法律に関する相談や支援をおこなうための国の機関です。
弁護士に無料相談することが可能です。
またベンナビ債務整理には、無料相談が可能な法律事務所が登録されています。
お近くの弁護士に無料相談したい場合は、ベンナビ債務整理で探してみることをおすすめします。
【最短30秒】ユーザーアンケートに回答する |
|
【借金のご相談は何度でも無料!】【法人破産にも対応】経営が苦しいと感じる経営者の方はご相談を。返済に追われ、生活ができない/督促が来てしまったなど、個人の方からのご相談も歓迎◎【依頼後は最短即日で督促が止まります!】
事務所詳細を見る【秘密厳守の法律相談/初回相談無料】【分割払いOK】【借金総額200万円以上の方へ】毎月返済がつらい方、自己破産を迷っている方、ご相談下さい。1万件以上の破産・再生事件を担当した弁護士が味方になります。
事務所詳細を見る【自己破産/法人破産】【相談実績約10,000件】【秘密厳守の法律相談/初回相談無料】【借金総額200万円以上の方】返済義務を無くしたい・自己破産を迷っている方、ご相談下さい。経験豊富な弁護士がお力となります
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡
いつ起きるかわからない法的トラブル。弁護士費用の準備はできていますか?
答えがNoの方、ベンナビ弁護士保険が役立ちます。
弁護士への依頼費用は数十万~数百万円かかりますが、ベンナビ弁護士保険(月2,950円)に加入しておくことで、弁護士費用の補償が受けられます。
- 保険料は1日あたり約96円
- 通算支払限度額1,000万円
- 追加保険料0円で家族も補償
補償対象となる家族が5人の場合、1人あたりの保険料は月590円(2,950円÷5人)。労働問題、ネット誹謗中傷、近隣トラブルなど様々な法的トラブルに対応しています。
補償内容、付帯サービスをまとめた資料の請求はWEBから。
弁護士保険で法律トラブルに備える
自己破産に関する新着コラム
-
自己破産によって差し押さえられない年金の種類と、差し押さえられるケースはどのようなものかについて解説していきます。基本的に自己破産によって年金が差し...
-
自己破産をすると、基本的に車は回収されます。しかし車の時価や財産状況などによっては、車を手元に残せる可能性もあります。自己破産をしても車は手元に残し...
-
自己破産は、借金問題を解決するための有力な選択肢です。自己破産による影響について正しい知識を備え、自己破産すべきかどうかを適切に判断しましょう。本記...
-
自己破産と任意整理は、いずれも借金などの負担を解消・軽減できる「債務整理」の代表的な手法です。本記事では、自己破産と任意整理の違いや、債務整理手続き...
-
不景気といわれている現代でも、住宅ローンを組まれる家庭は多くいらっしゃいます。住宅ローンは、何十年の長い期間で返済する高額なローンのため、少しでも返...
-
カード破産の無料相談先をご紹介します。また、カード破産以外の方法で借金問題を解決する方法や弁護士に依頼した場合の流れも併せて解説します。
-
仮想通貨取引で巨額の借金を抱えた場合、借金を理由に破産することはできるのでしょうか?この記事では、仮想通貨で破産をするシチュエーションをご紹介した上...
-
自己破産後でも事業再建や企業のために融資は必要不可欠でしょう。では自己破産者に融資をしてくれる機関はあるのでしょうか?この記事では自己破産者にも融資...
-
自己破産には借金返済が免除されるメリットだけではなく、手続きに時間がかかる・一定額以上の財産を手放さなければならないなどのデメリットがあります。本記...
-
自己破産を検討している場合、依頼できる専門家には司法書士と弁護士がいます。どちらも法律の専門家ですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。本記...
自己破産に関する人気コラム
-
自己破産を検討されている方にとっては、破産後の生活は気になるところでしょう。この記事では、自己破産後に受ける制限や、生活を良くするために考えておきた...
-
自己破産には借金返済が免除されるメリットだけではなく、手続きに時間がかかる・一定額以上の財産を手放さなければならないなどのデメリットがあります。本記...
-
廃課金とは、廃人と課金を合わせたネットスラングで、一般的に収入に見合わない金額を課金する人を指します。本記事では廃課金の定義や課金してしまう人の特徴...
-
自己破産では裁判所に支払う費用のほか、弁護士に依頼する場合は弁護士費用もかかります。状況により費用は異なり、弁護士費用は後払い可能な場合もあります。...
-
自己破産は、全ての借金の支払い義務を逃れ、所持する高価な財産を処分する法的手続きであり、生活をゼロから再建するための最終手段です。本記事では自己破産...
-
ブラックリストに掲載される期間はどの程度なのでしょうか。 よく、「ブラックリストに載るとカードが作れない」などという話を聞きますが、そもそもブラック...
-
結論からいいますと、借金がある状態でも生活保護を受けることができます。そこで、生活保護と借金の関係を深堀していきたいと思います。
-
破産宣告(はさんせんこく)とは何かを解説!手続きの流れや条件、かかる費用に加えて、自己破産を最短で進める為の方法をご紹介していきます。自己破産にはデ...
-
自己破産をする上で、破産管財人(はさんかんざいにん)が何をするのか、どのような人なのかを知っておくことで、免責を受けられる可能性が高まります。この記...
-
奨学金を借りたはいいものの、就職後も返済が厳しく破産に追い込まれる件数は1万件にのぼっています。ただし、破産にはリスクがあり、あなたの借金が免除され...
自己破産の関連コラム
-
自分が自己破産をすることになった場合、連帯保証人はどのような被害・もしくは影響が出るのでしょうか。連帯保証人の責任の重さを中心に解説していきます。
-
自己破産後に車を所有できるかどうかはケースごとに異なります。この記事ではどういったときに車を所有できるのかについて解説した後に、自己破産後に車をロー...
-
カード破産の無料相談先をご紹介します。また、カード破産以外の方法で借金問題を解決する方法や弁護士に依頼した場合の流れも併せて解説します。
-
デビットカードとは、後払いではないクレジットカードと言っても過言ではありません。なじみのある言葉ですが、その仕組みを理解できている人は少ないようです...
-
借金50万円を「甘く」「軽く」考えないでください。今すでに返済に困っていれば、すぐに膨れ上がります。借金50万円を無理なく確実に返済する方法を紹介し...
-
裁量免責をしてもらうには、裁判官が見るポイントを抑えている必要があります。この記事では、免責不許可事由や免責不許可事由に該当していても裁量免責しても...
-
自己破産をすると、原則として家を手放さなくてはいけません。しかし、例外的に残せることもあります。この記事では、自己破産のよくある誤解、自己破産後に家...
-
やむを得ず、借金が返せない状況に陥ってしまい自己破産をすることになる方もいると思います。そんな中、家賃の支払いだけを続けていては自己破産の免責の許可...
-
自己破産で多額の借金をゼロにしたい。そのためには裁判所から『免責』を許可してもらう必要があります。借金を返済できる収入がないといった理由で自己破産を...
-
今回は実際に自己破産をした方からお話を伺い、記事にしました。借金がふくらんでしまった過程、自己破産までの流れなど他では聞けないとても「リアル」な話が...
-
自己破産と任意整理は、いずれも借金などの負担を解消・軽減できる「債務整理」の代表的な手法です。本記事では、自己破産と任意整理の違いや、債務整理手続き...
-
自己破産すると携帯電話はどのなるのでしょうか?自己破産が携帯電話の使用者へ与える影響、破産者の携帯電話の取得方法とシチュエーション別にご紹介します。
弁護士・司法書士があなたの借金返済をサポート
債務整理では、債権者と交渉する任意整理や法的に借金を減額する、個人再生や自己破産などがあります。また、過去の過払い金がある方は、過払い請求を行うことも可能です。
ただ、どれもある程度の法的な知識や交渉力が必要になってきます。債務整理をしたくてもなかなか踏み切れないあなたをベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)の弁護士・司法書士がサポートいたします。
自己破産をもっと知りたいあなたに