自己破産ができない4つのケース|できないときの対処法
自己破産を検討しているときに注意したいのは「自己破産ができないケースがある」という点です。
自己破産により免責が認められるには次のような条件を満たしている必要があります。
- ①予納金の納付ができること
- ②支払不能の状態にあること
- ③免責不許可事由に当たらないこと
- ④非免責債権ではないこと
この記事では、自己破産を検討している人のために、まずは自己破産ができないケース・できるケースを紹介したあとに、自己破産を成功させるためにやるべきことを解説します。
あわせて、すでに自己破産をやってみたけどできなかったという方に向けて対処法も記載しています。
【関連記事】自己破産したらどうなる?デメリットや費用・条件を弁護士がわかりやすく解説
自己破産は失敗する可能性もあります。
だからこそ自己破産を検討中の方は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼をするメリットは、下記の通りです。
- 頻繁に来ていた督促が停止
- 自身の状況にあった借金の解決策を提案
- 自己破産の手続きを全て任せれる など
日弁連がおこなった調査では、調査対象の自己破産の内、約9割に弁護士が関与していました。。(2020年破産事件及び個人再生事件記録調査【データ編①破産事件】)
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、まずは下記からご相談ください。
自己破産ができない4つのケース
自己破産ができないケースとしては4つのケースがあります。
それぞれの内容を確認してみましょう。
1.裁判所から支払不能と認められない場合
破産法の第15条では、自己破産手続きの開始が認められるには支払い不能の状態であることと定められています。
(破産手続開始の原因)
第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
引用:破産法第15条
支払不能とは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」のことです。
支払不能であるかどうかは、裁判所によって判断されます。
借金総額や借金内容、資産額、収支の状況などが総合考慮されますので、ご自身での判断が難しい場合はまずは弁護士に相談してみましょう。
2.予納金が納められなかった場合
自己破産をする場合、裁判所に予納金を納付しなければなりません。
破産手続きには様々な費用が掛かりますから、それを充当するために利用されます。
予納金として納めるものに次のようなものがあります。
- 手数料
- 官報広告費
- 予納郵券
- 引継予納金
上記のうち、高額となるのは引継予納金です。
金額は同時廃止事件と少額管財事件によって異なり、同時廃事件は3万円程度、少額管財事件の場合は20万円程度が必要です。
これらの費用を準備できない場合にも、手続きが始められないので自己破産はできません。
3.制限場合
自己破産をする際には、裁判所によって免責決定がでるまで一定の職業については制限を受けます。
具体的には次のような職業が該当します。
- 警備員
- 弁護士・税理士・司法書士など
- 保険外交員・生命保険募集人
- 宅地建物取引士
- 公務員の委員長や委員など
- 証券会社などの外交員
- 団体企業の役員
- 会社取締役・執行役員・監査やくなど
- 貸金業者の登録者
- 質屋を営む者
- 旅行業務取扱の登録者
- 廃棄物処理業者 など
もっとも、裁判所によって免責許可が出た場合にはふたたび同じ職に就くことが可能となりますが、免責許可がでるまでの期間は決して短くありません。
これらの職業についていた場合には必ずしも自己破産ができないというわけでありませんが、その間の収入が途絶えてしまうと生活が成り立たないというケースでは、実質的に自己破産ができなくなってしまいます。
その場合には、任意整理や個人再生など、他の債務整理を検討するとよいでしょう。
4. 免責不許可事由に該当する場合
免責不許可事由とは、自己破産が認められない事情のことをいいます。
これは破産法第252条に記載されています。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
引用:破産法第252条
もし免責不許可事由に該当した場合には、原則として自己破産ができませんので、十分な注意が必要です。
免責不許赤事由は具体的に次のものがあります。
- ①不当な財産価値減少
- ②不当な債務負担
- ③偏頗行為
- ④ギャンブル・浪費などでの債務
- ⑤詐術での信用取引
- ⑥書類の隠蔽・偽造・変造
- ⑦虚偽の債権者名簿の提出
- ⑧調査の拒否・虚偽の説明
- ⑨職務の妨害
- ⑩7年以内の免責許可の申立て
- ⑪破産法義務違反
ここでは、それぞれの内容を簡単に確認しておきましょう。
①不当な財産価値減少
自己破産時に所有している一定の財産は債権者に分配されます。この財産について、債権者に損害を与えることを目的として、隠す、壊す、安く売却するなどによって、不当に価値を減少させてしまった場合が該当します。
所有している車を安価で売却する、解約返戻金のある生命保険を隠蔽していたなどが具体例です。
②不当な債務負担
破産手続きの開始を遅らせることを目的として、金利の高い借金をしたり、カードで商品を買って安い金額で売却したりといった行為が該当します。
闇金からお金を借りる、ネット上で時計をカード払いして買取屋で換金する、といった行為が具体例です。
③偏頗行為
偏頗行為(へんぱこうい)とは、特定の債権者に対して有利となる行為のことです。自己破産をする上では、各債権者は平等にあつかわなければなりません。
特定の債権者に対して債務の支払いをすると、偏頗行為に該当し免責が許可されません。
具多的には家族や親しい友人の債務に対してだけ返済をするといった行為が該当します。
④ギャンブル・浪費などでの債務
競馬、競艇、パチンコや株・FX、その他ギャンブルによる債務や、一般的な感覚からして生活をする上で必要以上に高い買い物をしてできた債務なども、免責不許可事由に該当します。
⑤詐術での信用取引
自分自身がすでに支払い不能の状態であるのを理解しながら、破産の申立て日の1年前から破産手続き開始決定までの間に、支払い不能ではないなど嘘をついてローンを組んだ場合なども、免責不許可事由に該当します。
給与やボーナスについて嘘をついてローンを組み商品を買うなどが具体例です。
⑥書類の隠蔽・偽造・変造
自己破産手続きをする際に、財産状況の帳簿を隠蔽したり偽造したりといった行為は免責不許可事由に該当します。
なお、この行為は文書偽造罪に該当し刑事罰を受ける可能性もあるので注意が必要です。
⑦虚偽の債権者名簿の提出
債権者に不利益を与えることを目的として、特定の債権者だけ名簿に載せなかった、架空の債権者を記載した、といった場合も免責不許可事由に該当します。
債権者のうち、親や親友など近しい人のみを債権者名簿に記載しないといったことが具体例です。
⑧調査の拒否・虚偽の説明
破産手続きにおいては、裁判所に調査を受けることが通常です。
このとき、調査を拒否したり、嘘の説明をしたりした場合も免責不許可事由に該当します。
⑨職務の妨害
破産管財人が業務を行う際に、脅迫や暴力などの正当でない方法で妨害した場合にも免責不許可事由に該当します。
その他、指示や指導に従わない場合も該当する可能性があります。
⑩7年以内の免責許可の申立て
自己破産は何度も行えますが、次のようなケースでは免責不許可事由に該当し免責が許可されません。
- 過去に自己破産をしてから7年以内のケース
- 給与所得者再生を行ってから7年以内のケース
- ハードシップ免責の適用を受けてから7年以内のケース
破産法では、過去7年以内に自己破産をした場合に、再度の自己破産は認められていません。
また、給与所得者再生といって、個人再生の手続きのうちの1つを利用した場合も同様です。
さらに、個人再生後に返済が困難になった場合、返済が免除される「パートナーシップ免責」の適用を受けた場合も同じく7年以内の自己破産は認められていません。
⑪破産法義務違反
破産法義務違反とは、簡単に言えば自己破産に必要な手続きを行わない、協力しないことです。
自己破産では破産の事情を説明する、財産を明らかにする、免責不許可事由について事情を説明するといったことが求められます。
これらを行わない場合も免責不許可事由に該当します。
免責許可事由に該当しても自己破産できることがある
ここまで、自己破産ができない条件を解説しましたが、「免責不許可事由に該当する」については注目する必要があります。
なぜなら、免責不許可事由に該当しても、必ずしも免責が受けられないといったことはないからです。
免責不許可事由に該当する行為があっても、裁判所の判断によって免責が許可されることがあります。
これを「裁量免責」と呼びます。
諸般の事情を考慮して、自己破産をした方がよいと裁判所が判断した場合には免責が許可されるのです。
そのため、免責不許可事由に該当したとしてもあきらめる必要はありません。
自己破産に至る経緯を誠実に説明するなど、真摯な態度で臨めば自己破産できる可能性があります。
なお、免責不許可事由に該当しているけれど自己破産をしたいといった場合には、弁護士に依頼するようにしてください。
サポートを受けながら手続きを受けることで、免責が許可される可能性がぐっと上がるでしょう。
自己破産ができる4つの条件
では、自己破産ができるのにはどういった条件があるのでしょうか。
具体的には、上記で説明したものを満たしているということになります。
予納金の納付ができること
自己破産をするためには、裁判所に予納金(1万~50万円)を納める必要があるため、予納金が用意できないと手続きは開始できません。
一 破産手続の費用の予納がないとき(第二十三条第一項前段の規定によりその費用を仮に国庫から支弁する場合を除く。)。
二 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
引用:破産法第30条
もしも米納金が払えない場合には、法テラスに相談するか、裁判所に分割払いができないか相談するなどの方法をとりましょう。
支払不能の状態にあること
そもそもの借金が少額であり、債務者において返済不能であると認められない場合は裁判所が破産開始決定を行わず、自己破産手続を進めることはできません。
一方で、無収入の場合には支払不能要件を満たす場合が多いと思われますので、自己破産手続の利用はむしろ推奨されます。
破産法によると、支払不能を『債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態』と定義しています。
明確な基準はないですが、一つの目安として利息を免除しても(元本だけで)3年以内で完済できない場合という考え方があります。
まとめると以下の2点を満たす場合に支払不能と見なされる可能性が高くなります。
- 借金の支払期限が過ぎている
- 利息免除しても3年以内で完済できない
免責不許可事由に当たらないこと
前の章で解説した免責不許可事由に該当する場合には、自己破産は原則として認められません。
任意整理や個人再生などの他の債務整理方法を検討する必要があります。
なお、すでにお伝えした通り、免責不許可事由に該当しても裁判所の判断で自己破産が認められる可能性があります。
決してあきらめる必要はありませんので、まずは弁護士に相談してみましょう。
非免責債権ではないこと
非免責債権とは、裁判所から免責許可を受けても支払い義務が免除されないものをいいます。
つまり、非免責債権に該当するものは免責されませんので、自己破産をしても支払わなければなりません。
非免責債権としては、次のようなものが挙げられます。
- 税金や国民健康保険料など
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償
- 故意または重過失により加えた生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償
- 養育費
- 個人事業主の従業員の給料
- 意図的に債権者一覧に記載しなかった債権者に対する債務
- 罰金 など
参考:破産法253条
自己破産はしない方がよいケースもある
これから自己破産を検討しているものの、自己破産ができる条件を満たしていないからといって、必ずしも悲観的になる必要はありません。
なぜなら自己破産をしない方がよいケースもあるからです。代表的なものとしては次の3つが挙げられます。
- 残したい財産がある場合
- 保証人に迷惑をかけたくない場合
- 自己破産後にローンを組む予定がある場合
残したい財産がある場合には、自己破産をしないほうがよいでしょう。
20万円以内の預金や100万円以内の財産以外は換価処分されてしまうからです。
特によくあるのが自宅を残したいといったケースでしょう。
「生活の基盤として自宅は残したい」「仕事や介護で車は処分できない」といった場合には自己破産はおすすめできません。
また、債権の保証人が親や親友などで、迷惑をかけたくない場合にも自己破産はしないほうがよいこともあります。
自己破産をした場合、あなた自身は借金を返済する必要はなくなりますが、代わって保証人が返済しなければなりません。
あなたが自己破産することで、保証人も自己破産しなければならないといったこともあるので、十分に勘案する必要があるでしょう。
また、自己破産後にローンを組む予定がある場合も慎重な判断が必要になるでしょう。
自己破産をした場合、信用情報に事故情報が載り、5年~10年程度ローンが利用できなくなるからです。
自己破産を失敗させないために必要な5つの行動
続いて自己破産を失敗させないために必要なことを解説します。
自己破産に適しているか確認する
まず、自身が自己破産に適しているかどうかを確認しましょう。
自己破産に適している人 | 自己破産に適していない人 |
---|---|
・利息免除しても借金が3年以内で完済できない ・自身が名義人の持ち家がない ・保証人付きの借金がない(または保証人と自己破産について話がついている) ・利息免除すれば3年以内で完済できる |
・免責が認められない可能性がある ・保証人へ迷惑をかけたくない ・持ち家を残したい |
自己破産に適していない場合は、個人再生や任意整理など別の方法で借金を整理することをおすすめします。
また、自身に適した方法がわからない場合は、弁護士へ相談しましょう。
借金や収入の状況から、相談者に適した借金問題の解決方法を提示してもらえます。
裁判所へ相談する【申立費用が足りない場合】
すでにお伝えした通り、予納金を納められないと自己破産できません。
もし予納金が用意できない場合は、裁判所によっては分割支払いに応じている場合もあるので、まずは申立先の裁判所の受付窓口へ相談することをおすすめします。
分割に応じてもらえない場合は、予納金が用意できるまで裁判所費用を貯金しましょう。
住宅を売却して費用を工面する【住宅所有者の場合】
自己破産前は、財産の売却や特定の債権者への返済は禁止されていますが、裁判所費用または弁護士費用のために、持ち家を売却することは可能です(売却価格と住宅ローンの差額分を費用に充てることになります)。
持ち家があって裁判所費用が用意できない場合は、持ち家の売却を検討しましょう。
破産者が持ち家を保持し続けるのは基本的に難しいと言えます。
裁判所へ反省の態度を示す【免責不許可事由に該当する場合】
先ほどもお伝えしましたが、免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所は免責を許可する裁量が与えられているので、反省の態度を示すことで免責が許可される場合もあります。
免責不許可事由に該当する方は、自身の落ち度によりお金を返せず債権者へ迷惑をかけた事実を認めた上で、堅実な生活を送るための具体的プランを裁判所に示すことを検討しましょう。
手続きに不安のある方は弁護士へ依頼する
手続きが失敗することを懸念する方は、債務整理の得意な弁護士へ依頼することを検討しましょう。
手続きに不備が無くなる上に、裁判所における手続きを代理で行ってくれるので、手続きにおける負担がなくなります。
また、弁護士費用が用意できない場合は、法テラスにて民事法律扶助制度の利用を検討しましょう。
一定水準以下の所得の方に限り、制度を介して弁護士費用を立て替えてくれます。
自己破産ができない場合の対処方法
自己破産ができない場合の対処法としては次の方法があります。
- 即時抗告をする
- 個人再生を検討する
- 任意整理を検討する
即時抗告をする
裁判所から免責が認められなかった場合には、期限内(免責不許可の通知から1週間以内)に、自己破産をした裁判所へ即時抗告をすることができます。
即時拮抗とは、一定期間内(即時)に裁判所の決定、命令に対して不服申立(抗告)することで、抗告審で破産者の主張が認められれば、免責不許可の決定は覆り、免責が認められる可能性があります。
即時抗告の申立書に記載する内容は以下の通りです。
記載項目 | 内容の例 |
---|---|
原決定の表示 | 免責不許可 |
抗告の趣旨 | 原決定の取り消し、抗告人の免責 |
抗告理由 | ・免責不許可事由が存在しない ・存在するが十分に反省している ・免責が妥当である など |
即時抗告の手続きは個人で行うことは現実的ではありません。弁護士へ依頼することが一般的です。
個人再生を検討する
即時抗告により免責が認められるケースは一握りです。
そのため即時抗告が認められなかった場合は、別の方法を介して借金を整理する必要がありますが、利息免除しても借金が3年以内で完済できない場合は、個人再生(※3)をおすすめします。
借金を作った理由が問われない上に、ケースにもよりますが持ち家を残したまま最大9割の借金を減額することが可能です。
次のような人は、個人再生を検討するとよいでしょう。
- 利息免除しても借金が3年以内で完済できない
- 持ち家を残したい
- ギャンブルや浪費が借金の理由である
- 自己破産による制限される職に就いている
任意整理を検討する
利息免除すれば3年以内で借金を完済できる方は、任意整理を検討しましょう。
個人再生や自己破産のように元本を減らすことはできませんが、利息免除されるため、返済総額を安く抑えることができます。
また、自己破産や個人再生はすべての債権者(※2)の借金が対象に含まれますが、任意整理は、対象の債権者を選択できるので、保証人付きの借金を対象から外すことで、保証人へ迷惑をかけずに済みます。
次のような人は任意整理を検討してみましょう。
- 利息免除すれば3年以内で完済できる
- 保証人へ迷惑をかけたくない
- 借金に過払い金が含まれている
まとめ
自己破産ができないのは、次のようなケースに該当する場合です。
- 予納金の支払いができない
- 支払い不能状態と認められない
- 職業制限によって生活が成り立たない
- 免責不許可事由に該当する
なお、免責不許可事由に関しては裁量免責で自己破産が認められることもあるので、あきらめずに弁護士に相談するようにしてください。
自己破産が成功するためには事前の行動が大切です。
予納金を貯金しておく、自分自身が自己破産に適しているかどうか確認するなどしっかりと準備をしておくようにしましょう。
なお、自己破産が認められなかったとしても、即時拮抗やその他の債務士整理などによって借金を減額できる可能性はあります。
この場合もあきらめずに弁護士に相談するようにしてください。
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