個人再生と自己破産の大きな違い|それぞれに適したケースとは?
債務整理を検討されている中には、自己破産と個人再生の2つで迷う人は多くいます。
基本的に、個人再生に適したケースは、「一定の収入があり、持ち家を所有し続けたい」場合で、自己破産に適したケースは、「支払い能力がなく借金の完済が不可能」な場合です(収入状況やその他事情も考慮されます)。
どちらも裁判所を通して手続きをする点や手続き後に官報に載る点などは同じですが、以下6つの点が大きく異なります。
- 最低限返済すべき金額(最低弁済額)
- 処分する財産
- 利用条件
- 費用・期間
- 各手続き中の制限
- 家族への影響
この記事では、上記6つの点と、個人再生から自己破産への切り替えについて説明しているので、個人再生と自己破産で迷っている方は、一度読んでみることをおすすめします。
1:最低限返済すべき金額(最低弁済額)の違い
手続き後の最低弁済額は、最低限支払わなければならない金額をさし、手続きによって以下の通り異なります。
個人再生は借金を最大10分の1まで減額できる!
個人再生では、下表のように住宅ローンを除いた借金の総額によって最低弁済額が異なります。
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住宅ローンを除いた借金の総額 |
最低弁済額 |
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100万円未満 |
借金全額(※) |
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100~500万円未満 |
100万円 |
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500~1500万円未満 |
借金額の5分の1 |
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1,500~3,000万円未満 |
300万円 |
|
3,000~5,000万円 |
借金額の10分の1 |
※住宅ローンを除いた借金の総額が100万円以上でも、個人再生を行うことはできます。その場合は、住宅ローン特則を利用して個人再生を行うのが一般的です。
ただし、申立人の合計資産が上表の最低弁済額を超える場合は、総資産額が最低弁済額になります。これは、債権者を不当に害さないためのルールです。
総資産額には、退職金や残した家の価値なども含まれますので、弁護士に相談の上、ご自身の財産を調査することをおすすめします。
自己破産はすべての借金支払い義務がなくなる!
自己破産では、基本的にすべての借金が免除されますが、以下の借金は免責許可(借金の支払い義務を失くすための許可)が下りた後も支払い義務が残ります。
やむを得ず支払えなくなった場合は、相手と交渉して分割払いにしてもらったり、支払日を伸ばしてもらったりしましょう。
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2:処分する財産の違い
個人再生と自己破産では、処分する財産の種類が異なります。
自己破産では、ほとんどの財産が換価処分されますが、個人再生には、持家を残せる場合があります。処分する財産の違いを把握してより適した債務整理できるようにしましょう。
個人再生は家が残せる!
個人再生では、住宅ローン特則という制度を利用すれば、住宅ローンの支払いを個人再生で処理しない代わりに、住宅を所有し続けることができます。
自己破産ではほとんどの財産が換価処分される
自己破産では、20万円を超える財産は換価処分とすることが原則です。退職金の一部も処分の対象になりますし、保険の解約返戻金も対象です。
なお、99万円以下の現金や、日常生活に必要な道具、年金、生活保護費などは、破産者の生活に必要なものなので、所有し続けることが可能です。
【保険の解約返金について知りたい方はこちらもチェック】
自己破産したら生命保険の解約は絶対?解約返戻金はどうなる?
3:利用条件の違い
個人再生の利用には返済能力が必要
個人再生の利用条件は、住宅ローンを除いた借金の総額が5,000万円以下であること、将来にわたり継続的な収入が見込まれることの2つです。
自己破産は返済能力がない場合に利用する
自己破産は、借金を返済できる見込みがない場合に申し立て可能です。基本的には、破産開始決定がされれば免責許可を受けて債務免除となります。
しかし、免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)に該当する場合は、この免責が認められないことがあります。
免責不許可事由とは、ギャンブルや浪費など、本人の過失により借金を作っていないこと、破産を申し立てる前の1年間に、経済的な信用に関わる場面で虚偽の情報を教えなかったことなどが挙げられます。
ただし、免責不許可事由に該当していても、「裁量免責(さいりょうめんせき)」によって免責が認められる場合が多いです。
4:費用・期間の違い
個人再生と自己破産では手続きにかかる期間も費用も異なります。ここでは、費用と期間の違いをご紹介します。
個人再生の費用と期間
個人再生を申し立てて確定するまでの期間は、約4~6ヶ月です。
ただし、申立がうまくいかなかったり、再生計画案(※)が認められなかったりすると、期間が長引くことがあります。
個人再生の手続き後は、約3~5年で借金を返済していきます。
費用相場は、弁護士に依頼するなら、約30~60万円、司法書士に依頼するなら約20~30万円ですが、弁護士事務所によっては、さらに30万円ほどの裁判所費用がかかることもあります。
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※再生計画案 裁判所に提出する文書で、借金を減額した上で完済までの返済計画を記載したもの。 |
【個人再生の費用の詳細はこちらでチェック】
個人再生の費用はいくらかかる?相場や手続き、払えない場合の対処法
自己破産の費用と期間
自己破産には、同時廃止事件と管財少額事件の2種類があり、申し立ててから確定するまでの期間は、それぞれ以下の通り異なります。
- 同時廃止事件:3~6ヶ月
- 管財少額事件:6ヶ月から1年
費用相場も、以下のような違いがあります。原則として、司法書士は自己破産の手続きを代行できないため、書類作成を行うのみになるので、弁護士より費用相場が安いです。
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|
弁護士費用 |
司法書士費用 |
|
同時廃止事件 |
30~50万円 |
15~30万円 |
|
管財事件 |
50~70万円 |
司法書士では対応不可 |
【自己破産の費用の詳細はこちらでチェック】
自己破産の費用まとめ|方法別の費用相場と費用を抑える方法
5:各手続きの制限の違い
債務整理すべてに共通することですが、手続き後は、信用情報機関に登録されることで、数年間はクレジットカードが作成・利用できなくなったり、ローンが組めなくなったりするなどの制限を受けます。
個人再生・自己破産後に受ける制限は以下の通りです。
個人再生における制限
個人再生の手続き中と手続き後で、受ける制限は以下のように異なります。
弁護士に依頼すると、ローンとクレジットカードの利用ができなくなります。
厳密に言えば、手続き中も利用できることがありますが、利用すると債権者に再生計画案を否決される恐れがありますので絶対にやめましょう。
銀行借入がある場合、当該銀行口座の凍結が起こり、2~3ヶ月はその口座での取引が一切できなくなるので、お金を別の口座に移したり、各種料金の引き落としや給与受け取りを、別の口座で行えるようにしたりしておきましょう。
▶個人再生の手続き後
手続き後は、最長10年間、ローンの組み立てやクレジットカードの利用・作成、携帯電話の分割購入、借金や奨学金の連帯保証人になることができません。
お金を借りる行為全般は、できなくなると考えておきましょう。
自己破産
自己破産の手続き中と手続き後に受ける制限は以下です。
▶自己破産の手続き中
個人再生の手続き中と同様、ローンやクレジットカードを利用できなくなり、銀行借入がある場合は上記と同様口座凍結が起こります。
さらに、破産申立日から許可が下りるまでの期間は、転居の制限等を受けます。職業制限もあり、破産者が以下の職業に就いている場合は、免責許可までは就業不能となります。
|
自己破産の申し立て日~確定までの期間に就けない職業 |
など |
▶自己破産の手続き後
手続き後は、最長10年間、ローンの組み立てやクレジットカードの利用・作成、携帯電話の分割購入、借金や奨学金の連帯保証人になることなど、お金を借りる行為全般ができなくなります。
【自己破産後の制限についてはこちらでも解説しています】
自己破産後の生活はどうなる?|破産者が受ける制限と家族に与える影響
6:家族への影響の違い
債務整理全般に言えることですが、手続きをしたからといって家族に直接的な影響が及ぶことはありません。
しかし、法的手続で財産が換価処分される場合は負担は避けられませんので、同居する家族がいるのであれば事前説明は必要です。その上で協力してもらえるようにしましょう。
個人再生を行った場合の影響
個人再生の手続き後は、奨学金の連帯保証人になれない、自己名義で携帯電話の分割購入をすることができないなどの点で、家族への影響があると考えられます。
個人再生では持ち家を残せるので、引っ越す必要はありません。
自己破産を行った場合の影響
自己破産では、持ち家や車などの資産価値のある財産は換価処分されるので、破産者の名義で家や車を購入した場合は、同居する家族も引っ越さなくてはいけませんし、車に乗れなくなります。
持ち家も車も破産者名義だった場合、生活環境が大きく変化しますので、家族への影響が懸念されます。
【自己破産が子供に与える影響についてはこちらをチェック】
親が自己破産をしていた場合の子供への影響
【自己破産でどうしても家を残したい方はこちらもチェック】
自己破産で家を残すのは無理?自己破産のよくある誤解と家を残す方法
個人再生から自己破産への切り替えも可能
個人再生を申し立てたものの、債務弁済の目処が立たないという場合、手続を自己破産に切り替えることもできます。詳しくは弁護士等の専門家に相談してください。
まとめ|個人再生と自己破産どっちがおすすめ?

どちらを行うべきか迷ったら、「持ち家を残したいかどうか」、「借金を完済できるかどうか」の2点を軸に考えてみてください。
どちらを利用すべきが不安な人は、弁護士・司法書士に相談することで、最適な方法を提案してもらうことができます。
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