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債務の時効|借金返済の義務がなくなる消滅時効の援用とは

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
債務の時効|借金返済の義務がなくなる消滅時効の援用とは
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時効」と聞いて、きっと「罪を償う必要がなくなった」と連想する人が多いことでしょう。しかし時効にも様々な種類があり、刑事事件ではなく債務問題にも時効という制度が設けられています。

借金がチャラになることと同義語ではありますが、当然人から借りたお金を返さなくてもよくなる制度の適用には、相応の条件をクリアしないといけません。今回の記事ではこの債務における時効について、詳しくまとめていきたいと思います。

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この記事に記載の情報は2023年11月22日時点のものです

債務には時効がある

債務とはつまり借金のことですが、債務の時効が成立する=借金を返済する義務がなくなるということです。民法上の時効には、「消滅時効」と「取得時効」との2種類がありますが、今回は主に消滅時効を解説していきます。

消滅時効

消滅時効とは、「一定の期間、権利が行使されなかった場合に、その権利を消滅させる制度」です。これは請求できるのに何もしないで放置するのであれば権利を認めないという法律上の制度で、よく借金の返済に困った人が夜逃げをして姿をくらますのは、この時効を成立させるためという理由もあるでしょう。

取得時効

取得時効とは、「他人の物または財産権を一定期間継続して占有または準占有する者に、その権利が与えられる制度」で、簡単に言うと、「お前のモノは俺のモノ」ではないですが、例え人の土地であっても一定期間自分が占有していれば、自分のものになるという制度です。

(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
引用元:民法第162条

債務の返済義務がなくなるための条件

消滅時効において、適用される為には2つの条件があります。以下で解説していきましょう。

一切返済していない期間が5~10年であること

債権の種類によって時効期間は異なります。

債権の種類

時効期間

消費者金融、賃金業者からの債務

業者が個人の場合:10年
業者が法人の場合:5年

信用金庫からの債務

10年

銀行からの債務

5年

住宅金融公庫からの債務

10年

この一定期間、一切債務の返済をしていないことが第一の条件になります。極端な言い方ですが、分割払いのうち1度でもこの期間内に支払っていたり、1円でも債権者に支払っていたりしたら、時効は成立しないということになります。

時効の援用をすると債権者に伝えていること

時効は、5~10年の期間が満了しただけでは成立しません。満了後に時効の援用を行わなければ認められません。

時効の援用

時効の援用とは簡単に、「私は、債務は一切支払いません」という主張のことで、この主張がなければ20年経過しようが50年経過しようが、時効は成立しないということになります。時効の援用は主に内容証明郵便で行われます。内容証明郵便を書く際のルールについては、「こちら」を参考にして下さい。

時効の再開もある

時効が中断した場合でも、その後、時効中断事由がなくなれば、新たに時効期間が進行します。時効中断事由に関しては、次項の「債務の時効を中断する方法3つ」でご紹介していきます。

債務の時効を中断する方法3つ

債権者(お金を貸した側)にとっては、時効が成立してしまってはとても困ります。そこで、債権者には時効を食い止める手段が与えられています。

それが時効の中断という、時効の進行を止め、今までの時効期間の進行をすべてなかったことにする制度です。つまり時効の中断を債権者から受けると、借金返済を拒否し続けても、支払い義務はなくならないということです。時効の中断をするには大きく分けて3つの方法があります。

1:請求

債権者側から債務者へは、以下のように様々な請求を行うことが出来ます。

訴状の提出

時間と費用をかけて訴訟を行うこと。訴状は、提出が行われたその時点で時効が中断します。

支払催促

債権者が契約書や債務確認書などの証拠品を持参し、簡易裁判所に申し立てること。申し立てが正式に受理されると、裁判所が債務者に対して支払い命令を出します。もし30日以内に異議申し立てが行われなかった場合、債権者は30日以内に仮執行宣言の申し立てを行うことが出来ます。

調停申し立て

調停(裁判所)で行う話し合いのこと。

即決和解申し立て

訴状提出前の和解のこと。通常の和解は裁判所で行われますが、即決和解は裁判所を通さずに行うので、余計な費用がかかりません。和解がうまくいかなかった場合、その日から更に一ヶ月以内に訴状の提出をしないと時効中断の効力はなくなります。

催促書類の提出

裁判になる前に、「お金を返してほしい」という内容の書類を債務者に向けて内容証明郵便で送ると、郵便が相手に届いた日から6ヶ月間は時効を中断することが出来ますが、その後なにもしなかった場合はまた時効が進行します。

訴訟は時間と費用がかかることから、支払催促、催促書類の提出に至るケースがほとんどです。

2:差し押さえ(仮差し押さえ・仮処分)

債権者が強制執行の申し立てを行い、裁判所が強制執行の許可を出すと、債権者が債務者の財産を差し押さえることが出来、これにより時効は中断します。

差し押さえは債権者にとってもリスクがある

いくら差し押さえとは言え、全ての財産を突然一括で差し押さえられるわけではありません。債務者側に配慮をする必要があり、債権者側は担保金(差し押さえを希望する額の約3割程度)の準備をすることが一般的です。

差し押さえ中に債務者の資金繰りに支障が生じて自己破産をされた場合、差し押さえを行った意味はなくなるので、差し押さえは、債権者にとっての有効な手段と言えるでしょう。

3:債務の承認

債務の承認とはその名の通り、債務者が債務の存在を認めることです。前述しましたが、債務者が1円でも借金を返済したり、または支払い約束証へサインをしたりした場合、債務の承認にあたり時効は中断します。

さらに、債務の承認は時効期間が満了した場合でも時効を援用できなくなり、時効期間が満了したあとに債務の承認を行ってしまうと、一から時効時間が始まることになります

債務の時効にまつわるメリット・デメリット

時効を成立させることが出来た場合はそれこそ天にも昇るような気持ちになるかもしれませんが、時効を成立させるまでが実に困難となります。以下で説明していきましょう。

時効を成立させた場合のメリット

返済をしなくてよくなる

これこそが最も大きなメリットと言えるでしょう。債務は全てチャラになります。

債権者からの催促がなくなる

時効援用が成立すれば、業者から本人への連絡はなくなります。

時効を成立させるまでのデメリット

新しい住民表を発行出来ない

債務を踏み倒すことを前提に”逃げる”場合ですが、住民票を移すことにより業者側に新しい住所がわかり、逃げていても連絡が来ることになります。住民票は何かと必要になる書類なので、用意できないとなると日常生活にかなりの支障をきたすでしょう。

時効の援用までは借金が膨らみ続ける

当然ですが、時効が成立するまでは債務は減りません。むしろ時間が経つごとにどんどん利息がついたり遅延損害金が発生したりして増額されます。平穏とはほど遠い為、精神衛生上もよくないと言えるでしょう。

住民税などの滞納は時効前に差し押さえのリスクがある

住民税などの税金については国税徴収法という法律があり、即差し押さえが可能になります。差し押さえまでして税金の回収を図るのは、きちんと納めた人との不公平感をなくすことが目的とのことですが、自治体も財政難ですから悪質な滞納者に対しては容赦しません。給与の差し押さえでは、勤務先にも連絡がいくことになります。

債務の返済が困難な場合は債務整理を検討する

債務は、決して時効を期待してはいけません。もしも返済の見込みがないのであれば、債務整理(法で債務問題を解決する術)を行うことを検討しましょう。自身の借金額や収入などに応じてベストな債務整理の方法を選ぶことで、借金が帳消しになることもあります。

以下には債務整理の方法を解説していきます。

過払い金の請求

過去(2010年の改正貸金業法施行前)に払い過ぎていた利息の返還請求を行うことが出来る制度です。誰でも過払い金の請求ができるわけではなく、当時高い金利でお金を貸していた消費者金融、カード会社から借り入れを行っていた人が対象となります。

任意整理

裁判所を通さずに、債務者(借金をしている人)と債権者(お金を貸した人)が法律に基づいて話し合いをして、和解を進めていく方法です。この任意整理を専門家に依頼することで、本人の代わりに交渉、借金の減額手続きを全て行ってもらえます。裁判所を通さないので、借金の原因は結果には影響しません。

特定調停

平成12年2月17日に生まれた新しい制度で、支払い不能に陥るおそれのある債務者をなんとかしようということを目的としています。専門家に頼ることなく個人でも比較的簡単に手続きができるので、借金の返済に困っているならば利用する価値があります。

個人再生

住宅ローンを除く借金が5,000万円以下の場合、借金総額の10%を3年間で返済をすることで最大90%が免除される制度です。個人再生の手続きは借金を減らすだけでなく、住宅を守ることが出来るという特徴があります。
参考:個人再生とは|手続きの流れ・費用・メリットを解説

自己破産

どうにもならない、返済返済のメドが全く立たない場合に裁判所に申し立てを行い、借金をゼロにしてもらう制度です。持っている財産を全て手放すため、借金をどうにかするための最終手段と言えます。

債務整理に関しては、以下の記事も参考にして下さい
【関連記事】自己破産で借金をゼロにする方法|破産後の生活ガイド

 

まとめ

いくら時効という制度があるとしても、「返せないから踏み倒そう」とモラルに欠ける考えを起こすことはやめましょう。ましてや、時効を意図して借り入れを行った場合、債権者としてもたまったものではありませんし、そのような場合は罰される可能性もあります。借りたものは返す、これがルールです。時効の援用が脳裏をかすめるほど金銭的に困窮している人は、まずは専門家への無料相談を行ってみましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。