生活保護受給者も自己破産は可能|費用を抑えた手続き方法とは
「生活も苦しいし、この際生活保護を受けてみようか」と考えている方もいるでしょう。
しかし、生活保護を受ける前に自己破産をして借金をゼロにしてからのほうが、今後のあなたのためになる可能性もあります。
本記事では、生活保護と自己破産の関係性や手続き前の注意点から、実際に手続き自己破産を進める際の流れ方法をお伝えを解説します。
費用をかけずに自己破産をする方法もありますので、今後の参考にしてみてください。
自己破産でより確実に 借金をゼロにしたい人へ |
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法的な知識がない人が、個人で自己破産を行っても、借金がゼロになる条件である「免責」を受けられない可能性があります。 できるだけ確実に借金をゼロにしたいのであれば、できるだけ早い段階で弁護士や司法書士といった借金問題の解決が得意な専門家に依頼することが解決への近道です。 専門家への依頼では、以下のようなことが望めます。
※司法書士では裁判所への同行などできない、少額管財事件を受けられないなどの制限があります。 借金原因は問われませんので、ひとりで悩まず、まずは専門家に相談してみましょう。 |
生活保護受給者でも自己破産はできる
自己破産をするためには、根拠となる破産法に規定されている支払不能という状態になっている必要があります。
後述するように生活保護費は借金返済に充てるものではないので、生活保護受給をしている場合には、たとえ借金が少なくても支払不能の状態にあるといえます。
そのため、生活保護受給をしているから自己破産をすることができない、とするものではありません。
ただし、生活保護受給者の場合は注意すべきポイントがあり、以下で解説します。
生活保護費で借金返済するのは避ける
自己破産の前に「生活保護費を借金返済に充てよう」と考える方もいるかもしれませんが、生活保護費を返済に使うことは望ましくありません。
厚生労働省のホームページにもしっかりと以下のように記載があります。
住宅ローンがあるために保護を受給できないことはありません。ただし、保護費から住宅ローンを返済することは、最低限度の生活を保障する生活保護制度の趣旨からは、原則として認められません。
住宅ローンに限らず、生活保護費で借金を返すことは絶対にやめましょう。
生活保護受給中は自己破産以外の債務整理ができない
自己破産は債務整理のひとつであり、ほかにも債権者と交渉して利息カットなどを目指す「任意整理」や、裁判所に再生計画を提出して借金減額を求める「個人再生」などがあります。
しかし、いずれも手続き後は残りの借金を自力で返済していく必要があるため、生活保護受給者の場合は現実的に対応が困難です。
自己破産後に生活保護を受けることもできる
生活保護を申請する前にすでに自己破産をしている場合でも、以下にあてはまる方であれば問題なく生活保護を受けられます。
- 病気や怪我により働けず生活が苦しい
- 働いているものの収入が最低生活費を下回っている
- 収入や収入に代わる資産が一切ない
- 資金面で支えてくれる身寄りがいない
- 公的融資制度や公的扶助などの適用が受けられない
生活保護を受けるための要件
ここでは、生活保護の要件について詳しく解説します。
資産の活用
生活保護は、生活に困窮する方の補償をするための制度です。
自分に資産があるのに、仕事ができない状態だからといって、生活保護を認めるのが妥当ではないことは容易に想像がつくでしょう。
そのため、銀行預金・不動産・株券・その他資産があるような場合には、まずその資産を活用するのが要件の一つです。
活用というのは、端的にいうと売ってお金に換えてそれで生活する、ということです。
能力の活用
生活保護の価値観の基本となる憲法では、国民の能力に応じた勤労を義務としています。
そのことを生活保護の具体的要件に落とし込んだのが、能力の活用です。
簡単にいうと「働けるなら働いてください」ということです。
「働きたいけど働き口がない」「怪我や病気で働けなくなった」というような場合にはじめて生活保護を利用できます。
あらゆるものの活用
「活用する資産がない」「働くことができない」というような場合には、生活を保障するためのほかの制度を利用できる場合があります。
たとえば、失業をしたような場合には失業保険が支払われます。
仕事が原因の病気や怪我の場合には労災保険が支払われます。
怪我や病気で後遺症になった場合には障害年金が支給されます。
あらゆるものの活用というのは、「生活保護以外のこのような制度は全て使いましょう」という意味です。
「自分を助けてくれる制度がない」あるいは「制度によってある程度の収入は確保できても、最低限の生活の保障とまではいえない」というような場合にはじめて生活保護を受けることができます。
扶養義務者の扶養
民法では扶養義務についてを定めています。
直系の親族(親子など)と兄弟姉妹には扶養義務があり、3親等内の親族については扶養義務を負わせることができます。
扶養義務がある者は、無理のない範囲でその人の生活費を工面しなければなりません。
扶養をしてくれる人がいる場合には、その人の扶養を優先し、扶養が受けられない場合にはじめて生活保護を受けられるということにしています。
生活保護や自己破産の申請手続きのタイミング
生活保護も自己破産もまだ申請していない場合、どちらから先に手続きを進めるべきか悩んでいる方もいるでしょう。
ここでは、申請手続きのタイミングについて解説します。
生活保護と自己破産は同時に申請できる
生活保護と自己破産については、同時に手続きを進めることができます。
「どちらから先に手続きを進めるのか」についても、特に決まりなどはありません。
自己破産を先に申請する場合のメリット・デメリット
自己破産から先に申請する場合、以下のようなメリット・デメリットがあります。
自己破産を先に申請する場合のメリット
先に自己破産を済ませておくと、借金が無くなった状態で生活保護を受給できるのが大きなメリットです。
借金の悩みを解決したうえで新たな生活が始まるので、精神的にも良い状態でのリスタートが期待できます。
自己破産を先に申請する場合のデメリット
先に自己破産の手続きをおこなうと、そのぶん生活保護の申請が後ろ倒しになって支給開始が遅れるのがデメリットです。
特に経済的に困窮していて、できるだけ早く生活保護を受給したい方にとっては大きなデメリットになります。
生活保護を先に申請する場合のメリット・デメリット
生活保護から先に申請する場合、以下のようなメリット・デメリットがあります。
生活保護を先に申請する場合のメリット
先に生活保護の申請をすると、速やかに生活保護費を受け取れるのが大きなメリットです。
申請後2週間程度で支給開始するので、生活のためにすぐにお金が必要な方などはおすすめです。
生活保護を先に申請する場合のデメリット
先に生活保護の申請をすると、そのぶん自己破産が後回しになって借金を抱えた状態が長く続いてしまうというのがデメリットです。
借金問題が解決するまで督促や取り立てなどを受けて、精神的にダメージを受ける恐れもあります。
生活保護や自己破産の手続きの流れ
ここでは、生活保護や自己破産の手順について解説します。
生活保護の場合
生活保護を受けるための手続きはどのようなものでしょうか。
インターネット上などでは、法律の形式的なものだけから判断して「突然役所に尋ね、係の人に生活保護を受ける旨を告げればよい」とする情報も散見されます。
しかし、生活保護を受ける人に対する目は厳しいこともあり、このような唐突な申し出をして、疑いの目を向けられながら手続きを進めるよりも、関係機関の協力を得て適切な流れで生活保護を受けることをおすすめします。
1.市区町村役場・社会福祉協議会への相談
各市区町村では生活に困った住民に対して各種相談を実施しています。
経済的な困窮問題については、市区町村の役所や社会福祉協議会などで相談を受けています。
受けた相談は記録として残しておくことになるので、どのような生活をしているかを伝えることができます。
過去に相談をしていた記録などを残しておくと、生活が困窮している状態が長く続いていることをわかってもらいやすいでしょう。
また、役所から生活保護を受けるときに、スムーズに手続きを進めるためのアドバイスをしてもらえる可能性があります。
2.書類提出・審査
役所で必要書類に記載をすると、通帳のコピーなどを提出するように求められますので、これに応じましょう。
審査は基本的に14日以内におこなわれますが、調査が必要な案件については30日以内におこなわれます。
期間を短くするためには、やはり事前に相談をしておくべきでしょう。
審査にあたっては、扶養義務者が扶養できるかどうかを調べるために、役所から調査書類が送られます。
親子・兄弟姉妹に通知が送られるので、前もって伝えておきましょう。
3.生活保護費の受け取り
生活保護の受給が決定すると、生活保護費をもらうことができます。
お金は銀行に振り込まれるのではなく、直接手渡しされるので、役所に受け取りに行きます。
お金を受け取る際に、生活について質問されることになるので、正直に伝えるようにしましょう。
また、生活保護の内容として、病院にかかる費用も出してもらえます。
ただ、費用負担の手続きが通常の健康保険と異なります。
生活保護を受ける際に保険証を一旦返却したうえで、病院にかかるときに役所に行って医療券をもらってから病院を受診することになります。
自己破産の場合
次に、自己破産をおこなう際の手順をみていきましょう。
1.弁護士への相談・依頼
自己破産では裁判所とのやり取りが必要なため、弁護士にサポートしてもらうのが一般的です。
ただし、弁護士に依頼する際、多くの方は金銭面に余裕のない方でしょう。
そのような方は、後払いや分割払いに対応している法律事務所に依頼しましょう。
まずは電話かメールで問い合わせをして面談日を決めて、相談時は見積もりなどを確認したうえで依頼してください。
2.自己破産の申立て
つぎに裁判所に自己破産の申し立てをします。
これらは全て弁護士の指示でおこなうため、難しいことはありません。
なお、自己破産の手続きでは以下のような裁判所費用がかかります。
収入印紙代・申立手数料 |
1,500円 |
---|---|
郵便切手代 |
裁判所や債権者の数によって異なる |
予納金 |
・同時廃止事件の場合:1万1,859円(官報公告料) ・管財事件の場合:70万円程度~(裁判所や負債額によって異なる) ・少額管財事件の場合:20万円程度 |
3.審尋
申し立てから1ヵ月~2ヵ月経過すると審尋が始まります。
審尋とは、支払い能力がないことを確認するための質問を受けることです。
こちらは弁護士が代理でおこなってくれるため直接質問されることはありません。
なお、審尋までの約2ヵ月間に債権者(金融機関などお金を貸した側)の意見を聴取します。
4.同時廃止事件または管財事件の決定
本来であれば、自己破産の手続きをおこなう際に破産者の全ての財産が調査され、換金できるものがないか調べます。
しかし、はじめから換金できるものがないとわかっている場合は、破産法に基づきそのような調査を経ることなく破産手続きが進められます。
これを同時廃止事件といいます。
一方、財産が残されている場合、破産管財人によって財産の調査・換金がおこなわれて債権者に分配され、これを管財事件といいます。
(破産手続開始の決定と同時にする破産手続廃止の決定)
第二百十六条 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
引用元:破産法 | e-Gov法令検索
5.免責許可申立て
同時廃止事件か管財事件か決定したところで免責許可申立てをおこないます。
申し立てをおこなわないと借金は免責されません。
6.免責審尋
免責許可申立て後、2ヵ月~3ヵ月経つと本人が裁判所に呼び出されます。
その際に免責許可申立ての内容に関する質問をされ、免責審尋は終了します。
なお、管財事件の場合は、財産の調査をした管財人・債務者・弁護士の3人で面接がおこなわれます(管財事件決定から1週間~2週間後)。
その後、裁判所にて、貸付業者ではなく主に個人の債権者が集まる債権者集会がおこなわれます(管財事件決定から4ヵ月~6ヵ月後)。
こちらも本人と弁護士が出席します。
7.免責許可の通知
免責審尋から1週間~2週間すると免責許可もしくは不許可の通知が届きます。
もし不許可の場合は抗告申立てをすることになりますが、免責審尋の時点で支払能力がないことが認められれば大抵の場合は不許可になることはないでしょう。
もし不許可になっても弁護士が次の手順についてしっかりと教えてくれるので、安心してください。
自己破産で免責されないものもある
自己破産により全ての借金の支払い義務がなくなっても、税金は支払わなければなりません。
もし税金の支払いが難しいようであれば、手続きをとる必要がありますので必ず弁護士に相談しましょう。
生活保護を受けている間は税金徴収の停止ができます。
ただし、社会復帰をした際や支払うことができる状態になったときから税金の支払いを再開しなければなりません。
なお、基本的に5年以上経過した税金は時効により支払わなくて済みます。
生活保護受給者が自己破産の費用を支払えない場合の対処法
弁護士事務所に自己破産を依頼すると20万円〜40万円程度の費用がかかります。
生活に困窮している場合は、弁護士費用を出せないケースが多いでしょう。
そのような場合は、法テラスの代理援助を利用しましょう。
代理援助とは、法テラスに紹介された弁護士に自己破産を依頼し、費用は法テラスが立て替えてくれることをいいます。
生活保護受給者を対象に、裁判所に納める予納金も最大20万円まで援助してもらえます。
本来は、分割などで法テラスに弁護士費用を返金しなければなりませんが、自己破産後も生活保護を受け続ける場合は費用の返金が免除になる場合があります。
詳しくは法テラスに相談した際に確認してください。
自己破産のメリット・デメリット
何も知らない方が「自己破産」と聞くと少し不安に思うかもしれません。
ここでは自己破産のメリットとデメリットを解説するので、自身で自己破産をすべきかどうか考えてみてください。
自己破産のメリット
自己破産をすることで得られるメリットは以下のとおりです。
一番のメリットは借金返済をしなくて済むことでしょう。
- 借金の支払い義務がなくなる
- 手続きをすることで金融機関が給料の差し押さえなどの強制執行力を失う
- 自由財産であれば手元に残せる
自由財産とは?
現金であれば99万円、自動車や生命保険の解約返戻金などであれば20万円までのものは所持することができます。
これを自由財産といいます。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットとしては主に以下があります。
自己破産後の5年間~10年間は借り入れができない
自己破産をするといわゆるブラックリストに載ってしまいます。
借り入れはもちろんのこと、ローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることもできません。
連帯保証人に多大な迷惑がかかる
自己破産をすることで本人の支払い義務は停止しますが、借金の連帯保証人の返済義務はそのまま残ります。
つまり、自己破産をしても連帯保証人は返済が終わるまで支払い続けなければならないのです。
国が発行する官報に個人情報が掲載される
自己破産をすると、官報に住所・氏名・破産手続きをした日時などが載ってしまいます。
インターネット版の官報もありますので、気になる方はご覧ください。
自己破産後の7年間は自己破産ができない
一度自己破産が認められると、そこから7年間は再び自己破産ができません。
免責許可が下りるまでは特定の職業に就けない
自己破産をすると、免責許可が下りるまでの数ヵ月間は以下のような職業に就くことができません。
- 弁護士や司法書士といった「○○士」とされるもの
- 警備員
- 建築業
- 生命保険募集人
- 旅行業者 など
ほかにも、教育委員会や公正取引委員会などの委員長、日本銀行や信用金庫の役員などにも就けません。
まとめ
基本的に条件を満たしていれば、生活保護受給者が自己破産をしたり、自己破産をした人が生活保護を受給したりすることは可能です。
ただし、特に自己破産では裁判所とのやり取りなども必要になるので自力では対応が難しく、その際は弁護士が心強い味方になってくれます。
弁護士であれば、そもそも自己破産すべきかのアドバイスや必要書類の用意なども依頼できます。
まずは弁護士に無料法律相談をしてみることをおすすめします。
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