自己破産のデメリット7選 | 自己破産後の人生はどうなるかを徹底解説

借金を返済できなくなり自己破産を検討しているものの、「自分や家族がどのようなデメリットを受けるのかが気になる」「自己破産後の人生が不安」という思いから、一歩踏み出せずにいる人もいるのではないでしょうか。
自己破産をすれば、借金の返済義務から解放されます。
そのため借金が高額で返済が困難なケースでは、デメリットがあっても自己破産を選択せざるを得ないことも少なくありません。
しかし「とにかく借金をなくしたい」という気持ちだけで押し切ってしまうと、自己破産後に予想以上のデメリットを受けることになります。
「自己破産しなければよかった」と後悔しないためには、あらかじめデメリットについて正確に把握しておくことが重要です。
また、自己破産のデメリットについては誤解も多いため、記事をよく読んで誤解を解消してください。
本記事では、自己破産のデメリットや自己破産後の人生がどうなるかについて解説します。
家族に影響するデメリットや後悔しないためのポイントも解説しているため、最後までチェックしてください。
自己破産のデメリット7つ | 自己破産後の人生はどうなる?
自己破産のデメリットは以下の7つです。
- ブラックリストに登録され、クレジットカードやローンなどが一定期間使えなくなる
- 持ち家や車など、高価な財産が処分される
- 保証人へ借金返済の請求がいく
- 一定期間は、職業・資格が制限される
- 一定期間は、郵便物が破産管財人へ転送される場合がある
- 引っ越しや長期の旅行をするのに、許可が必要となる場合がある
- 官報に掲載される
ここでは自己破産のデメリットと、自己破産後の人生がどうなるかについて解説します。
ブラックリストに登録され、クレジットカードやローンなどが一定期間使えなくなる
自己破産をするとブラックリストに登録され、一定期間クレジットカードの利用やローンの契約などができなくなります。
- ブラックリスト
- 借金やクレジットカードの利用、返済状況を管理する機関「信用情報機関」に事故情報が登録されること。
- 事故情報には、長期の滞納や債務整理などが該当する。
自己破産をすると、既存のクレジットカードが使えなくなるほか、一定期間は新規作成もできなくなります。
自己破産によりETCカードや、自己破産者名義のクレジットカードに付属していた家族カードが使えなくなる点も注意が必要です。
またブラックリストに登録されてしまうと、銀行や消費者金融の各種ローンの審査も通過できません。
家や自動車を購入する際など、まとまったお金を用意するのが難しくなるでしょう。
スマートフォンなどの分割払いもできません。
ただ、現時点で滞納が続いているなら、自己破産をする・しないにかかわらず、ブラックリストに登録されるのは時間の問題かもしれません。
一般的に、借金を2ヵ月〜3ヵ月程度滞納するとブラックリストに登録されるといわれているため、ケースによってはすでに登録されている可能性があります。
その場合は自己破産などで、借金問題を早期解決することを検討するべきです。
5~7年でブラックリストは削除される
ブラックリストに登録されても、一生そのままというわけではありません。
信用情報機関に登録された事故情報は5年〜7年で削除されます。
削除されるタイミングは以下のとおりです。
CIC (株式会社シー・アイ・シー) |
完済または破産手続開始決定から5年程度 |
JICC (株式会社日本信用情報機構) |
完済または免責確定から5年程度 |
KSC (全国銀行個人信用情報センター) |
完済または破産手続開始決定から7年程度 |
なお、信用情報機関によって加盟している会員の業態が異なります。
CIC |
・消費者金融 ・クレジットカード会社 ・信販会社 ・携帯電話会社 |
JICC |
・消費者金融 ・クレジットカード会社 ・信販会社 ・銀行 ・携帯電話会社 |
KSC |
・銀行 ・労働金庫 ・信用金庫 ・信用保証協会 ・農協 |
債権者がどの信用情報機関に加盟しているかは、それぞれの公式サイトから検索できます。
上記のリンクから確認してみましょう。
ブラックリストに登録されてもデビットカードやキャッシュレス決済などは使える
前項で解説したとおり、ブラックリストに登録されるとクレジットカードが利用できなくなります。
しかしブラックリストに登録されても、デビットカードをはじめとする一部のキャッシュレス決済は問題なく利用できます。
- デビットカード
- 口座残高の範囲内で利用できるカードのこと。
- 普段の買い物やネットショッピングなど、クレジットカードと同じように利用でき、デビットカードで支払ったお金は口座から引き落とされるため使いすぎる心配がない。
そのほか、自己破産後に利用できるキャッシュレス決済には以下があります。
- プリペイドカード
- デポジット型のETCカード
- 入金型の電子マネーや決済アプリ
持ち家や車など、高価な財産が処分される
持ち家や車といった高価な財産が処分されるのも、自己破産のデメリットのひとつです。
価値のある財産は現金化され、債権者に分配されます。
持ち家や車のほかには、以下のような財産が処分の対象になります。
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える預貯金・有価証券
- 20万円を超える生命保険の解約返戻金
- 価値の高い貴金属・絵画・骨とう品など
自己破産をすると、このように多くの財産が没収されてしまいます。
20万円以下の預貯金・家具・家電などは手元に残せる
自己破産をしても全ての財産が処分されるわけでなく、20万円以下の預貯金・家具・家電などは手元に残すことができます。
全ての財産を処分すると、破産者が生活できなくなってしまうためです。
実際にどのような財産が処分されるかは裁判所により異なりますが、対象となるのは不動産や自動車など高額な財産に限られます。
現金は99万円までなら手元に残せますし、自動車も中古で価値が低くなっていれば処分を免れることも少なくありません。
日常的に使う家具や家電も手元に残せます。
このように最低限の生活を維持するのに必要な財産は処分されないので、必要以上に心配することはありません。
実際にどの財産が処分されるかは裁判所によって運用が異なるので、不安であれば弁護士に相談して確認することをおすすめします。
保証人へ借金返済の請求がいく
保証人つきの借金がある場合、自己破産をすることで保証人に借金返済の請求がいってしまう点もデメリットといえるでしょう。
保証人は、債務者本人が返済できなくなったときに債務者に代わって返済しなければならないためです。
債務者本人は自己破産で借金が免除されても、保証人の返済義務はなくなりません。
さらに、保証人に対して請求がいくときは、一括請求が基本です。
そのため保証人にまとまった資金がなければ、保証人も債務整理を検討するしかなくなり、大きな迷惑がかかってしまいます。
一定期間は、職業・資格が制限される
自己破産をすると、一定期間は職業・資格が制限されてしまいます。
そのため、その間はその職に就いたり関連する職務をおこなえなくなったりするので注意が必要です。
制限されるのは一部の職業・資格のみ
自己破産によって制限されるのは、一部の職業・資格のみです。
具体的には、他人の財産や秘密を扱う職業・資格が制限を受ける傾向にあります。
多くの職業・資格については制限を受けることはありません。
- 弁護士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士など他人の金銭・資産を扱う士業
- 警備員
- 公証人
- 生命保険募集人
- 交通事故相談員
- 固定資産評価員
- 賃金業登録者
- 質屋
- 建設業
- 会社役員
- 人事官
- 教育委員会の委員長や教育委員
- 公正取引委員
- 商工会議所の役員 など
3~4ヵ月して自己破産手続きが完了すれば、制限は解除される
職業・資格が制限されるのは自己破産の手続きが進行している間に限られます。
3~4ヵ月して手続きが完了すれば、制限が解除されるのが一般的です。
ただし免責が不許可となってしまった場合は、職業・資格の制限が長期化してしまうので注意ください。
仮に免責不許可になると、制限が解除されるまで10年かかるのです。
もしくは債務整理の方法を自己破産から個人再生に切り替え、個人再生計画の認可決定が確定しても制限が解除されます。
なお、個人再生とは、個人再生計画を裁判所に認めてもらうことで、借金額を最大90%削減できる債務整理手続きです。
免責不許可の可能性について不安であれば、弁護士へ相談しましょう。
一定期間は、郵便物が破産管財人へ転送される場合がある
破産手続開始決定後、破産者宛ての郵便物が破産管財人に一定期間転送される場合があります。
破産管財人は郵便物を確認し、自己破産をした方が財産を隠していないかを調査する必要があるためです。
ただし郵送物が破産管財人に転送されるのは全てのケースではなく、「管財事件」の場合に限られます。
管財事件とは裁判所が選任した破産管財人が、財産を清算する手続きです。
管財事件になると、自己破産の手続きが複雑となり自己破産のデメリットも増えます。
一方、処分して債権者の配当にできるような財産を破産者が所有していなければ、より簡便な「同時廃止」にて手続きが可能です。
管財事件・同時廃止を分ける基準は裁判所により異なります。
東京地裁では個人の場合に、33万円以上の現金を保有しているかが切り分けの基準です。
個人で33万円の現金を持っていれば、管財事件に振り分けられます。
また、転送の対象になるのは破産者あての郵便物のみです。
宅配業者が扱う荷物やメール便、家族宛ての郵便物は対象になりません。
転送された郵送物は後日受け取れる
破産管財人に転送された郵便物は、そのまま回収されるのではなく確認が終わり次第返却されます。
破産管財人が郵便物を確認するのは、債権者や破産者の財産などを正確に把握するためです。
それ以外の目的で使われることはないので安心ください。
3~4ヵ月して自己破産手続きが完了すれば、制限は解除される
郵便物の転送は、自己破産手続きが完了すれば解除されます。
解除される目安としては、3ヵ月〜4ヵ月程度です。
ただし、解除までの期間にはケースにもよります。
たとえば単純な事件で債権者集会が一度しか開催されなければ上記の期間よりも早く解除される可能性がありますが、自分で申し立てたために手続きがスムーズにいかないケースや債権者が免責に反対しているような場合は、6ヵ月以上かかることもあります。
- 債権者集会
- 自己破産をすることになった経緯や財産の状況報告、必要な手続きに関する説明をおこなったり、債権者の意見を聞いたりするために開催される集会のこと。
引っ越しや長期の旅行をするのに、許可が必要となる場合がある
管財事件の場合は、破産手続き中に裁判所の許可なく居住地を離れて引っ越しをしたり長期の旅行をしたりすることはできません。
出張など仕事に必要な場合も同様です。
破産手続き中に居住地を離れる必要がある場合は、裁判所の許可が必要となります。
3~4ヵ月して自己破産手続きが完了すれば、許可が不要となる
引っ越しや長期の旅行に対する移動制限は、死ぬまで続くわけではありません。
破産手続きが完了すれば、裁判所に許可を得なくても遠出ができるようになります。
目安は3ヵ月〜4ヵ月程度ですが、破産手続きにかかる時間はケースによって前後するため、これより短くなったり反対に長くなったりする可能性があります。
官報に掲載される
自己破産をすると、破産者の名前が官報という国の機関紙に記載されます。
官報に掲載されるのは、法律の制定や改正、破産や相続の裁判内容などです。
官報にはインターネット版もあり、誰でも簡単に参照できます。
そのため知人などが万が一官報をみれば、自己破産をしたことがばれてしまう可能性がないとはいえません。
官報をみるのは、一部の方に限られる
官報をみられると、自己破産をしたことがばれてしまうことがあるのは否めません。
ただし、可能性としては非常に低いと考えてもよいでしょう。
官報を閲覧する習慣があるのは、以下のような職業に就いているごく一部の人に限られるためです。
一般の人であれば、そもそも官報の存在を知らないことがほとんどでしょう。
- 弁護士や司法書士
- 金融機関
- 信用情報機関
- 市町村役場の税務担当者
- 保険会社
- 警備会社
上記のような職業の方でも、官報の膨大な情報を隅々までチェックしているわけではありません。
特定の個人が破産した情報まで確認されるケースは稀でしょう。
これらのことから官報に自分の名前がのるからといって、自己破産の事実がばれる可能性は非常に低いといえます。
自己破産のデメリットに関するよくある誤解
前章で解説したとおり、自己破産には多くのメリットがあるのは確かです。
しかし中には、自己破産をする=人生終わりと思っているなど、自己破産を誤解しているケースも少なくありません。
よくある誤解には、たとえば以下があります。
- 一生クレジットカードやローンが使えない?【一定期間を過ぎれば可能】
- 年金が受給できなくなる?【受給できる】
- 生活保護が受給できなくなる?【受給できる】
- 自己破産が会社にばれて解雇されてしまう?【原則ばれない】
- 海外旅行が一生できなくなる?【制限されても一定期間のみ】
- 戸籍や住民票に自己破産をしたことが記載されてしまう?【されない】
- 選挙権がなくなる?【なくならない】
- 賃貸住宅の契約ができなくなる?【ケースによる】
それぞれ解説します。
一生クレジットカードやローンが使えない?【一定期間を過ぎれば可能】
自己破産をすると、確かにクレジットカードの利用やローンの契約ができなくなりますが、一時的なものであって一生使えなくなるわけではありません。
自己破産をしたことを指す事故情報は、5年〜7年で消滅するためです。
事故情報が消えれば、新たにクレジットカードを作成したり、住宅ローンや自動車ローンを組んだりといったことができるようになります。
ただし、自己破産で免責されたクレジットカード会社や金融会社などでは、事故情報が消えたあともクレジットカードの作成やローンの契約ができない可能性が高いです。
自己破産をしたことで、社内ブラックになる場合があるためです。
そのため自己破産で免責の対象となった金融機関や系列会社などで、クレジットカード作成やローンの契約をするのは困難と考えられます。
- 社内ブラック
- 長期滞納や債務整理といった金融事故を起こしたことが、その金融会社やクレジットカード会社に記録されること。 会社によっては半永久的に情報が残り、いつまでもその会社や系列会社などで借入れやクレジットカードの作成ができない。
年金が受給できなくなる?【受給できる】
自己破産をしても、年金が受給できなくなることはありません。
公的年金は差し押さえを禁止する「差押禁止債権」に該当するためです。
そのため、現在年金を受給している人もこれから受給する予定の人も、年金を受給できなくなることを心配する必要はありません。
ただし解約返戻金20万円以上の個人年金に関しては、強制解約されたあと債権者への配当に充てられてしまうため受け取れません。
公的年金のように差押禁止債権にあたらず、生命保険と同様に財産として扱われるためです。
生活保護が受給できなくなる?【受給できる】
自己破産をしても、生活保護は受給できます。
生活保護は健康で文化的な生活を保障するためのものであり、自己破産をしても生活を続けるのに必要であれば今まで通り受給が可能です。
自己破産が会社にばれて解雇されてしまう?【原則ばれない】
基本的に、自己破産をしたことがばれて会社を解雇されることはありません。
そもそも裁判所や弁護士などが会社に連絡して、自己破産をしたことを通知することは基本的にありません。
仮にばれたとしても、自己破産を理由に解雇することは法律で許されていないのです。
ただし自己破産によって制限を受ける職業に就いているケースでは、雇用契約の解雇事由にあたる可能性があります。
解雇事由に該当するのであれば、任意整理や個人再生といったほかの債務整理方法も検討することをおすすめします。
海外旅行が一生できなくなる?【制限されても一定期間のみ】
自己破産をして、海外旅行に制限がかかる可能性があるのは破産手続き中のみです。
自己破産手続きが完了すれば、制限なく海外へ行くことができます。
なお破産手続き中でも、制限がかかるのは管財事件の場合のみです。
破産手続き中に、仕事などの関係で海外へ行く必要があれば裁判所に許可をとります。
ただし観光などの目的では、許可されない可能性が高いです。
また破産手続き前に観光目的で海外へ行くと、浪費とみなされ破産手続きに問題が生じる可能性があります。
そのため破産手続き前に、仕事などの必要がないのに海外へ旅行するのは避けた方がよいでしょう。
戸籍や住民票に自己破産をしたことが記載されてしまう?【されない】
自己破産をした事実が、戸籍や住民票に記載されてしまうことはありません。
そのため、それらの書類から自己破産をした事実がばれることはないので安心してください。
選挙権がなくなる?【なくならない】
自己破産をしても選挙権はなくなりません。
選挙権は、18歳以上の全ての日本国民に与えられる権利であるためです。
手続き後はもちろん、手続き中であっても投票できます。
また、被選挙権も失わないため、選挙への立候補も可能です。
賃貸住宅の契約ができなくなる?【ケースによる】
賃貸住宅の契約ができなくなるかどうかはケースによります。
ブラックリストに登録されたことが原因で審査に通らなくなる可能性はありますが、保証会社によって審査基準が異なったり、そもそも保証会社が不要な物件もあったりするためです。
自己破産を機に引っ越しをする際は、以下の方法を試してみましょう。
- 保証会社が不要な物件を選ぶ
- 不動産会社に、独自の審査基準をもつ独立系の保証会社を選んでもらう
- 同居人がいるなら同居人に契約してもらう
なお、現在賃貸物件に住んでいる場合、家賃をきちんと支払っているなら自己破産をしたからといって追い出されることはありません。
法律上、自己破産を理由に賃貸借契約を解約することは認められないためです。
自己破産で家族に影響するデメリットとは?
自己破産のデメリットを受けるのは破産者自身ですが、同居している家族がいる場合は家族も何らかの影響を受ける可能性があります。
ここでは、家族に影響するデメリットについて解説します。
家族が独立して生活をしていれば、基本的には影響がない可能性が高い
独立して生活している家族なら、基本的には自己破産の影響を受けないでしょう。
財産を処分されたり職業・資格制限、郵便物の転送などのデメリットを受けたりするのは、あくまでも破産者本人であるためです。
家族の財産には影響せず、さまざまな制限も受けません。
ただし、家族が同居しているなら、次項から解説するデメリットが影響を与える可能性があります。
また同居していなくても、家族が借金の保証人になっているときは自己破産による影響が考えられるため注意が必要です。
家族が保証人になっているケースについては、本記事内の、「家族が借金の保証人になっていれば、その家族が返済を求められることになる」で後述します。
持ち家や自動車、99万円を超える預貯金などが没収され生活に支障をきたす
自己破産によって持ち家や自動車、99万円を超える預貯金などが没収されれば、同居している家族の生活も一変するでしょう。
たとえば、以下のような影響を受けることが考えられます。
- これまで住んでいた家に住めなくなる
- 転職・転校を余儀なくされる可能性がある
- 自動車での移動ができなくなる
持ち家やその敷地は没収され、競売にかけられます。
買い手がつくまでに時間がかかるため、すぐに出ていかなければならないわけではありませんが、買い手がつき退去を求められれば出ていかなければなりません。
これまで当たり前のように住んでいた家から退去しなければならず、まだ自立していない子どもは引っ越し先が学校の校区外になれば転校せざるを得なくなります。
また、自動車が処分されれば、送迎や買い物などに使用できなくなり不便を強いられることになります。
このように、自己破産は自分だけの問題ではなく、同居している家族にも大きな影響を与える可能性があることを理解しておく必要があるでしょう。
なお、持ち家や自動車などが家族名義であれば、処分の対象にならないため自己破産後もこれまでどおり利用できます。
預貯金も、家族のものに関しては処分対象にならないため99万円を超えていても問題ありません。
家族が借金の保証人になっていれば、その家族が返済を求められることになる
家族が借金の保証人になっていると、保証人である家族に請求がいってしまいます。
債務者が借金を返済できなくなった場合、保証人が代わりに返済しなければならなくなるためです。
債務者が自己破産をして借金から解放されたとしても、保証人の返済義務はなくなりません。
保証人が数人いるなら頭割りが可能ですが、1人しかいなければその人が全額負担する必要があります。
さらに一括で請求されるため、返済額によっては大きな影響を受けます。
家族も払えないときは、債務者と一緒に債務整理することを検討することになるでしょう。
家族カードが使えなくなる可能性がある
自己破産をしたことで、破産者が本会員になっている家族カードが使えなくなる可能性があります。
家族カードの利用料金は、実際にカードを使用した家族ではなく本会員の借金になるためです。
- 家族カード
- 本会員になっている人の家族が利用できるカードのこと。
- 利用した分は本会員に請求される。
本会員カードやその家族カードの利用料金を滞納していた場合、自己破産によって本会員カードも家族カードも強制解約になります。
家族のための保険が解約されてしまう可能性がある
家族のためにかけていた保険が、自己破産によって解約されてしまう可能性があります。
解約返戻金が20万円を超える保険は、家族のために加入したものでも自己破産によって処分の対象になるためです。
いわゆる掛け捨ての保険は解約返戻金が発生しないため対象になりませんが、以下のような保険は解約の対象になる場合があります。
- 終身保険
- 学資保険
- 個人年金保険
- 養老保険
保険が解約されれば万が一の際などに対応できなくなり、家族に影響を与えてしまうおそれがあります。
どうしても必要な保険なら、以下の方法で解約を回避するのもひとつの手段です。
- 破産管財人に対して解約返戻金相当額を支払い、権利を放棄してもらう
- 保険への再加入が困難であることを理由に、自由財産の拡張を認めてもらう
破産管財人に解約返戻金に相当する額を支払えば、保険を解約する必要はなくなります。
また、持病があり、自己破産後に再度保険に加入することが難しいときは、裁判所に自由財産として認めてもらうよう申し立てることで解約を回避できる可能性があります。
一定期間は、家族のために保証人となることができない
一定期間は、家族のために奨学金やローンの保証人になることができません。
自己破産をすることで、ブラックリストに掲載されるためです。
ブラックリストに事故情報が掲載される期間は5年〜7年程度であるため、その間は保証人になれないことを念頭に置いておきましょう。
奨学金であれば、保証人や連帯保証人がいらない「機関保証制度」を利用するのもよいでしょう。
機関保証を選択した場合、保証機関に保証料を支払うことで保証機関が保証人や連帯保証人の代わりに連帯保証してくれます。
自己破産して家族に影響するとよく誤解されること
前章で解説したとおり、自己破産が家族に影響を与えることもあります。
しかし中には、就職や転職に影響する、家族もブラックリストに載るといった、誤解されやすい部分もあります。
ここでは、自己破産が家族に与える影響のうち、よく誤解されることについて解説します。
就職や転職に影響する?【法律的には影響しない】
自己破産をしても、法律的には家族の就職や転職に影響しません。
自己破産をする際の必要書類には、給料明細書や源泉徴収票といった家族の収入がわかるものも含まれますが、職場に連絡されることはないため、身内の自己破産を知られる心配はありません。
また、破産者本人は弁護士などの士業や警備員、国家公務員などの一定の職業に対して一時的に制限を受けますが、家族の職業には影響がありません。
結婚に影響する?【法律的には影響しない】
家族の結婚にも、自己破産が法律的に影響することはありません。
自己破産をしたことは戸籍や住民票に記載されないため、相手に知られる可能性は低いでしょう。
相手が身辺調査を実施した場合は知られてしまうおそれがありますが、全ての家庭が調査をするわけではありません。
そのほか、官報からばれるリスクもゼロではありませんが、そもそも官報を閲覧する機会がある人は限られた業種の人であるため、破産したのが本人ならまだしも、その家族が自己破産したことを官報で知るケースはあまりないと考えてもよいでしょう。
家族もブラックリストに載る?【載らない】
自己破産をしても、家族はブラックリストに載りません。
自己破産をはじめとする債務整理や長期滞納などでブラックリストに掲載されるのは、債務整理や長期滞納をした本人のみであるためです。
そのため家族は、その家族自身が債務整理や長期滞納といった金融事故を起こさない限り、自己破産後もクレジットカードの新規作成や利用、スマートフォンの分割購入などができます。
ただし、審査の際に家族の信用情報が影響する可能性はゼロではありません。
基本的には契約者本人の返済能力が見られますが、高額なローンを組む場合や一部の金融機関では家族も審査の対象になることがあります。
「自己破産をしなければよかった」と後悔しないためのポイント
自己破産をしたことを後悔しないためのポイントは以下の3つです。
- 自己破産のデメリットをしっかり把握しておく
- 自己破産後の生活についてしっかり情報を収集し検討しておく
- 自己破産が最適な選択肢か弁護士に相談する
それぞれ解説します。
自己破産のデメリットをしっかり把握しておく
自己破産したことを後悔しないためには、メリットだけでなくデメリットもしっかり把握したうえで実行する必要があるでしょう。
自己破産は借金が免除されるという大きなメリットがある一方で、多くの財産を失ったり職業・資格制限を受けたりといったデメリットもあるためです。
そのため借金をゼロにできるという部分だけを見て実行してしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔する羽目になります。
自己破産をするのであれば、まずは制度自体を正しく理解し、デメリットを把握したうえで行動するようにしましょう。
自己破産後の生活についてしっかり情報を収集し検討しておく
自己破産後の生活についてしっかり情報を収集し、どのように行動するか検討しておくことも重要です。
自己破産は申し立てたら終わりではなく、むしろそこから生活を立て直すための日々がスタートするためです。
たとえば持ち家がある人なら、自己破産の際に持ち家を処分される可能性が高いため、引っ越し先について考えておかなければなりません。
自己破産後に生活していけない可能性がある場合は1ヵ月の生活費を把握し、収入を増やせないか模索したり、生活保護や生活困窮者自立支援制度などの公的支援制度の利用を検討したりといったことが必要です。
また、税金や国民健康保険料などを滞納しているなら税務署や市区町村役場に連絡し、返済計画について早急に相談するべきでしょう。
税金や国民健康保険料、罰金などは自己破産でも免除されない「非免責債権」に該当し、滞納が続けば強制執行によって給与や預貯金を差し押さえられるおそれがあります。
そのほか、同居している家族がいるなら、自己破産について、いつどのように話すかを考える必要があるのに加え、自己破産が家族にどのような影響を与えるかを知っておき、できるだけ影響を受けずに済むよう配慮することが大切でしょう。
自己破産が最適な選択肢か弁護士に相談する
自分にとって、自己破産が最適な選択肢かどうかを弁護士に相談するのもよいでしょう。
自己破産が本当にベストであるとは限らないためです。
債務整理には自己破産だけではなく、以下の方法もあります。
任意整理 |
債権者との交渉で将来発生する利息をカットしてもらうなどして、残債を3年〜5年で返済していく債務整理方法。自己破産や個人再生に比べて簡単な手続きで完了できる。 |
個人再生 |
借金の元本を5分の1〜10分の1程度に減額してもらい、残債を原則3年で返済していく債務整理方法。 |
どちらも自己破産のように借金をゼロにすることはできませんが、職業・資格制限や移動制限は受けず、郵便物を見られることもありません。
また、個人再生ではローン返済中の持ち家や、ローン完済後の自動車などを残せる可能性があります。
任意整理では、原則として持ち家や自動車などの財産を失うことはありません。
ローン返済中の債務を任意整理の対象にすれば対象の財産を失う可能性がありますが、任意整理では対象を選択可能です。
そのためローン返済中のものでも、整理対象から外せば該当の財産を手元に残すことができます。
保証人つきの借金も対象から外せば、保証人に迷惑をかけることもありません。
とはいえ、任意整理は元本自体が減額されるわけではないため、借金の金額によっては借金問題を解決できないおそれがあります。
自分のケースにどの債務整理方法が適しているかは、判断が難しい場合があります。
借金問題を得意としている弁護士に相談し、慎重に進めるとよいでしょう。
自己破産の費用相場
自己破産の手続きにかかる費用は、大きく分けて裁判所費用と弁護士費用です。
費用相場は以下のとおり、手続きの種類によって異なります。
裁判所費用 |
弁護士費用 |
|
同時廃止事件 |
1万円~3万円程度 |
30万円~50万円程度 |
管財事件 |
50万円程度 |
30万円~80万円程度 |
なお、少額管財事件になると裁判所費用は、地域に拠りますが、20万円程度、弁護士費用も30万円〜60万円程度と、通常の管財事件よりも少し安くなります。
- 少額管財事件
- 通常の管財事件に比べ、費用負担が少なく手続きが簡略化された自己破産の手続きです。
- 一定の基準をクリアしたうえで、弁護士に依頼することを条件として少額管財が選べる場合があります。
- なお少額管財は全ての裁判所で採用されているわけではないので注意が必要です。
費用の詳細や支払えない場合の対処法については、以下の記事を参照してください。
さいごに | 自己破産のデメリットについて不安な場合は弁護士へ相談を!
自己破産のデメリットや自己破産後の人生がどうなるかについて解説しました。
自己破産は借金がゼロになる手続きです。
そのメリットの大きさゆえ、ブラックリストに載ったり一定期間職業・資格制限を受けたりなど、さまざまなデメリットを受けます。
また、ケースによっては家族に影響を与えることもあります。
しかし、一生クレジットカードが使えなくなる、生活保護が受給できなくなる、家族の就職や転職、結婚に影響するといったことは誤解です。
自己破産を選択するなら、まずデメリットについて正しく学ぶ必要があるでしょう。
自己破産のデメリットについて不安があるときは、弁護士に相談することをおすすめします。
借金問題を得意とする弁護士なら、自己破産のデメリットを説明してくれることはもちろん、本当に自己破産すべきかどうかについても適切なアドバイスをしてくれるでしょう。

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