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個人再生の費用はいくらかかる?相場や手続き、払えない場合の対処法

代表弁護士 野条 健人
監修記事
個人再生の費用はいくらかかる?相場や手続き、払えない場合の対処法

経済的にひっ迫しているからこそ個人再生を申し立てたいのに、弁護士費用が高くて払えないというジレンマを抱えている方は多いのではないでしょうか。

しかし、弁護士費用が払えないからといって、自力で個人再生を申し立てることは難しいでしょう。

個人再生の申立ては、とても複雑で厳格な手続きだからです。

本記事では、個人再生を申し立てたいけれど弁護士費用を払う余裕がなくためらっている方などのために、費用を安く抑える方法を解説します。

また、払えない場合の対処法などについても解説します。

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個人再生にかかる裁判所費用・弁護士費用の相場と内訳

個人再生にかかる費用は、主に「弁護士に支払う費用」と「裁判所に支払う費用」の2種類です。

個人再生を申し立てる際には、裁判所に手数料などを納めなければなりません。

申立費用は、弁護士に支払う報酬とは別に発生します。

金額は裁判所ごとに異なる場合がありますが、費用の相場は以下のとおりです。

個人再生の裁判所費用の相場・内訳

内訳 内容 費用相場
申立手数料(収入印紙代) 裁判所に個人再生を申立てる際に提出する申立書に貼る収入印紙 1万円程度
予納郵券代 裁判所から債権者へ個人再生手続開始決定の通知などを送るための郵便切手。申立て時に提出する

2,000円程度

※管轄裁判所や債権者数により異なる

官報公告費 個人再生開始決定時や再生計画案認可決定時などに官報に掲載する際にかかる費用 1万3,744円
個人再生委員の報酬 個人再生委員を選任する場合に裁判所に納める費用

15万円~25万円程度

(個人再生委員が選任される場合のみ)

申立手数料

申立手数料とは、裁判所に収入印紙で納める手数料で、1万円程度必要です。

個人再生を裁判所に申し立てる際には、申立書に収入印紙を貼り付けて裁判所に提出します。

予納郵券代

予納郵券代とは、裁判所から債権者宛てに個人再生手続開始決定や再生計画案の認可決定などを送るための郵送代のことです。

郵券とは郵便切手を指し、裁判所ごとに納める金額や切手の組み合わせが細かく決められています。

ただし、近年では切手管理の煩雑さのため、インターネットバンキングやペイジーなどのシステムを利用して裁判所へ電子納付することが推奨されています。

官報公告費

官報とは国の発行する新聞のようなもので、再生手続きをする際にはその官報掲載費を、裁判所を経由して納めます

2019年の消費税改正によって金額が改定され、現在の費用は1万3,744円です。

官報公告費は、官報を発行する独立行政法人国立印刷局により全国同一で価格設定されており、消費税や物価の状況などにより変更される可能性があります。

なお、官報を習慣的に確認するのは、金融機関など一部の職業関係者に限られます。

そのため、官報掲載をきっかけに周囲に個人再生を知られる心配はほとんどありません。

個人再生委員の報酬

個人再生委員とは、裁判所が選任し、中立な立場から申立人の財産チェックや再生計画案に対して意見する役割の人のことです。

通常は弁護士が選任され、個人再生委員の報酬は裁判所ごとに異なりますが、おおよその相場は15万円〜25万円程度です。

ただし、個人再生委員の選任をするかは、裁判所によって運用が異なります。

東京地方裁判所では、原則全ての事件で個人再生委員が選任されます。

しかし、東京以外の多くの地方裁判所では、原則として申立代理人に弁護士がついていない場合や、債務額が3,000万円を超えるなど大きな事件の場合のみ選任する運用となっています。

これは、申立てに弁護士が関わることで申立人の財産調査ができている以上、再生委員を新たに選任して再調査をする必要がないからです。

個人再生委員の報酬が発生する場合、再生手続開始決定・個人再生委員の選任決定から再生計画の認可決定までの原則6ヵ月間、1ヵ月ごとに再生委員指定口座へ納付する「分割予納金」方式がとられます。

分割予納金の積み立ては再生計画案の遂行テストでもあるため、滞りなく納付しなければなりません。

個人再生委員への分割予納金納付の具体的な流れは以下のとおりです。

【分割予納金方式】※東京地方裁判所

再生計画開始・個人再生委員選任決定

再生計画案で予定する月額返済額の積み立て開始(再生委員指定口座へ)

例)月額3万円の場合:原則6ヵ月間のため3万円×6ヵ月=18万円

再生計画の認可決定

例)個人再生委員の報酬15万円の場合:18万円ー15万円=3万円が申立債務者に返還される

ただし、申立代理人に弁護士がついていない場合には、どの裁判所でも個人再生委員は選任されます。

また、弁護士ではなく司法書士が書類作成して申し立てた場合にも、再生委員が選任されることがあります。

個人再生の弁護士費用の相場・内訳

内訳 弁護士の費用相場
相談料 0円~1万円程度
着手金 20万円~50万円程度
報酬金 30万円~40万円程度
その他実費など 3万円~5万円程度
合計金額 50万円~80万円程度

弁護士費用は、法律事務所により金額や請求方法などが大きく異なることがあります。

着手金0円とする代わりに事件終了時の報酬金を高額に設定している法律事務所や、逆に報酬金を請求せず、着手時もしくは事件終了時に手数料として一括で請求する法律事務所もあります。

そのため、複数の法律事務所の費用を比較する際には、着手金と報酬金の合計額がいくらになるかで判断しましょう。

相談料

法律相談料は、30分無料から1万円程度としている法律事務所もあるなどさまざまです。

相談料を安く抑えたい場合は、各地の弁護士会が主催する多重債務相談や法テラスが実施する法律相談を利用するといいでしょう。

また、市区町村の市民相談などの無料相談窓口で相談することもできます。

そこで相談した弁護士に、別途契約書を結んで依頼することもできます。

着手金

着手金とは、依頼主から個人再生の案件を受任したことにより発生する費用です。

個人再生が裁判所から適用されるかどうかにかかわらず弁護士に払う必要があります。

着手金の相場は20万円〜50万円程度です。

2004年までの旧弁護士報酬基準では、個人再生の着手金は20万円以上とされていました。

そのため、多くの法律事務所では現在も着手金を20万円以上としています。

ただし、個人再生事件は法律事務所により請求の時期や方法が異なります。

着手時または終了時に手数料としてまとめて請求する法律事務所もあれば、着手金・報酬金を別々に請求するところもあります。

費用で比較するなら、報酬金や実費なども含めた合計額で判断しましょう。

報酬金

報酬金とは、個人再生が成功し、裁判所から借金の減額が認められたことによって発生する弁護士費用です。

報酬金の相場としては、30万円~40万円程度です。

報酬金を着手金と分けて請求する事務所では、経済的利益を基準に、その金額に一定の率をかけて報酬金が算出されます。

経済的利益とは、再生手続きにより減額を受けた債務額のことです。

一般的に再生事件の場合は、再生計画案で減額された経済的利益をもとに、10%程度の割合を掛けた金額を報酬金として請求されることが多いでしょう。

報酬金の考え方の例
  1. 個人再生で借金500万円を100万円に減額できた場合
  2. 経済的利益:500万円-100万円=400万円
  3. 弁護士への報酬金:400万円×10%=40万円

また、住宅ローン特則を使った場合、追加の報酬が必要になる場合もあります。

その他実費など

個人再生の申立て準備でかかる実費には、以下の費用が含まれます。

  1. 債権者に受任通知を送るための郵送代
  2. 申立書などのコピー代
  3. 必要書類の取得実費
  4. 交通費 など

3万円から多くても5万円程度と考えておけば十分でしょう。

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個人再生の費用を安く抑える2つの方法

借金を払えなくて個人再生を申し立てる依頼者にとって、50万円以上の出費はかなりの負担になるでしょう。

そこで、個人再生の申立て費用を抑える方法を2つ紹介します。

ただし、抑えられるのは弁護士費用のみで、裁判所から要求される手続き費用を抑えることはできません。

1.法テラスの民事法律扶助制度を利用する

法テラスは、法務省所轄の法人で、法的トラブルを抱えた全ての人に司法サービスを提供することを目的としています。

資力や収入が一定額以下の方であれば、法テラスの民事法律扶助制度を利用し、一時的に弁護士費用を立て替えてもらうことができます。

ただし、民事法律扶助制度を使いたい場合は、法テラスと契約している弁護士や司法書士に依頼する必要があります。

そして、契約弁護士を通して法テラスに申請書と収入を証明する書類などを提出して申請し、その後に法テラスの設ける審査をクリアすることで受けられます。

家族人数 手取月収額の基準 家賃・住宅ローンを負担している場合の加算限度額 資産合計額の基準
1人

18万2,000円以下

(20万200円以下)

4万1,000円以下

(5万3,000円以下)

180万円以下
2人

25万1,000円以下

(27万6,100円以下)

5万3,000円以下

(6万8,000円以下)

250万円以下
3人

27万2,000円以下

(29万9,200円以下)

6万6,000円以下

(8万5,000円以下)

270万円以下
4人

29万9,000円以下

(32万8,900円以下)

7万1,000円以下

(9万2,000円以下)

300万円以下

民事法律扶助制度を利用して、法テラスと契約している弁護士に依頼する場合の報酬基準は以下のとおりです。

債権者数 実費分 報酬
1社~10社まで 3万5,000円 16万5,000円~
11社~20社まで 3万5,000円 18万7,000円~
21社以上 3万5,000円 22万円~

※事件の複雑さや再生委員がつくかどうかによって加算あり

また、法テラスと提携している弁護士に依頼すれば、審査の申し込み手続きも申請してもらうことができます。

審査がとおり決定となれば、法テラス・弁護士・本人の3者契約を締結します。

個人再生を申し立てると、法テラスから弁護士に上記基準による報酬が支払われ、再生手続き終結後は法テラスが立て替えた分を本人が分割返済していくことになります。

2.司法書士に依頼する

個人再生の申立ては、司法書士にも依頼することができます。

司法書士報酬は弁護士よりも若干安く設定されており、20万円〜30万円程度が相場です。

ただし、個人再生手続きの中には、弁護士にはできて司法書士にはできない業務があります。

申立てを代行できるのは、認定司法書士のみです。

司法書士は本来登記申請を主な業務としていますが、特別な研修を受けて国の試験に合格した者のみ、認定司法書士として簡易裁判所が管轄する事件のみ依頼者の代理人となることができます。

個人再生における弁護士と司法書士の違い

司法書士に依頼して個人再生を申し立てた場合、以下の点で弁護士と異なります。

  1. 個人再生委員が選任される可能性がある
  2. 裁判所や再生委員との面談に同席してもらえない

個人再生の申立てに弁護士が代理人としてついていない場合、個人再生委員を選任する裁判所は多く、司法書士が申し立てると再生委員が選任される可能性があります。

再生委員が選任されると、別途15万円〜20万円程度が追加で必要になることがあります。

また、個人再生を申し立てると、裁判所や再生委員との面談のために出廷しなければなりません。

弁護士は代理人として同行できますが、司法書士は面談に同行できないので注意しましょう。

認定司法書士が代理人になるのは、簡易裁判所が担当する事件のみです。

個人再生手続きは地方裁判所の管轄であるため、司法書士は代理人になることはできません。

あくまでも「書面作成代理」という立場で依頼を受けます。

そのため、個人再生や自己破産などの地方裁判所に申し立てる手続きは、司法書士よりも弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

個人再生の弁護士費用が支払えない場合の対処法2つ

個人再生の費用のうち、裁判所の費用は減額してもらえませんが、弁護士費用については以下の2つの対処法があります。

1.弁護士事務所の無料相談でアドバイスをもらう

個人再生の費用について困ったら、まずは法律事務所に相談してみましょう。

相談だけなら無料で受け付けてくれる法律事務所がたくさんあります。

自分は個人再生を申し立てるつもりで相談しても、弁護士に話を聞いてもらっているうちに実は任意整理で対応できることがわかったり、場合によっては過払い金が発生していたりする可能性もあります。

多くの人にとって、個人再生を申し立てるのは初めてのことでしょう。

弁護士は何度も申立ての経験をし、たくさんの知識を持っているので、あなたに合った方法をアドバイスしてくれるはずです。

2.分割払い・後払いにしてもらう

近年では、弁護士費用を後払い・分割払いできる法律事務所も増えています。

弁護士費用を工面するのが難しい方は、後払いなどが可能な法律事務所に依頼するとよいでしょう。

50万円程度の費用を一括で支払うことは、債務整理中でなくても厳しいものです。

弁護士も、目の前の債務が支払えずに個人再生を申し立てようとする依頼者にとって、50万円以上を一括払いするのは難しいとわかっています。

弁護士費用を一括で支払うことができない場合、報酬の分割払いや支払い期限を延ばして後払いにできないか、一度相談してみましょう

さいごに|個人再生の弁護士費用が不安な方は無料相談がおすすめ

個人再生手続きを弁護士に依頼する場合、50万円〜80万円程度の弁護士費用がかかります。

ただし、法テラスの民事法律扶助制度を利用したり、報酬の分割払いや後払いに対応している弁護士に依頼したりなど、費用負担を抑える方法はあります。

なかには個人再生の申立て経験が少ない法律事務所や司法書士事務所もあります。

スムーズに手続きを進めるためには、解決実績が豊富で対応に慣れている事務所に依頼することも大切なポイントです。

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この記事の監修者
かがりび綜合法律事務所
代表弁護士 野条 健人 (大阪弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。