自己破産するには?3種類のやり方やそれぞれの流れなどを解説

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苦しい借金生活から抜け出すために、債務整理の一種である「自己破産」を検討している方もいるでしょう。

自己破産をするには「自己破産の必要性があるか」「自己破産をする資格があるか」といった要件を満たしている必要があります。

また、債務者の資産状況などに応じて自己破産の手続内容が変わる点にも注意しなければなりません。

この記事では、自己破産を検討している方に向けて、自己破産をするための要件、自己破産の手続の種類、自己破産の種類ごとの流れなどを解説します。

また、自己破産の手続を弁護士に依頼するメリットについても紹介します。

自己破産に関する疑問を解消するために、ぜひこの記事を役立ててください。

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自己破産するには?実体的要件と形式的要件

自己破産(免責)とは、借金の返済が困難になった場合に、裁判所の許可を得て全ての借金を免除してもらう手続のことを指します。

自己破産をするには「自己破産が必要になるか」という実体的要件と、「自己破産の資格があるか」という形式的要件の両方を満している必要があります。

ここでは、自己破産をするための要件について確認しましょう。

1.実体的要件|自己破産が必要になるか

自己破産をするのに必要な実体的要件には以下の2つがあります。

  • 破産手続開始原因があること
  • 破産障害事由がないこと

1つ目の破産手続開始原因とは、破産手続が必要になった事実のことを指します。

破産法上、破産手続開始原因には支払不能と債務超過の2種類があり、個人の場合は支払不能だけが破産手続開始原因として認められています。

この支払不能とは「債務者が借金を一般的かつ継続的に返済することができない状態」を意味します。

よりわかりやすくいうと、支払の期限を迎えている借金について、返済がもう追いつかない状態のことです。

2つ目の破産障害事由とは、破産法第30条などに規定されている、破産手続を開始することができない理由を指します。

たとえば「破産手続の費用の予納がないとき」「不当な目的で申立てされたとき」「申立てが誠実にされていないとき」といった条件に当てはまる場合は、裁判所による破産手続開始決定はおこなわれません。

2.形式的要件|自己破産の資格があるか

自己破産をするのに必要な形式的要件(手続的要件)には以下の4つがあります。

  • 申立人が申立権を有していること
  • 債務者自身に破産能力があること
  • 申立書の内容に不備がないこと
  • 予納金などの手続費用を納めていること

破産手続は法律上の手続であるため、破産法で規定されている要件を満たす必要があります。

たとえば、申立書に不備がある場合は裁判所から補正を求められるでしょう。

また、一定の手続費用である「予納金」を納めていない場合は破産手続を開始してもらえません。

形式的要件も満たした上で自己破産の申立てをおこないましょう。

3種類の自己破産手続|期間・費用などの違い

自己破産の手続は、債務者の財産状況などに応じて、同時廃止事件と管財事件に分かれます。

また、裁判所によっては、管財事件を弁護士の有無などに応じて、少額管財と通常管財に分けている場合もあります。

どの自己破産手続になるかで期間や費用などが変わるため、ここではそれぞれの手続の特徴や条件などを確認しましょう。

以下では、東京地方裁判所などの大都市部における運用を想定しながら説明しますので、申し立てる先の裁判所によっては扱いが違う場合があることにご注意ください。

【同時廃止、少額管財、通常管財の期間や費用の違い】

破産手続

条件

期間

費用

(弁護士費用含む)

同時廃止

  • 総資産が20万円以下しかない
  • 免責不許可事由がない

3~4か月程度

約30万円 ~

少額管財

  • 同時廃止の条件に当てはまらない
  • 財産の種類が少ない
  • 弁護士に依頼している

4~6か月程度

約70万円~

通常管財

  • 同時廃止の条件に当てはまらない
  • 財産の種類が多くて手続が複雑である
  • 弁護士に依頼していない
  • 裁判所が少額管財に対応していない

6~12か月程度

約130万円~

同時廃止|総資産が20万円以下の場合

「総資産が20万円以下しかない」「免責不許可事由(ギャンブルや浪費などで借金の免責が認められないこと)がない」という条件を満たす場合は同時廃止事件として扱われます。

申立人の財産が少ないため、財産を売却したり債権者に分配したりする手続はおこなわれません。

そのため、他の手続に比べて短期間で終わり、費用は安いという特徴があります。

少額管財|総資産が20万円以上で弁護士に依頼する場合

申立人の総資産が20万円以上あるなど、同時廃止の条件に当てはまらない場合で「財産の種類が少ない」「弁護士に依頼している」などに該当する場合には、管財事件の一種である少額管財になることが多いです。

弁護士に依頼する必要はありますが、一般的な通常管財よりも短い期間で終えることができ、費用は安くすませられるでしょう。

通常管財|総資産が20万円以上で弁護士に依頼しない場合

申立人の総資産が20万円以上あり、弁護士に依頼していない場合や、そもそも裁判所が少額管財を取り扱っていない場合には通常管財(東京地方裁判所などでは「特定管財」)になります。

通常管財になった場合は、少額管財よりも複雑な手続を必要とするため、時間的にも費用的にも申立人の負担は大きくなるでしょう。

ただし、通常管財の場合は、破産管財人へ支払う報酬額が高額になるケースもあるので注意が必要です。

自己破産するには|自己破産手続の基本的な流れ

自己破産の手続は債務者本人がおこなうこともできますが、なるべく弁護士や司法書士といった専門家に依頼することをおすすめします。

特に、弁護士に依頼しておけば、管財事件になった場合でも「少額管財」となる可能性があります。

ここでは、弁護士に依頼した場合の自己破産の手続の流れを確認しましょう。

自己破産手続の流れ|破産手続開始決定までは共通

同時廃止事件の場合でも管財事件の場合でも、裁判所に申立てをして、破産手続開始決定が出されるまでの流れは同じです。まずは弁護士に依頼してから裁判所による破産手続開始決定までの流れを確認します。

STEP1.依頼・受任

まずは、自己破産を得意としている弁護士事務所で相談をします。

そして、その事務所の弁護士に自己破産手続を依頼したいと思ったら委任契約を締結しましょう。

依頼者と契約を締結した弁護士は、債権者に対して迅速に「受任通知」を送付してくれます。

債権者に受任通知を送付すると、債権者からの取立てが一時的にストップします。

STEP2.資料収集

裁判所に自己破産の申立てをするために資料収集・資料作成をおこないます。

申立てには申立書や陳述書、債権者一覧表、資産目録などが必要で、財産が多いほどたくさんの資料を用意する必要があります。

資料に不備があると申立てを受け付けてもらえないため、弁護士と相談しながら資料を集めたり作ったりしましょう。

【自己破産する際に必要になる書類】

 

STEP3.申立て

申立書などの準備ができたら、債務者の住所等を管轄する裁判所に対して申立書や添付書類などを提出します。これらを提出すると、裁判所に資料の不備がないかなどを確認されます。

また、債務者に裁判官による面接を受けさせるという運用の裁判所もあります。

ただし、東京地方裁判所などでは「即日面接」という裁判官と弁護士だけの面接がおこなわれます。

STEP4.破産手続開始決定

申立書や面接などに問題がなければ、裁判所から破産手続開始決定が出されます。

このとき、同時廃止事件となった場合は同時廃止決定も出されます。

一方、管財事件となった場合は破産管財人が選出されます。

なお、裁判所から破産手続開始決定が出されると、債権者に対しても書面が送付され、官報にも掲載されることになります。

【同時廃止】の破産手続開始決定後の流れ

同時廃止事件になった場合は、破産手続開始決定が出された後に免責審尋を行う場合もあります。

免責審尋で問題がなければ、後日、裁判所から免責許可決定が出されます。

ここでは同時廃止の流れについて確認しましょう。

STEP5.免責審尋

同時廃止事件の場合は、破産手続開始決定から2~3か月後に免責審尋がおこなわれます。

免責審尋には集団審尋と個別審尋の2種類があり、一般的には複数名の破産者が審尋室に呼び出される「集団審尋」が多いです。

ただし、以下にあるような免責不許可事由が疑われる場合は、破産者1名ごとの「個別審尋」になる可能性があります。

※免責不許可事由

  • 本人の浪費により借金を作った場合
  • 財産を隠す・壊す・譲渡するなどした場合
  • 破産申立の1年前から破産手続開始決定までの間に、住所、氏名、年齢、年収などの経済的な信用に関わる情報に嘘の情報を伝えて、借入れなどをおこなった場合
  • ローンやクレジットで商品を買い、その商品を安い値段でお金に換えた場合
  • 破産申立日から数えて7年以内に免責を受けたことがある場合
  • 裁判所や破産管財人の調査に協力しなかった場合

STEP6.免責許可決定

免責審尋の約1週間後に、裁判所から免責許可決定が出されます。

また、免責許可決定から約2週間後に官報に掲載されて、それから2週間経過すると法的に効力が確定します。

なお、免責許可決定が法的に確定しても裁判所から証明書は届きませんが、裁判所に「免責許可確定証明申請書」を提出することで証明書を受け取ることができます。

【少額管財】の破産手続開始決定後の流れ

管財事件(少額管財)になった場合は、破産管財人が選任されて管財人面接がおこなわれます。

その後は管財人が債務者の財産を金銭に換えて債権者に分配・配当する換価処分、裁判所での債権者集会・免責審尋がおこなわれて、裁判所から免責許可決定が出されるという流れになっています。

ここでは少額管財の流れについて確認しましょう。

STEP5.管財人面接

管財事件では、破産手続開始決定の1~2週間後に、裁判所によって選任された破産管財人との面接がおこなわれます。

面接では借金に関すること、収入や財産に関することなどを質問されるのが一般的です。

嘘の回答をしてしまうと免責されないリスクがあるため、管財人の質問には正直に答えるようにしましょう。

STEP6. 換価処分

管財人面接が終えると、管財人によって換価処分がおこなわれます。

換価処分とは財産を分配しやすいように現金化する手続を指します。

全ての財産の処分が完了するまでの所要時間は、財産の数量や種類によって大きく異なります。

なお、破産者が個人の場合は「自由財産」を処分しなくてもよい決まりになっています。

※自由財産

  • 破産手続開始決定後に取得した財産
  • 法律上、差し押さえが禁止されている財産
  • 99万円以下の現金
  • 裁判所によって自由財産の拡張がされた財産
  • 破産管財人によって破産財団から放棄された財産

STEP7.債権者集会・免責審尋

自己破産手続の開始から2~3か月後を目途に裁判所で債権者集会が開催されます。

債権者集会では債権者に対する経過報告や債権者からの意見聴取がおこなわれます。

この時、換価処分が完了していたら債権者集会も終了し、その後、裁判官による免責審尋がおこなわれます。

一方、換価処分がまだの場合は数か月後に改めて集会が開かれます。

STEP8.免責許可決定

少額管財の場合でも、免責審尋後の流れは同時廃止のときと同じです。

免責審尋の約1週間後に裁判所から免責許可決定が出され、官報掲載から2週間後に効力が確定します。

また、効力確定に関する証明書は裁判所から出されないため、証明書を受け取りたい場合は裁判所に「免責許可確定証明申請書」を提出するようにしましょう。

自己破産手続を弁護士に依頼するメリット

自己破産の手続を弁護士に依頼することで、債権者からの取立て・返済請求をすぐにストップできる、面倒な手続の負担を減らせるなどのメリットが期待できます。

ここでは弁護士に依頼するメリットを確認しましょう。

1.取立てをストップできる

弁護士と委任契約を締結すると、債権者からの厳しい取立てや返済請求を一時的に止めることができます。

この理由は、貸金業法などの規定により「弁護士や司法書士からの受任通知があった場合、その債務者に対して電話をかけたり、訪問したりして返済を請求してはいけない」と決まっているからです。

厳しい取立てが止まることで平穏な生活を取り戻せるうえ、返済が不要になることで予納金や弁護士費用などを準備できるといったメリットがあるでしょう。

2.手続の負担を減らせる

自己破産をするためには、申立書の作成、必要書類の収集、裁判所とのやり取りなどの手続が必要になります。

また、申立書などに不備があると、申立てを受理してもらえないケースもあるでしょう。

その点、弁護士に依頼すればこのような手続を一任できるため、精神的・時間的な負担や、書類上・手続上の不備を減らせます。

そのうえ、管財事件になった場合でも「少額管財」になる可能性があるため、自己破産の手続を早く終えられるでしょう。

3.別の解決策を提案してもらえる

債務整理の方法には任意整理や民事再生などもあり、債務者によってはこれらの手続のほうが適している場合もあります。

しかし、債務者自身がどの債務整理が最も適しているのかを判断するのは難しいでしょう。

弁護士に相談すれば、依頼者の状況や希望などを把握したうえで、最適な解決策を提案してくれます。

相談自体は無料で受け付けている弁護士事務所も多くあるため、まずは債務整理を得意としている弁護士事務所に相談してみましょう。

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最後に|自己破産の手続を依頼する弁護士に相談を!

自己破産の手続は、債務者自身がおこなうこともできますが、弁護士に一任することもできます。

弁護士に相談・依頼することで、不備が生じるリスクを減らせたり、管財事件になった場合でも少額管財で対応できたりします。

また、自己破産が適しているのか判断してもらええるほか、債権者に取立てをやめるよう受任通知を送付してもらうことも可能です。

さまざまなメリットが期待できるため、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者
札幌パシフィック法律事務所
佐々木光嗣 (札幌弁護士会)
2018年2月に札幌パシフィック法律事務所を設立。スタッフも一丸となり「身近なリーガルパートナー」として迅速な問題解決を目指す。
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本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。