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個人事業主の破産は同時廃止になりにくい|理由を徹底解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
個人事業主の破産は同時廃止になりにくい|理由を徹底解説
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個人事業主が経営不振に陥り、やむを得ず自己破産する場合、基本的に同時破産ではなく管財事件になります。

ただ、管財事件より同時廃止事件の方が費用と時間が抑えられることが見込まれます。そのため、破産申立人としては、同時廃止事件になる方が望ましいと言えます。

この記事では、何故管財事件になってしまうのか、など個人事業主の自己破産についてご紹介します。

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個人事業主の破産は同時廃止になりにくい

同時廃止」と「管財事件」の2つは、破産者の財産を換価・配当するための「破産管財人」が選任されるか否か、という点が大きな違いです。

ここでは、同時廃止になりにくい理由とともに、同時廃止になるケースについてご紹介します。

同時廃止になりにくい理由

なぜ、個人事業主の自己破産は同時廃止事件になりにくいのでしょうか。それには、破産管財人の役割が大きく関わってきます。

破産管財人は主に、破産者の財産や破産へと至る経緯、免責不許可事由の調査や利害関係者の調査などを行います。

そのため、破産管財人を選任するための財産が無いほど経済的に困窮していることや、免責不許可事由に該当しないことが明らかである場合には、裁判所は基本的に同時廃止を選択します。

個人事業者の場合、事業者としてさまざまな財産や権利を有していることが多いため、破産管財人による詳細な調査が必要です。そのため、原則として破産管財人が関与する「管財事件」として破産手続きが進行することになります。

個人事業主の破産が同時廃止になるケース

ただし、個人事業主の破産の全てが管財事件となるわけではありません。個人事業者の場合であっても裁判所の判断で同時廃止事件となることもあります。

例えば、アフィリエイトサイトの経営など在庫もなく、かつ取引関係も単純であるような場合は、破産管財人による調査を行う必要が少ないため、同時廃止が認められる可能性があります。

ただ、法律に詳しくない方にとっては、自分の事業が同時廃止となるかどうか判断することは容易ではありません。法律の専門家に相談し、適切なアドバイスを求める事が大切です。

個人事業主の自己破産にかかる期間と費用

実際に個人事業主が自己破産を選択した時にかかる費用や時間について説明します。

個人事業主の自己破産にかかる期間

同時廃止事件であれば破産手続きは3ヶ月前後と比較的短期で終了します。他方、管財事件の場合は権利関係の調査や財産関連の調査がより厳密に行われますので、半年以上と比較的長い期間がかかります

また、管財事件の場合、財産の分配や利害関係者の意見を聞く「債権者集会()」も開かれますので、やはり時間がかかります。

用語解説
債権者集会(さいけんしゃしゅうかい)
債権者集会とは、債権者(貸金業者などお金を貸している側)に対し、破産手続きに関する情報を開示したり、財産の配分を決めたりする集会です。裁判官と管財人の立会のもと、裁判所で行われます。

個人事業主の自己破産に必要な費用

自己破産の申立を行うためには、さまざまな費用が必要になってきます。この裁判所に納める費用の事を「予納金」と呼びます。

予納金において代表的なものは以下4つです。

  1. 収入印紙
  2. 郵便切手費用
  3. 官報掲載費用
  4. 管財費用

② ③に関しては、数千円程度なので特に問題にはなりませんが、注意しなくてはならないのが、破産管財人の報酬となる④の「管財費用」です。

この管財費用は、管財事件の際に必要となる費用であり、その金額は負債額(借金残高)によって異なります。

以下では、法人として自己破産を申し立てた場合の費用と個人として申し立てた場合の費用の目安を示します。

なお、現在では弁護士を通して自己破産を行うことで「少額管財」と呼ばれる申し立てが多くの裁判所で認められるため、最低20万円あれば、申し立てを行うことができます

法人として申立てた場合の管財費用(東京地裁のケース)

  • 負債総額5,000万円未満・・・70万円
  • 5,000万~1億円未満・・・100万円
  • 1~5億円未満・・・200万円
  • 5~10億円未満・・・300万円 

個人として申立てた場合の管財費用(東京地裁のケース)

  • 負債総額5000万円未満・・・50万円
  • 5,000万~1億円未満・・・80万円
  • 1~5億円未満・・・150万円
  • 5~10億円未満・・・250万円

弁護士に依頼した場合の弁護士費用

個人事業主が弁護士に依頼した場合、少額管財となるため、最低でも20万円の金額を裁判所に納めなければなりません。

それとは別に、弁護士に依頼する際に支払う「着手金」が必要になります。

着手金の金額は依頼する弁護士事務所や事業の規模、依頼内容によって異なりますが、30~60万円程度が相場だとされています。

相談すれば分割払いに応じてくれる弁護士事務所も多いので、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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破産中や破産後も事業を続けられるか?

個人事業者が自己破産を選択する上で最も気になる事が「事業の継続・存続」ではないでしょうか。

多くの個人事業者が苦労して事業を展開してきたはずであり、自分の事業が今後どうなるかについては最も関心が向く事項であると言えます。

結論から申し上げますと、破産管財人がほとんどの財産を処分してしまうため、最終的には事業を継続するのが困難となり廃業となるケースが多いです。

ただ、未完の仕事の扱いをはじめ、さまざまな疑問点はあるでしょう。以下では、破産中・破産後の事業の扱いについて説明します。

破産中は原則として事業は中断

破産手続き開始の決定が下されると、個人事業は停止するのが原則となります

そして、破産者が破産開始の時において有する一切の財産は、すべて破産財団に組み込まれることになります。(破産法第34条)

破産財団とは、「破産者の有する資産」と捉えていただいて構いません。破産財団の管理処分権は、破産管財人がすべて請け負うことになります。

破産が開始すると、破産者が有する事業のために使用する機械や設備などは一切使えなくなります。結果として、破産中に事業を行うことはできなくなります。

破産中に事業を継続できる2つのケース

例外的に、破産中に事業を継続できるケースが2つ存在します。

管財人の判断で裁判所から許可がおりた場合

例えば、破産開始の時点においていまだに終了していない業務や仕事があり、それを完成させた方が収益を得られるといったケースも想定されます。

破産法36条では、以下のように規定しています。

破産手続開始の決定がされた後であっても、破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することが出来る

引用:破産法36条

裁判所の許可が得られれば、破産者は、破産管財人の監督の下で、再び仕事に取り掛かることになります。

ただし、仕事の完成によって得られた収益は、破産財団へ組み入れることになります。

自由財産(20万円未満)内で事業を継続できる場合

破産手続きにおいては、原則としてほとんどの事業財産は破産管財人によって換価されます。

しかし、すべての財産が処分されてしまうと、その後の生活を続けていくことができません。

そのため、個人や個人事業主の自己破産においては、最低限度の生活を保障するための「自由財産」が認められています。

破産手続きが全て終了した後、機械や設備に頼らずその自由財産(20万円未満)で事業を運営することが可能であるならば、破産後であっても事業の継続は可能だと言えます。

破産後の事業継続は個人の自由

個人事業のケースでは、法人の場合と異なり事業自体は消滅しないため、破産後に事業を継続することは個人の自由とされています。

しかし、現実的には、事業を継続していくのは困難だと言えます。

例えば、破産すれば個人名がブラックリストに登録されてしまうため、新たに個人名義でお金を金融機関から借り入れることはできなくなり、資金繰りが難しくなります。

加えて、破産後は最低限の生活を保障するための自由財産しか認められていません。少ない資金の中で事業を継続するのはかなり困難だと言えるでしょう。

まとめ

通常の破産手続きと異なり、個人事業主は多くの財産やさまざまな利害関係人との関係を持っているため、それを調査するためにも破産管財人が選任されます。

そのため、個人事業主が事業破産を行う際は、多くの場合「同時廃止事件」ではなく「管財事件」の扱いとなります。

個人事業主の場合、破産終了後も事業は消滅しないものの、継続するのが難しいという点もよく理解しておきましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。