自己破産するための条件|免責不許可事由も併せてチェック
背負った借金を整理することを「債務整理」と言います。債務整理にはいくつかの方法がありますが、そのなかでも「自己破産」は借金をリセットするための最終手段として知られています。
自己破産は、財産が没収され、一定の職種への就業制限がかかるなど、デメリットが大きいですが、「借金で首が回らない」という人にとっては、人生の再スタートを切るための選択肢となり得ます。
ただし、自己破産をするためには、一定の条件があります。思い立ったら誰でもすぐに借金を帳消しにできる、というものではありません。
この記事では、自己破産するための条件をご紹介します。
自己破産をご検討中の方へ | |
現在収入がない、返済できる見通しが立たない人は、できるだけ早い段階で自己破産に詳しい弁護士や司法書士といった借金問題の解決が得意な専門家に依頼することが解決への近道です。 弁護士・司法書士へ依頼することで、以下のようなメリットがあります。
自己破産は再スタートのきっかけです。ひとりで悩まず、まずは相談してみましょう。 |
自己破産は借金問題解決の最終手段
自己破産は、借金などの債務が超過し、支払いが不能となった場合に、裁判所に申し立て、裁判所の手続で一定範囲を除く自己の財産をすべて処分し、裁判所の許可により債務を免責してもらうこと(免責手続き)を言います。
破産手続きは、『債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ること』を目的としています(破産法1条)。
自分で負っている債務を自力で処理することができなくなった場合に、一度借金問題をリセットして、新たに社会生活をスタートすることができる手続きです。そのため、自己破産は借金問題解決の最終手段といわれています。
自己破産の条件
自己破産の条件には、以下のものがあります。
支払不能状態
債務者が破産を申し立てて、裁判所に破産手続き開始を決定(許可)してもらうためには、債務者が「支払不能状態」にあることが条件となります(破産法16条1項)。
「支払不能」とは、債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にある(支払い期限を経過している)ものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます(破産法2条11号)。
具体的には、以下の5つの要素を考慮して判断されると考えられています。
債務を弁済する能力の欠如があるか
支払不能といえるためには、そもそも債務者に借金などを支払う能力があるのかどうかを判断します。具体的には、資産があるか、信用があるか、労働力があるか、などから判断されます。
債務を弁済する能力の欠如が継続していること
上記の借金などを支払う能力が欠けている状態が、一時的なものでなく、継続しているのかどうかを判断します。
即時に弁済すべき債務があること
借金の支払い期限がすでに過ぎているかなど、現に支払う必要がある債務があるのかどうかが問題となります。
一般的な弁済不能
特定の借金のみが返済されていないだけではなく、支払い期限が来ている債務の全部または大部分を順調に弁済できない状態にあることが条件です。
客観的な経済状態の悪化
経済状態が客観的に見て悪化していることが条件です。
債務者が支払いを停止したときは、「支払不能」にあるものと推定されます(破産法16条2項)。
免責不許可事由
免責手続きは、破産手続きとは別個の手続きです。裁判所に免責許可を決定してもらうためには、免責申し立てが必要です(破産法248条4項)。
裁判所は、免責を許可することが相当でないとする法定の事由がある場合には、免責を不許可とする決定をします。この事由のことを免責不許可事由といいます(破産法252条)。
不許可事由には、例えば以下のものがあります。
- 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
- 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
- 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
- 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
- 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
- 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
- 虚偽の債権者名簿を提出したこと。
- 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
- 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
これらの不許可事由の多くは、破産手続きを不当な方法で潜脱したり、妨害したり、違法な行為を行ったりした場合のための規程です。
もっとも、裁判所はこれらの不許可事由がなければ許可する旨を定め、不許可事由があっても「一定程度の誠実性」が認められるときは「裁量免責」することができます(破産法252条2項)。
ギャンブルの借金でも自己破産できる?
ギャンブルによる借金の場合でも、自己破産は可能です。
ただし、破産法第252条1項4号が定める『浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと』という免責不許可事由にあたるため、必ずしも免責されるわけではありません。
一定程度の誠実性が認められれば、裁量免責される可能性があります。
自己破産の種類
自己破産には、「同時廃止事件」と「破産管財人事件」があります。
同時廃止事件
同時廃止事件とは、破産開始決定と破産事件の終了を同時に行うことです。
『裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない』と定められています(破産法216条1項)。
破産管財人事件
破産管財人事件は、破産者の持つ財産を破産管財人が調査(破産法79条・83条)、評価(破産法153条)、現金に換価し、債権者に分配します(破産法193条・194条)。
自己破産しても払う必要があるお金
自己破産しても、すべての借金などの債務が免責されるわけではありません。
自己破産にかかる費用
自己破産にかかる費用には、以下のものがあります。
- 官報公告掲載費用:現金1万584円
- 破産手続開始・免責許可申立手続費用:収入印紙1,500円
- 各書類発送費用:切手代
また、破産管財人事件の場合には、破産管財人の選出などの費用もかかるため、より高額になります。
弁護士費用
破産手続きを弁護士に依頼する場合には、その分の弁護士費用がかかります。
非免責債権
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、原則として、すべての債権の責任を免れます。
ただし、一部の債権については、公平の観点から免責されません。この債権のことを非免責債権といいます。非免責債権には、例えば以下のものがあります(破産法253条)。
- 租税等の請求権
- 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 夫婦間の協力及び扶助の義務
- 婚姻から生ずる費用の分担の義務
- 子の監護に関する義務
- 扶養の義務
- 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
- 罰金等の請求権
弁護士などの専門家に相談することが重要
債務超過の場合に検討すべきなのは、破産手続きだけではありません。ほかの手続きも選択肢に入れて考慮すべきです。
もっとも、破産を検討している場合には、弁護士への相談料の捻出が難しい場合があります。それでも、弁護士に相談できる方法があります。
無料相談可能な事務所
弁護士事務所によっては、初回無料で相談を受け付けているところもあります。インターネットなどで検索して、近くに無料相談が可能な弁護士事務所がないか、探してみましょう。
法テラス
法テラスとは、国が設置した法的トラブル解決のための総合案内所です。一定の条件を満たせば、誰でも無料で法律相談をすることができます。
参考:法テラス
まとめ|自己破産が認められない場合はほかの手段も検討
ケースによっては、自己破産が認められなかったり、自己破産が認められても免責が認められなかったりすることがあります。
しかし、このような場合であっても、民事再生手続きや小規模個人再生、給与所得者再生など、ほかの倒産手続が認められる場合があります。法律の専門家である弁護士と相談して、さまざまな手段を検討することが重要です。
【最短30秒】ユーザーアンケートに回答する |
|
【請求・取立て・支払いをSTOP】住宅ローンが家計を圧迫/支払いの催促が来た/借金が増え続けている/自宅を失いたくない/収入減で返済できない◆借金トラブルの実績豊富な弁護士にお任せを◆分割払い◎電話相談可◆法テラス利用可
事務所詳細を見る【自己破産/法人破産】【相談実績約10,000件】【秘密厳守の法律相談/初回相談無料】【借金総額200万円以上の方】返済義務を無くしたい・自己破産を迷っている方、ご相談下さい。経験豊富な弁護士がお力となります
事務所詳細を見る【秘密厳守の法律相談/初回相談無料】【分割払いOK】【借金総額200万円以上の方へ】毎月返済がつらい方、自己破産を迷っている方、ご相談下さい。1万件以上の破産・再生事件を担当した弁護士が味方になります。
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡
いつ起きるかわからない法的トラブル。弁護士費用の準備はできていますか?
答えがNoの方、ベンナビ弁護士保険が役立ちます。
弁護士への依頼費用は数十万~数百万円かかりますが、ベンナビ弁護士保険(月2,950円)に加入しておくことで、弁護士費用の補償が受けられます。
- 保険料は1日あたり約96円
- 通算支払限度額1,000万円
- 追加保険料0円で家族も補償
補償対象となる家族が5人の場合、1人あたりの保険料は月590円(2,950円÷5人)。労働問題、ネット誹謗中傷、近隣トラブルなど様々な法的トラブルに対応しています。
補償内容、付帯サービスをまとめた資料の請求はWEBから。
弁護士保険で法律トラブルに備える
自己破産に関する新着コラム
-
自己破産によって差し押さえられない年金の種類と、差し押さえられるケースはどのようなものかについて解説していきます。基本的に自己破産によって年金が差し...
-
自己破産をすると、基本的に車は回収されます。しかし車の時価や財産状況などによっては、車を手元に残せる可能性もあります。自己破産をしても車は手元に残し...
-
自己破産は、借金問題を解決するための有力な選択肢です。自己破産による影響について正しい知識を備え、自己破産すべきかどうかを適切に判断しましょう。本記...
-
自己破産と任意整理は、いずれも借金などの負担を解消・軽減できる「債務整理」の代表的な手法です。本記事では、自己破産と任意整理の違いや、債務整理手続き...
-
不景気といわれている現代でも、住宅ローンを組まれる家庭は多くいらっしゃいます。住宅ローンは、何十年の長い期間で返済する高額なローンのため、少しでも返...
-
カード破産の無料相談先をご紹介します。また、カード破産以外の方法で借金問題を解決する方法や弁護士に依頼した場合の流れも併せて解説します。
-
仮想通貨取引で巨額の借金を抱えた場合、借金を理由に破産することはできるのでしょうか?この記事では、仮想通貨で破産をするシチュエーションをご紹介した上...
-
自己破産後でも事業再建や企業のために融資は必要不可欠でしょう。では自己破産者に融資をしてくれる機関はあるのでしょうか?この記事では自己破産者にも融資...
-
自己破産には借金返済が免除されるメリットだけではなく、手続きに時間がかかる・一定額以上の財産を手放さなければならないなどのデメリットがあります。本記...
-
自己破産を検討している場合、依頼できる専門家には司法書士と弁護士がいます。どちらも法律の専門家ですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。本記...
自己破産に関する人気コラム
-
自己破産を検討されている方にとっては、破産後の生活は気になるところでしょう。この記事では、自己破産後に受ける制限や、生活を良くするために考えておきた...
-
自己破産には借金返済が免除されるメリットだけではなく、手続きに時間がかかる・一定額以上の財産を手放さなければならないなどのデメリットがあります。本記...
-
廃課金とは、廃人と課金を合わせたネットスラングで、一般的に収入に見合わない金額を課金する人を指します。本記事では廃課金の定義や課金してしまう人の特徴...
-
自己破産では裁判所に支払う費用のほか、弁護士に依頼する場合は弁護士費用もかかります。状況により費用は異なり、弁護士費用は後払い可能な場合もあります。...
-
自己破産は、全ての借金の支払い義務を逃れ、所持する高価な財産を処分する法的手続きであり、生活をゼロから再建するための最終手段です。本記事では自己破産...
-
ブラックリストに掲載される期間はどの程度なのでしょうか。 よく、「ブラックリストに載るとカードが作れない」などという話を聞きますが、そもそもブラック...
-
結論からいいますと、借金がある状態でも生活保護を受けることができます。そこで、生活保護と借金の関係を深堀していきたいと思います。
-
破産宣告(はさんせんこく)とは何かを解説!手続きの流れや条件、かかる費用に加えて、自己破産を最短で進める為の方法をご紹介していきます。自己破産にはデ...
-
自己破産をする上で、破産管財人(はさんかんざいにん)が何をするのか、どのような人なのかを知っておくことで、免責を受けられる可能性が高まります。この記...
-
奨学金を借りたはいいものの、就職後も返済が厳しく破産に追い込まれる件数は1万件にのぼっています。ただし、破産にはリスクがあり、あなたの借金が免除され...
自己破産の関連コラム
-
自己破産は、全ての借金の支払い義務を逃れ、所持する高価な財産を処分する法的手続きであり、生活をゼロから再建するための最終手段です。本記事では自己破産...
-
無職の人が債務整理をおこなう場合、任意整理ではなく自己破産などを選択するのが通常です。本記事では、無職の人が任意整理を原則的にできない理由と、例外的...
-
自己破産後に住宅ローンの審査に通過する方法と審査条件が厳しくない住宅ローンの特徴をご紹介します。また、持ち家のある状態で自己破産する方へ向けた対処方...
-
自己破産は、破産手続きの開始決定、免責の決定を受けることにより、債務者の負っている借金を免除してもらう制度です。一定期間の資格制限やブラックリストへ...
-
借金50万円を「甘く」「軽く」考えないでください。今すでに返済に困っていれば、すぐに膨れ上がります。借金50万円を無理なく確実に返済する方法を紹介し...
-
自己破産を検討している人のなかには、「借金額がいくらであれば自己破産できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。しかし、自己破産の手続が...
-
カード破産とは、クレジットカードを使いすぎたことで利用代金を支払うことが困難となり、自己破産に陥る状況を指します。本記事では、カード破産後に設けられ...
-
不景気といわれている現代でも、住宅ローンを組まれる家庭は多くいらっしゃいます。住宅ローンは、何十年の長い期間で返済する高額なローンのため、少しでも返...
-
自己破産はデメリットも大きいですが、「借金で首が回らない」という人にとっては、人生の再スタートを切るための選択肢となり得ます。ただし、自己破産をする...
-
個人事業主の破産は基本的に同時廃止ではなく、管財事件になります。ただし、条件を満たしていれば、同時廃止で自己破産することも可能です。この記事では、同...
-
自己破産は、借金問題を解決するための有力な選択肢です。自己破産による影響について正しい知識を備え、自己破産すべきかどうかを適切に判断しましょう。本記...
-
基本的に自己破産をしたからと言って就職に不利になるようなことはありません。この記事ではすでに務めている会社がある場合など、自己破産と仕事の関係性につ...
弁護士・司法書士があなたの借金返済をサポート
債務整理では、債権者と交渉する任意整理や法的に借金を減額する、個人再生や自己破産などがあります。また、過去の過払い金がある方は、過払い請求を行うことも可能です。
ただ、どれもある程度の法的な知識や交渉力が必要になってきます。債務整理をしたくてもなかなか踏み切れないあなたをベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)の弁護士・司法書士がサポートいたします。
自己破産をもっと知りたいあなたに