債務整理ができる条件とは?妥当な債務整理方法も診断
債務整理には任意整理や個人再生、自己破産などがありますが、それぞれメリット・デメリット、利用条件などが異なります。
この記事では、債務整理の種類とそれぞれのメリット・デメリットから、各債務整理が行える条件や不認可になるケース、債務整理を選択する基準、債務整理後に債務を払えなくなった場合の対処法までご説明しています。ご自身が行うべき債務整理を知りたい方はぜひご一読ください。
債務整理の種類と効果
債務整理の種類は4つ
まず、債務整理の種類と効果を押さえておきましょう。主な債務整理の方法として、任意整理、個人再生、自己破産の3種類が挙げられます。個人再生と自己破産については、それぞれさらに2種類に分けられます。
個人再生と自己破産の種類に関しての詳細は、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
過払い金請求を司法書士に依頼するデメリットや弁護士との違いを解説
債務整理の各方法の主なメリット・デメリットを下表にまとめました。
各債務整理のメリット・デメリット
※1 住宅ローン特則は、住宅ローンの返済を延期することで、従来通り住宅を所有できる制度です。
※2 官報には、氏名・住所・破産日・破産理由などが記載されます。しかし、官報を読む人は限られているため、官報に個人情報が掲載されたからといって、自己破産をしたことが周知されるリスクは小さいと言えます。
各債務整理の条件・不認可になる場合
それぞれの債務整理が行える条件は、下表の通りです。
過払い金請求の条件ついては、下記の記事でご覧ください。
【関連記事】過払い金の対象者とは|可能性が高い条件8つ・時効など対象外のケースを解説
各債務整理が行える条件
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①任意整理 |
②個人再生 |
③自己破産 |
利用条件 |
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①任意整理
任意整理の条件は法律で定められているわけではありませんが、任意整理をした後も残債務(例えば債務元本額)について継続的な返済をできる見込みがあることが必須条件と言えます。そうでない限り、相手業者が交渉に応じないためです。
②個人再生
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者再生の2種類があります。小規模個人再生の条件は、上表中の個人再生の利用条件と同じです。一方で、給与所得者再生には、下記の条件が加わります。
- 給与などの定期的な収入を得られる見込みがあること
- その収入の変動が小さいと見込まれること
給料が歩合制で変動が激しい場合などは、小規模個人再生の利用を判断される可能性があります。
③自己破産
自己破産の条件の1つである、「収入や財産が不十分で、債務の返済が困難である」とは、収入に対して債務が過大な場合や、生活保護を受けており返済に回す減資を確保できない場合、債務の返済に3年以上かかることが見込まれる場合を指します。
自己破産の条件の2つ目、「免責不認可事由」に関して、裁判所は以下のとおり定めています。
免責不可事由に該当するケース
- 破産手続や免責手続において虚偽の説明・陳述をした
- 浪費やギャンブルによって負債を増やした
- クレジットで購入した商品をすぐに換金して負債を増やした
- 財産の隠蔽や、財産の価値を減少させるような行為をした
- 支払能力について、債権者を欺いた
- 過去7年以内に確定した免責許可決定を受けている
ただし、上記の免責不認可事由に該当しても、その程度が重大でない場合は、裁判所の裁量により免責を許可されることが多いと言えます。
債務整理が不認可になる場合
上記の各債務整理が行える条件を満たしていても、実際には任意整理や法的整理手続きが困難となるような場合があります。
任意整理が困難なケース
- 利息免除しても3~5年間で完済できない場合
- 返済額が極端に少ない場合
- 過去に同じ債務者の任意整理に応じたことがある場合
- 上記のほか何らかの理由で債権者が交渉に応じない場合
下記の記事で、任意整理が困難になるケースについて詳述しています。
【関連記事】任意整理できない原因5つ|うまくいかなかった場合の対処法3つも解説
個人再生手続きが困難となるケース
- 申請時や再生計画案などの書類に不備があり是正も困難である場合
- 再生計画の返済総額が最低弁済額を満たしていない場合
- 再生計画の実行が難しいと裁判所や債権者に判断される場合
- 再生計画案における不正行為が認められ、是正も困難である場合
- 借金の総額が5,000万円を越えている場合
下記の記事で、個人再生が困難になるのを避ける方法について詳述しています。
【関連記事】個人再生が不認可にならないために必要な3つのこと
自己破産が困難となるケース
上記「各債務整理が行える条件」で既述した通り、免責不認可事由に該当していると自己破産しても免責がされない可能性が否定できません。
そのほかに自己破産が困難となるケースとして、以下があります。
- 裁判所から支払い不能と認められなかった場合
- 予納金が納められなかった場合
下記の記事で、自己破産が困難となるケースについて詳述しています。
【関連記事】自己破産できない11の失敗例|成功させるための条件と行動とは
スムーズな処理には弁護士への依頼がおすすすめ
債務整理をスムーズに行う方法として、弁護士への依頼があります。弁護士に依頼すると、債権者との交渉や、手続きをすべて代行してもらえるからです。
個人で債務整理を行うと、債権者に取り合ってもらえなかったり、手続きに不備が出たりして、債務整理に失敗する恐れがあるので、おすすめしません。
債務整理を成功させたいならば、弁護士に依頼して手続きを代行してもらったほうが得策です。
こんな場合も債務整理できる?
過払い金請求を行っている場合
債務整理を行えます。
延滞している支払いがある場合
債務整理を行えます。支払いを延滞するほど貧窮しているのであれば、弁護士や司法書士といった専門家にすみやかに相談しましょう。
住宅や車を残したい場合
任意整理では、住宅ローンや車のローンを避けて債務整理をすれば、住宅も車も残せます。個人再生でも『住宅ローン特則』を利用することで、住宅を残すことができます。住宅ローン特則に関しては、下記の記事で詳述しています。
【関連記事】個人再生の住宅資金特別条項とは?ローンのある家を残す方法
連帯保証人に迷惑をかけたくない
任意整理では、連帯保証人の付いている債務を避けることで、連帯保証人に影響を与えずに済みます。ただし、個人再生や破産手続きを行うと、債務の請求が連帯保証人に行きます。
現在定職に就いていない
任意整理と自己破産は、無職でも行うことができます。無職で収入がないならば、自己破産が適していると考えられます。個人再生に関しては、将来的・継続的に収入を得られる見込みがあることが条件とされています。
弁護士費用が払えない
法テラスの『民事法律扶助制度』を利用すれば、弁護士費用を立て替えてもらうことができます。弁護士費用を安く済ませる方法もあります。詳しくは下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
自己破産の弁護士費用の相場は?払えない場合は分割・後払いが可能
生活保護を受けている
生活保護を受けていても、債務整理を行うことができます。ただ、生活保護を受けるほど貧窮しているのであれば、自己破産をするのがよいでしょう。
周りに知られたくない
弁護士に依頼すれば、債権者からの連絡や郵送物は弁護士に届くため、債務整理を行っていることが周囲に知られにくいと考えられます。
どの債務整理が適しているか
ご自身に合った債務整理がわからない場合は、以下のチャート図や債務整理の選択基準をご参考ください。
あなたにおすすめの債務整理を診断
以下のチャート図を使用すると、ご自身に適した債務整理を簡単に診断できます。しかし、診断結果はあくまでも参考ですので、必ず弁護士や司法書士に相談してから債務整理を選択してください。
過払い金の有無について
過払い金がある場合は、引き直し計算(過去に支払った利息を現在の利率で計算し、払い過ぎた利息を算出すること)を行い、過払い金額と現在の債務額を比較してみましょう。
引き直し計算の方法については、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】過払い金の計算方法|自分でできる引き直しのシミュレーション付き
安定した収入について
安定した収入の基準には個人差がありますが、定職に就いており、月々の債務を返済しながら生活を送れることが、1つの基準です。債務額や収入は債務者により千差万別なので、ご自身の債務額と収入額を計算することで『安定した収入』があるかないかを判断しましょう。
弁護士や司法書士にご自身の収入と債務について伝えた上で、どの債務整理を行うか決めてください。
その他債務整理の選択基準
利息免除すれば3年以内に完済できる方は任意整理
『将来利息を免除すれば借金を3年以内に完済できる人』、『簡易的な手続きで済ませたい人』、『保証人に迷惑をかけたくない人』は、任意整理が適しています。
《例》
月収25万円、借金総額108万円(月の返済額3万円×3年)
月収40万円、借金総額216万円(月の返済額6万円×3年)
自宅を残したい場合は個人再生
任意再生で利息免除しても3年以内に借金を完済できないけれども、持ち家を残したいという人は、個人再生が適しているでしょう。
個人再生では、『住宅ローン特則』を利用すれば、従来どおり住居を所有しながら住宅ローンの返済を延期し、債務整理を行えます。
ただし、住宅ローンが減額されることは基本的にありません。また、住宅ローン特則を利用するには、口座が凍結されていない、住宅ローンの返済を延滞していない、などの条件をクリアしている必要があります。ただし、個人再生は手続き後に減額後の借金を返済する必要があるので、安定した収入(目安:3年以内で大体100万円~500万円の借金が返済できる経済力)が求められます。
任意整理でも住宅を残せますが、その場合は住宅ローンを任意整理の対象から外さなくてはいけないため、住宅ローンは通常の方法で返済していく必要があります。
利息免除しても完済できなければ自己破産
持ち家がなく、将来利息を免除しても3年以内に完済できないといった場合は、自己破産が適しているでしょう。
《例》
月収18万円、借金500万円
月収25万円、借金700万円
借金の総額が5,000万円以上
また、自己破産以外の債務整理では、手続き後に残りの借金を完済しなければなりません。そのため、『生活保護の受給者』や『無職の方』が借金を整理する場合も、自己破産を選択することになります。
途中でほかの債務整理への変更も可能
債務整理は、任意整理から法的整理に移行することもできますし、法的整理手続き(個人再生手続き)の途中に別の法的整理手続き(破産手続き)に移行することも可能です。
ただ、法的整理手続きの切替えには、新規に行う法的整理手続きの条件を満たしている必要があります。もっとも、債務整理で切り替えを行う際は、手間と費用がかかる可能性もあるため、最初に無理のない返済計画を立てて、ご自身に合った債務整理を選択することが重要です。
債務の返済ができなくなった場合の救済措置
任意整理や個人再生を行った後に、やむを得ない理由で債務を返済できなくなった場合は、まず弁護士や司法書士、債権者に相談をしましょう。返済を延期するなどの救済措置を取ってもらったり、別の債務整理に切り替えたりするなど、救済措置を取ってもらえます。
まとめ
債務整理は、その種類によって利用の条件やメリット・デメリットが異なります。収入と債務額のバランスを考え、ご自身に合った債務整理を選択することが肝要です。
債務整理を選択する際は、ご自身の独断によって決めるのではなく、弁護士や司法書士とよく話し合った上で行うほうが、失敗するリスクを激減できます。
依頼費はかかりますが、債務整理の依頼費用はそれほど高額ではありませんし、法テラスの立て替え制度を利用したり依頼費を安く済ませる工夫をしたりすることも可能です。
まずは、弁護士や司法書士に相談して、方針を決めましょう。
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