自己破産者が必ず知っておくべき自己破産後の全知識
- 自己破産者は破産後、官報に名前と住所が載る
- 自己破産をするとブラックリストに載る
- 自己破産は免責許可がおりないと借金がゼロにならない(必ずしも借金がゼロになるわけではない)
- 自己破産後でも、支払いの義務が残ってしまう非免責債権というものがある
自己破産後どうなるか 気になっている方へ |
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自己破産した後は悲惨な生活が待っているのではないか…など、世間のイメージは悪いですが、実際は大きなギャップがあり、苦しみの原因であった借金問題を克服しつつ、不自由のない生活を送っている方もいます。 当記事内「自己破産をした方の体験談」を読めば、自己破産後は具体的にどのような感じなのかがリアルに伝わってくるので、無駄な心配を解消できます。 また、自己破産する際に弁護士・司法書士へ依頼することは、以下のようなメリットがあります。
自己破産は再スタートのきっかけです。ひとりで悩まず、まずは相談してみましょう。 |
【関連記事】自己破産したらどうなる?デメリットや費用・条件を弁護士がわかりやすく解説
自己破産をした当事者への影響
まずは自己破産をした当事者に起こる影響について解説します。
個人信用情報機関へ事故情報が登録される(ブラックリストとして登録される)
信用情報機関に自己破産者に関する事故情報が登録されます(いわゆるブラックとして登録されてしまいます)。銀行、クレジットカード会社、消費者金融などの金融機関はこの情報を閲覧して取引相手の信用力を確認します。そのため、ブラックリストに登録されると信用力が低いと評価され、金融機関との新規取引は困難となります。
例えば、ネガティブな情報が抹消されるまでの期間(信用情報機関によって異なります。㈱シー・アイ・シー(CIC)、㈱日本信用情報機構(JICC)は5年、全国銀行個人信用情報センター(JBA)は10年です。)は、新規でお金を借り入れたり、クレジットカードを新規発行したり、携帯電話を割賦払いで購入することなどは困難となります。クレジットカード会社によっては審査の際にJBAの情報を照会しない場合もあるため、5年経過後であればクレジットカード発行の審査に通る可能性もあります。
破産者名簿と官報に掲載される
かつては、自己破産をすると、自己破産者の本籍地の市区町村役場の破産者名簿に記載されました。しかし平成17年の破産法の改正により、破産手続開始決定の後に免責許可決定がなされない場合にのみ、裁判所から本籍地の市町村役場に通知されることとなりました。そのため、現在は自己破産をすると必ず破産者名簿に掲載されるということはなく、免責許可の決定がなされなかった場合にのみ破産者名簿に掲載されます。いずれにせよ破産者名簿は第三者が勝手に見ることはできませんので、破産者名簿を通じて第三者に破産したことが知られることはありません。
また、破産手続開始決定後は官報という国が発行している新聞に掲載されますが、一般人が官報を定期的にチェックしていることは通常ありませんので、官報を通じて破産したことを知られる可能性も事実上低いといえます。
破産者マップとは
- 破産者マップ
- 破産者マップとは、自己破産した人の情報をGoogleマップ上で確認できるサイトのことをいいます。自己破産者の氏名・住所・破産手続日等についてGoogleマップ上のピンをクリックすることで、自己破産者の情報を確認することができるものでした。 ただし、破産者マップへは削除申請が殺到し批判も高まったことから、現在サイトは削除されました。破産者マップ2等の類似サイトも登場しましたが、削除されています。 そのため、現在自己破産情報を閲覧できるサイトはありませんので安心してください。
99万円以下の現金と時価20万円以下の財産以外は換価される
自己破産手続きが管財事件となる場合には債務者財産の大部分は換価されて債権者に分配されます。例えば、換価処分の対象となる財産には以下のようなものがあります。
一定額を超える現金
破産法上は99万円を超える現金は破産財団に組み込まれて債権者への配当に回されます。
20万円を超える預貯金
東京地裁の基準では20万円を超える預貯金は破産財団に組み込まれて債権者への配当に回されます。
20万円を超える解約返戻金が見込める保険契約
東京地裁の基準では、保険契約を解約した場合の解約返戻金の合計額が20万円を超える場合は破産財団に組み込まれて破産者への配当に回されます。
20万円を超える価値があると査定された自動車
東京地裁の基準では市場価値が20万円を超える自動車は破産財団に組み込まれて換価処分され、破産者への配当に回されます。
破産者名義の土地・建物
破産者名義の不動産は破産財団に組み込まれ、換価処分されて破産債権者への配当に回されます。ただ、不動産に抵当権が付いており、担保される債務の額が不動産価格を超える場合(オーバーローンの場合)、換価処分対象とならないこともあります。
例えば、東京地裁の基準では、不動産が担保する債務の額が担保不動産の換金価値の1.5倍以上ある場合は換価処分対象とされないようです。もっとも、この場合、抵当権者が担保権を実行する可能性が高く、結局は不動産の権利を失う可能性があります。 なお新しい所有者が現れるまでは住宅に住み続けることはできますので、その間に引っ越し先を探すことになるでしょう。
退職金に一定の利率を掛けた金額が20万円を超える場合
退職金が将来的に支給されることが予定されている場合、東京地裁では破産申立時退職金見込額の8分の1に相当する金額は破産財団として配当原資とされます。
ただし、その額が20万円以下であればその全部が自由財産となり破産財団に組み入れられることはありません。
なお東京地方裁判所以外の裁判所における上記財産等の運用基準について知りたい方は、各地の専門家の方々に確認、相談されることをおすすめします。
自己破産手続期間中は一部の職業・資格が制限される(制限されない職業もある)
制限される職業・資格
自己破産手続期間中は、下記のような一定の資格は制限されますので、その期間は当該資格に基づいて就業することはできません。
- 弁護士
- 質屋
- 古物商
- 会社の取締役
- 商工会議所会員
- 株式会社の取締役及び監査役
- 有限会社の取締役及び監査役
- 証券会社の外務員
- 旅行業者
- 宅地建物取引業者
- 中央卸売市場の卸売業者
- 建設業法に定める建設業者
- 生命保険の募集人
- 損害保険代理店
- 風俗営業及びその管理者
- 警備員 など
免責許可決定が確定して手続きが終了すれば、資格は回復します。
制限されない職業もある
上記の職業を除けば、基本的にどんな職業でも自己破産は可能となります。 そのため、会社従業員はもちろん上記に該当しない職業の方(例えば下記の職業の方)は、職業・資格が制限されません。
- 医師
- 教員
- 地方公務員
- 国家公務員
- 薬剤師
- 看護士
- 建築士
自己破産が理由で会社を解雇されることはない
自己破産をしたことが会社に知られてしまったとしても、会社が直ちに労働者を解雇できるわけではありませんし、その他不利益を与えることも許容されません。
なお、取締役については自己破産に伴い当然に地位を失う可能性があります(民法第653条第2号)。取締役は会社と委任契約の関係にあり、破産は委任契約の終了事由とされているためです。しかし、会社が取締役との委任契約を締結し直すことは自由です。
税金や罰金の支払いは免除されない
法律上、自己破産によっても免除されない債務があります。後述の非免責債権と呼ばれるものです(破産法253条1項)。
非免責債権には例えば税金や社会保険料の支払義務、刑事手続で科された罰金等、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務、破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償債務などがあります。
他の非免責債権については後述の通りです。具体的にどの支払いが免責の対象となるのか不安な方は専門家へご相談することをおすすめします。
自己破産手続き中は引っ越しや長期の旅行が制限される
ただし、これらの制限が課されるのは、自己破産のうち破産管財事件に該当する場合かつ手続き期間中の場合に限られます(破産法37条)。
そして、裁判所の許可を取ればどちらも可能となります。自己破産手続き中に海外旅行をしたとしても、パスポートに自己破産したということは記載されませんし、出入国審査に際しても過去に自己破産をしたことがあるか否かといったことを問われることもありません。
携帯端末やプロバイダ料金を滞納している場合、新たに契約しなおす必要がある
携帯端末代やプロバイダ料金を滞納しており、その料金を免責の対象とした場合には契約が解除されます。そのため、新たに契約しなおす必要があります。 なおあらたに契約する際にはクレジットカード払いができないため、デビットカードや銀行振替ができる会社を選ぶことになります。
自己破産をした人の家族や保証人・連帯保証人への影響
続いて自己破産者の家族や保証人・連帯保証人への影響について解説します。
保証人・連帯保証人は返済義務を負う
自己破産は、あくまでも申立人自身の支払い義務がなくなるだけで、連帯保証人の支払い義務は消えません。 自己破産をした場合、借金の返済義務は申立人から保証人・連帯保証人に返済義務が移り、借金を一括請求されます。
通知が届くタイミングは、主債務者が自己破産の申立てを行い、開始が決定された後です。 そして返済が滞ったり、主たる債務者が自己破産を行ったりすると「期限の利益」と呼ばれる権利を失うことになります。この期限の利益とは、借金を分割で支払って返済することができる権利だと捉えてもらって構いません。 その権利が喪失されるということなので、金融機関は連帯保証人に対し一括で残りを支払う様請求することが可能になるのです。
ただし、金融機関との交渉によっては、分割払いに応じてくれる余地もあることを覚えておいてください。 連帯保証人は通常の保証人とは異なり、「まず主債務者へ請求してくれ」と主張できる「催告の抗弁権」や、「主債務者の財産があるからそちらを調査した後に請求してくれ」と主張できる「検索の抗弁権」が存在しないため注意が必要になります。
保証人・連帯保証人ではない家族への影響は少ない
家族が保証人・連帯保証人でない場合、自己破産をした家族の借金を返済する義務はありません。 そのため、迷惑をかけないために離婚をしたほうがいいといった考えは必要ありません。
しかし、『自己破産をした当事者への影響』で解説した以下のような影響が家族にも及ぶことは考えられます。
- 家を失うことで引越しが必要になる
- 車を失う
- 家族の信用情報にも影響があり、家族もクレジットカードの審査に通らない
- 自己破産の当事者は保証人になれない
自己破産によくある誤解
自己破産によくある誤解について解説します。
自己破産者は必ずしも借金がゼロになるわけではない
自己破産手続を開始しただけでは破産者の債務は免除されません。破産者は自己破産手続きの中で裁判所から免責許可を受けることで債務が免除されます。
なお、破産開始決定と同時に免責許可がされて手続が終了する事件を同時廃止事件、破産開始決定後、破産管財人の下で清算処理が進められた後に免責許可がされて手続が終了する事件を異時廃止事件(管財事件)と呼びます。
- 破産手続き:債務者の資産の価値を算出し、債権者へ配当するための手続き
- 免責手続き:裁判所から借金免除の許可(免責)を貰うための手続き
免責にならないケース
以下の免責不許可事由に該当すると、借金が免除されないケースがあります。
- 意図的に財産を隠したり、不動産の名義を変えたりするなどの行為
- 換金行為(クレジットカードで購入した商品を現金に換える行為)
- 一部の債権者にだけ返済
- ギャンブルやショッピングなどの浪費
- 収入や負債額を偽り、借り入れを行った場合(破産申し立て前から1年以内)
- 債権者を故意に隠していた
- 裁判所への嘘の供述
- 過去の免責申し立てから7年経過していない
- 裁判所などが行う調査へ非協力的な行為
自己破産後に免責になる条件と対策については、以下の記事を参考にして下さい。
自己破産してから免責になるまでの流れ
自己破産の申立てから免責決定までは、平均すると半年程度で、早ければ3ヶ月程度で済むので、非常にスピーディーです。自己破産から実際に借金が帳消しになるまでの流れを以下で見てみましょう。
①自己破産の申し立て
必要な資料をそろえて、基本的に現住所を管轄する地方裁判所に申し立てを行います。尚、破産手続きの開始を申し立てれば、免責の申し立てがされたものとみなされます。
②破産審尋
破産の申し立てを行ってから、約1ヶ月後に裁判所に出頭し、破産理由を説明します。
③破産手続き開始決定|同時破産廃止決定
破産審尋の結果、破産の原因があると判断されれば、裁判所が破産手続きの開始を決定します。破産手続開始決定がされると官報に公告されます。同時廃止と判断された場合には、破産手続開始決定と同時に破産手続廃止決定がなされ、破産手続きは、開始と同時に終結します。
④免責審尋
破産手続が終了しても、まだ免責手続は終わっていません。裁判所が、免責を許可してもよいかどうかを調査する免責審尋を行います。
⑤免責の決定
免責審尋が終了した後、およそ10日以内に、裁判所から免責に関する決定が下されます。もし免責不許可となった場合、上級審で争うことはできます。ただし、そういうケースは稀です。 自己破産が得意な弁護士に相談していれば、免責不許可事由に該当するようなケースでも、よほどのことがない限り免責は認められます。
⑥免責の確定
免責許可が決定されると、官報に公告されます。自己破産の場合、官報に名前が掲載されるのは、破産手続開始決定後と免責許可決定後の2回です。その後2週間は、利害関係者が不服申し立てをすることができます。
何もなければ官報に掲載された翌日から2週間経過すると免責が確定します。
非免責債権は自己破産者でも支払いの義務がある
免責が許可されたとしても、非免責債権という債権については支払い義務が残ります。 法律上免責を与えることが適当でないとされる一定の債権は「非免責債権」と呼ばれ、免責許可決定後も債務者には支払う義務があるのです。
非免責債権には、下記のものがあります。
- 税金、保険料等の請求権
- 罰金等の請求権
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償
- 夫婦間の婚姻費用分担請求権
- 子に関する養育費請求権
- 従業員等の給料請求権
- 破産者が知りながら債権者一覧表に記載しなかった債権
税金の支払いが困難である場合は自己破産の旨を役所に伝えましょう。
分割で支払う方法など無理のない範囲で税金を支払うための方法を教えてくれます。税金の滞納分はそのままにしておくことが1番望ましくないことですので必ず役所に行って相談するようにしてください。
自己破産の体験談
ここではベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)編集部が自己破産した方へ行ったインタビューについてご紹介します。
自己破産して生活はどう変化したか、周りの反応はどうだったかなど、多くの方が気になっていることを話してもらいました。
奥さんに内緒で自己破産を行った方
この方は20代前半で収入が増えたことで身の丈に合わないお金の使い方をした結果借金を繰り返し、借金は600万円まで増えました。一旦は弁護士に相談し個人再生を行いましたが、それでも借金が増えたため個人再生から1年後に自己破産を行うことで人生を再スタートすることができました。最後まで奥さん含め誰にもバレることはなく債務整理手続きを行うことができました。
1,200万円を自己破産した主婦の方
この方は東日本大震災を契機に生活苦となり、家族に内緒でキャッシング機能を利用し続けた結果、借金が増え、さらに借金返済のための借金をするまでとなり借金総額が膨らみ続けました。家族に迷惑をかけられないという思いから専門家に相談し、自己破産することで人生を再スタートすることができました。自己破産による家族への影響もなく、裁判所の手続きも弁護士の助けもあり順当に進み、免責決定を得ることが出来ました。
法テラスを利用して20代で自己破産した方
この方は勤め先に恵まれずかつ薄給であったことから、リボ払いやキャッシングを繰り返し、借金が増えていきました。最終的に法テラスを利用することで弁護士に相談することができ、様々な手段を検討した結果自己破産を選択しました。書類作成が大変とのことでしたが、弁護士の助けもあり自己破産手続を進めることができました。現在は穏やかな日常を取り戻されております。
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