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借金がある人が過払い金について押さえるべき知識のまとめ

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
借金がある人が過払い金について押さえるべき知識のまとめ
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借金を抱えている人の中には、過払い金の発生者が多数、存在します。現在も過払い金の請求について関心が集まっていますが、過払い金によって借金の問題を解決できるのかどうか、気になっている人は多いです。では実際に過払い金が借金にどのような効果を与えるのでしょうか。

今回の記事では借金と過払い金との関係、過払い金を請求するために事前に抑えておくべき知識を紹介していきます。

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この記事に記載の情報は2023年11月22日時点のものです

借金に対して過払い金が与える効果

過払い金が借金に与える効果を知るためには、借入先への借金の残高と、その借入先へ発生している過払い金の額を比べなければいけません。それは借金に対する過払い金の額によって手続きが変わるためであり、過払い金の額が借金の残高を上回る時は過払い金請求、借金の残高を下回る時、過払い金発生による減額交渉を行うのが一般的です。

  • 過払い金≧借金⇒過払い金請求
  • 過払い金<借金⇒減額交渉

過払い金とは

そもそも過払い金とは、利息制限法によって定められた法定金利を超える金利の借入を行っていた人を対象に、本来支払うべきであった利息に対して払いすぎた余剰分の利息を表します。利息制限法では、10万円未満の借入に対して20%以下の金利、100円未満の借入に対しては18%以下の金利、100万円以上の借入に対しては15%以下の金利と定められており、賃金業者は利息制限法の範囲内で貸付を行わなければなりません。

借入残高 上限金利(年利)
・10万円未満 20%
・10万円~100万円未満 18%
・100万円~ 15%

過払い金の例として、25%の金利で8万円の借入、毎月1万円の返済をしていた場合の月々に発生する利息は以下の通りです。

  初月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月
利息 1666円 1493円 1315円 1134円 950円
借入残高 80000円 71666円 63159円 54475円 45610円

月々の利息の計算は借入残高×金利(0.25)÷12ヶ月にて算出することができ、この期間に発生した利息の総額は、6560円になります。本来、10万円未満の借入に対しては、20%以下の貸付を行わなければならないため、金利20%で計算をしなおすと以下の通りです。

  初月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月
利息 1333円 1188円 1042円 892円 740円
借入残高 80000円 71333円 62522円 53564円 44457円

この期間の間に発生した利息の総額は、5197円になるため、この場合における発生した過払い金の額は、1363円です。なお過払い金は、完済していない場合でも発生しております。

過払い金発生による借金の減額

先ほども申した通り、過払い金の額がその借入先への借金の残高を下回る場合、その借入先に対して過払い金発生による減額交渉を行うことが可能です。通常、減額交渉は、債務整理の一つでもある任意整理を通して、債権者と直接、交渉することで行われますが、任意整理については、「過払い金発生者が借金を減額する方法」にて詳しく説明しますので、ここでは詳しく説明はいたしません。

過払い金請求による過払い金の返還

また、過払い金の額がその借入先への借金の残高を上回る場合、その借入先へ過払い金を請求することができます。過払い金請求が借金へどのような効果を与えるのか例をとって見ていきましょう。

とある賃金業者Bへ8万円の借入残高があるのに対し、12万円の過払い金が発生していたとします。この場合、借金が全額免除になるどころか、12万円-8万円=4万円分の過払い金を返還することが可能です。

過払い金の返還に関しては、交渉の内容、賃金業者の対応によって異なります。詳しくは「借金のある人が過払い金請求をする前に抑えておくべきこと」にて後述致します。


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借金のある人が過払い金請求する上で気を付けるべき点

過払い金請求、過払い金発生による減額交渉について詳しく説明する前に、借金のある人が過払い金請求をする上で注意すべき点について紹介いたします。

個人信用情報機関への事故登録(ブラックリスト)への掲載

まず注意するべき点としてあげられるのは、個人信用情報機関への事故登録(ブラックリスト)へ個人情報が掲載されることです。個人信用情報機関とは、銀行や消費者金融、信販会社など各金融機関が、利用者の借入状況や返済履歴など個人情報を確認するための情報機関であり、新規の借入、クレジットカードの発行における審査の際に、各金融機関は情報機関を活用します。

返済の滞納や、自己破産などの債務整理など金融機関にとって不利益な行動を起こすと、事故登録として個人情報へ掲載されますが、一度、事故登録へ掲載されると新規の借入やクレジットカードの発行が難しくなります。では、どのようなシチュエーションにおいて、ブラックリストへ掲載されるのでしょうか。

 
 
 

借金が過払い金を上回るケース

借金の金額が、発生している過払い金より高額な場合、減額交渉を行うことは先ほど、説明いたしましたが、この場合、借金を減額することは可能ですが、同時に事故登録として掲載をされるため、懸念すべきポイントです。

保証会社からの代位弁済

その一方、過払い金が借金の額を上回っている場合、減額交渉ではなく、一般的な過払い金請求においてブラックリストへ掲載されることはありません。しかしながら、借入先の賃金業者の系列店が保証会社となっている場合、過払い金請求をした段階で、保証会社が借金の残高分の返済の立て替えを行うことがあり、立て替えを行った段階で事故登録へ掲載されてしまいます(代位弁済)。

 

請求先の賃金業者からの借入ができなくなる

過払い金請求をする上で気を付けるべき点として、請求先の賃金業者へ借入が難しくなることがあげられます。請求先の賃金業者に系列店舗があった場合、その店舗へのサービスの利用が難しくなる可能性が高いため注意が必要です。また少なからず、請求期間中は、請求先へのサービスを利用することができません。

もし請求先の賃金業者のクレジットカードなどで、携帯料金や税金の引き落としを行っていた場合、請求前に支払い方法を変更しましょう。


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借金のある人が過払い金請求をする前に抑えておくべきこと

では借金のある人(借金に対し過払い金が高額な人)が実際に過払い金請求をするにあたり、事前に知っておくべきことについて紹介していきます。

過払い金発生の対象条件を知る

まず過払い金の発生には、対象となる条件があります。

2010年以前からの借入

過払い金ブームが発生するより前の時代、法定金利を定める利息制限法が刑事罰で処罰されることがありませんでした。そのため多くの消費者金融が法定金利を超える貸付を行っていましたが、2010年以降、刑事罰で処罰されることになったため、それ以降、法定金利を超える貸付を行う賃金業者はほとんどなくなりました。

そのため、2010年より前に借入を行ったことがある人が、過払い金が発生の第一条件になります。

完済から10年以内

また、過払い金には時効があり時効の期限は完済してから10年です。そのため過払い金発生の条件として、賃金業者との最後の取引から10年以内であることもあげられます。

 
 

各賃金業者によって返還できる割合と期間が異なる

実際に、賃金業者に請求できるだけの過払い金が発生しているからといって、その過払い金が全額、返還されるわけではありません。

会社の経営状態によって変動する

過払い金が返還される割合は、請求先の会社の経営状態によって変動するのが現実です。一般的に経営状態の良い会社ほど返還率が高く、経営に行き詰っている会社ほど返還率が悪い傾向にあり、経営状態の悪い会社ほど請求に要する期間も長くなる傾向にあります。

倒産した会社からの返還は難しい

また倒産した会社から、過払い金を回収するのは難しく、配当金という形でした過払い金を受け取ることができません。配当金は申請する期間も限られている上に、10%未満の割合で返還されるケースが大半です。

各賃金業者への借入額と過払い金の確認

各賃金業者へ借入残高に対し、どれくらい過払い金が発生しているのか気になる点だと思います。

取引履歴の開示請求

現在の借入状況や、過払い金の額を知るためには借入先との間の、返済期間中における利息、返済金額、金利などが記載された取引履歴書が必要です。取引履歴書は、実際に借入先へ問い合わせをすれば、借入先から開示請求書類が渡されるので、必要事項に記載した上で提出をすることで、取得することができます。

過払い金の計算方法(引き直し計算)

取引履歴を元に過払い金を算出しますが、そのためには法定金利内で返済をした場合の利息の総額を計算することが必要です。正当な金利で返済をした場合の利息の総額と、実際に支払った利息の総額の差額分から過払い金を算出することができます。

 

法律事務所の無料相談の活用

しかしながら、過払い金を計算するためには月別ごとの計算をしなければならないため、素人が正確に計算を行うのは大変でしょう。そこで最近の法律事務所では、過払い金請求の相談に関しては無料で請け負っている事務所が多く、無料相談の一環として過払い金の計算まで行ってくれる事務所が多いのが事実です。ご自分の過払い金の額を知るために、法律事務所の無料相談を有効に活用するのも一つの手段だと思います。

過払い金請求の一般的な流れ

では過払い金請求はどのような流れで行っていくのでしょうか。

取引履歴の開示請求から引き直し計算

まず先ほども紹介した通り、請求先の賃金業者へ取引履歴書を取り寄せるために、開示請求を行います。そして取引履歴書を元に、過払い金の計算を行い、請求可能な過払い金の額を算出いたします。

過払い金請求書の作成から郵送

請求可能な過払い金の額が求まり次第、過払い金請求書の作成を行いますが、請求書の内容として、「引き直し計算の内容」、「請求金額」、「振込先の口座番号」、「支払いの期日」、「請求に応じなかった場合の訴訟の意思表示」を含めるのが一般的です。請求書が完成次第、請求先の賃金業者へ請求書を郵送しますが、この際、内容証明郵便を利用しましょう。

内容証明郵便とは、請求書を郵送した事実、請求書を受け取った事実を証明するための郵送であり、訴訟まで発展した際に証拠として使用できるため、裁判において有効的です。

賃金業者との和解交渉

相手側の賃金業者が請求書を受取次第、過払い金の返還される金額について交渉が行われます。この段階であまり高額な返還は期待できませんが、個人で交渉する場合と比べ、専門家が後ろ盾についていた方が、返還される金額が高額になる可能性が高いです。

訴訟の提起

交渉がまとまらなければ、訴訟の申立を行いましょう。申立は裁判所へ行いますが、その際に「取引履歴書」、「引き直し計算の内容」、「過払い金請求書」、「訴状」、「請求先の賃金業者の登記簿謄本」の提出が必要です。訴状に関しては、インターネットなどを介し訴状のフォーマットをダウンロードしてWordなので作成されることをオススメします(参照:「名古屋消費者信用問題研究会」)。

登記簿謄本は、請求先の賃金業者を管轄する法務局にて取り寄せてください。

訴訟後の和解交渉

訴訟の申立が完了後、裁判所から請求先の賃金業者へ訴訟の提起をした知らせが通知されます。通知を受理した後、貸金業者と二回目の過払い金返還に関する和解交渉が行われるのが一般的な流れです。この際、相手側が提案してくる過払い金の返還額が一回目と比べて高額になるでしょう。訴訟まで発展することを避けたい会社が多いため、高額になる場合が多いですが、経営状態の悪い会社の場合、訴訟まで発展するケースも珍しくありません。

裁判

訴訟まで発展した場合、裁判を有利に持っていくのは難しくありません。この場合、過払い金の全額にプラスして過払い金に発生する利息(年利5%)が返還される判決が下される可能性が高く、全額の過払い金を回収したい人は訴訟まで持っていくことをオススメします。しかしながら、経営状態の悪い会社など上訴してくる場合も多く、二審において勝訴を勝ち取っても過払い金の返還を分割支払いにするなど全額を回収するのに時間がかかる場合が多いです。


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過払い金発生者が借金を減額する方法

過払い金を算出(引き直し計算)した結果、過払い金に対し借金が上回っていた場合、減額交渉を行います。

任意整理

過払い金発生による減額交渉を任意整理によって行われますが、任意整理は債権者と直接、交渉することで行われるため、任意整理を成功させるかどうかは交渉の内容次第です。そのため個人で交渉することはほとんどなく専門家を介して交渉を行います。

任意整理における借金への効果

交渉する内容として、過払い金発生による借金の減額に目が行きがちですが、減額した後の借金の返済方法についても交渉が行われるのが一般的です。減額した借金の残りは、交渉先の賃金業者へ返済しなければなりませんが、少しでも負担を減らすためにも、3~5年の分割支払いでの返済、返済期間中における利息の免除、遅延損害金の免除について交渉を行います。

任意整理の流れ

任意整理の一般的な流れとして、過払い金請求と重複する部分が多く、引き直し計算まではほぼ同じ流れです。一般的な任意整理の流れとして、法律の専門家への依頼、専門家が案件を受任した事実を賃金業者へ郵送(この段階で賃金業者は取り立てや督促を行うことができません)、その後、引き直し計算を行い、実際に賃金業者と交渉を行います。

 
 

特定調停による減額交渉

任意整理は、専門家へ依頼するのが一般的ですが、過払い金発生により借金の減額が望めるのに関わらず、専門家の費用を工面するのが難しい人も多いでしょう。任意整理するのに適している人が、裁判所の仲介の元に債権者と交渉できる手続きを特定調停といいます。特定調停は、裁判所が指定した調停委員が間に入ってくれるため、専門家へ依頼する必要がありません。そのため費用を工面するのが厳しい人でも任意整理と同様の効果を得る事が可能です。

特定調停における借金への効果

特定調停は裁判所を介した、任意整理と呼ばれているぐらいで、特定調停においては、「過払い金発生による借金の減額」、「返済期間中における利息の免除」、「遅延損害金の免除」について交渉が行われます。

また、任意整理と同様に返済期間においても3年~5年で話がまとまる場合が多いです。しかしながら、債権者の同意が得られて初めて交渉が成立するため、必ずしも上記の内容で交渉がまとまるとは限りません。

特定調停の流れ

一般的な特定調停の流れとして、まず最初に裁判所へ特定調停の申立てをしますが、その際に、債権者の一覧表、財産の状況を示す書類などを申立書と同時に、裁判所へ提出をします。申立て完了後、裁判所から特定調停の日程が指定されるので、その日程に特定調停が行われますが、特定調停は2回に分けて行われるのが一般的です。

また債権者と債務者は、個別の部屋にて調停委員から意見を聴取されるためお互いに顔を合わせる必要がありません。聴取した意見を元に、調停委員が双方の主張を調整しますが、双方が同意した段階で手続きは終了します。


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まとめ

借金があるけど過払い金が発生している人は、過払い金発生による借金の減額交渉、または過払い金請求を行うべきですが、当記事で紹介した通り、注意しなければいけない点がいくつかあります。そのためリスクも検討した上で減額交渉、または過払い金請求を行いましょう。現在、借金があるけど過払い金が発生している人、または過払い金が発生しているかもしれない人に、今回の記事がお役に立てたら幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。