個人融資掲示板・SNSが危険な理由|避けるべき6つのリスクを弁護士が解説
「個人間融資」とは、文字通り個人と個人との間でお金を融資することです。
近年、SNSの普及などのインターネット環境の発展により、不特定多数の人と簡単にマッチングできるようになりました。
こうしたネット環境を利用して、個人間でお金を貸したい人と借りたい人をマッチングさせる掲示板、「個人間融資掲示板」が現れるようになりました。
インターネットのみを介して融資が得られる点で、カードローンや消費者金融よりも利用しやすく、つい手を出してしまう人もいるかもしれません。
しかし、個人間融資自体が、法律的に多くの問題を含んでいます。
金融庁も個人間融資への注意喚起・警告を行っています。
結論からお伝えすると、いくら生活費に困っていたとしても、個人間融資掲示板等の利用はおすすめできません。
この記事では、個人間融資は法律的にどのような問題があり、なぜ個人間融資掲示板を利用してはいけないのか、弁護士の視点でわかりやすく解説します。
【はじめに】個人間融資掲示板は利用すべきではない
カードローンが重なり、消費者金融の審査に通らない人が、つい個人間融資掲示板を利用したいと考えてしまうかもしれませんが、結論からお伝えすると、個人間融資掲示板は利用すべきではありません。
その理由は、貸す側、借りる側、双方にとって違法となるリスクを含んでいるからです。
違法性があると判断された場合は、逮捕されて刑事罰を科されるリスクも伴います。
個人間融資掲示板の危険な仕組み
個人間融資掲示板の利用による融資の流れは、おおむね以下の通りです。
まず、お金を借りたい人(借り手)が掲示板に「お金貸してください。「○○○@□□.jp」などと書き込みます。
その書き込みを見た個人(貸し手)が、掲示板に記載されたメールアドレス宛に「お金貸しますよ」とメールを送ります。
そのメールに対して、借り手が「○○万円貸してください。下記口座に振り込んでください」などと返信します。
このメールを受けて、貸し手が借り手の口座にお金を入金します。
逆に、貸し手側が掲示板に「お金貸します。○○○@□□.jp」などと投稿している場合もあり、この場合も同様にインターネットを通じて簡単に融資が行われてしまいます。
このように、個人間融資は、直接会ったり話したりせずに、インターネット掲示板やツイッターなどを介して簡単に実行されてしまうのです。
TwitterなどのSNSでも仕組みは同じ
掲示板ではなく、SNSを利用した個人間融資も、掲示板と同様に簡単に実行されてしまいます。
たとえば、お金を借りたい借り手側が、「お金貸してください」とTwitterで投稿するとします。
そうすると、そのツイートを見たお金を貸したい側(貸し手)から借り手に「お金貸しますよ」とDMが届きます。
あとは借り手と貸し手との間の直接のメールなどで、簡単に融資がおこなわれてしまうのです。
最近では、こうしたSNSを利用した個人間融資が行われる事例が増えています。
ただ、個人間融資は違法の疑いが強いため、金融庁は個人間融資を利用しないよう注意喚起・警告をおこなっています。
個人間融資に適用されうる法的規制の例
現在の貸金業法では、「事業としてお金の貸付をおこなうには国または都道府県に登録する」ことを義務付けています。
この「事業としてお金の貸付をおこなう」とは、反復継続してお金の貸付をおこなうことを指します。
この貸金業法は、貸し手が個人であっても適用されます。
したがって、個人の貸し手が反復継続してお金の貸付をおこなっており、貸金業の登録をしていない場合には、貸金業法違反となります。
貸金業法に違反する貸付をおこなっていた場合には、「10年以下の罰金もしくは3,000万円以下の罰金、またはこれらを併科されるという刑事罰」が科される危険性があります。
また、貸金業法は、貸金業登録しない者が勧誘をおこなうこと自体を禁止しています。
これに違反して勧誘を行った場合には、「2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらを併科されるという刑事罰」が科される可能性が高いです。
したがって、「お金貸しますよ」と掲示板やSNSで勧誘行為をおこなうこと自体が、刑事罰の対象となりえますので、個人間融資はおこなってはいけません。
加えて、貸金業法では利息制限法に反する利率での貸付も禁止しています。
利息制限法では貸付元金額10万円未満で年利20%、100万円未満で年利18%、100万円以上は年利15%を上限とすることを定めています。
したがって、これらを超える利率で貸付がおこなわれた場合には、この点からも貸金業法違反となります。
さらには、利率が109.5%を超える場合には出資法違反にも該当します。
なお、利息制限法の上限利率以内の貸付であっても、貸金業の登録がなく、業として貸付をおこなっている場合にはそれだけで上述の通りに貸金業法違反となります。
以上は貸し手側の法的規制ですが、借り手側も、最初から返す意思が無い、あるいは返せる見込みがないのに借りた場合には、詐欺罪に該当する危険性もあります。
個人融資掲示板を使う6つのリスク
個人間融資掲示板を利用することは、上記のような貸金業法違反、出資法違反、詐欺罪などの法律上のリスクのみならず、以下に挙げるような重大なリスクを負うことにもつながりかねません。
①融資詐欺被害
「融資詐欺」とは、お金を貸すように装って、借り手側からお金をだまし取る手口のことです。
詐欺業者が「お金を貸しますよ」と言って近づいてきて、貸すためには保証金や手数料が必要だなどと言って先にお金を振り込ませ、そのまま連絡が取れなくなり、お金をだまし取られるというものです。
このように個人間融資掲示板では、お金に困って借りたいと思っていたのに、さらにお金をだまし取られてしまうという被害に遭うケースが生じています。
②個人情報流出
お金を借りる際に、貸し手は、借り手に対して、借り手本人の住所・氏名・生年月日・口座番号などを聞いてきます。
また、借り手本人のみならず、借り手の家族・友人・知人の情報を尋ねてくることもあります。
こうした個人情報が貸し手から悪質な業者に渡るなどして、そういった業者から借り手側にDMが来たりして、詐欺などの何らかの被害に遭いかねません。
個人間融資を利用する借り手はお金に困っている人が多く、そうしたお金が困っている人のリストというのは、悪質な業者からすると、いわゆる「カモ」のリストとなってしまうのです。
個人間融資の利用は、こうした悪質業者との関わってしまう入口となりかねないのです。
③ヤミ金融による高金利の貸付け
上で述べたように、貸金業法、利息制限法などの法律で金利の上限が定められています。
貸金業の登録をしている消費者金融などの正当な業者は、利息制限法を遵守しています。
しかし、個人間融資で貸し手となる個人は、貸金業の登録をせずに貸付をおこなっていることが多く、そうした貸し手の場合、利息制限法の利率を超える高金利の条件で貸付をおこなっているケースがあります。
こうした貸金業登録を行わずに違法な金利で貸付を行う者を「ヤミ金融」「闇金」と言います。
個人で「ヤミ金融」をおこなっている者もいます。
たとえば、「トイチ(10日で1割)」という言葉がありますが、これは単純に年利に換算すれば年利約360%となり、明らかに利息制限法に違反しています。
個人間融資では、こうした高い金利で貸付がおこなわれることがあります。
闇金業者は、お金が返せず延滞した場合などに、職場に連絡したり、深夜に電話してきたり、暴行・恐喝を用いたりと、違法な取り立てをおこなってくる危険性があるので絶対に闇金からお金を借りてはいけません。
いくらお金に困っていたとしても、闇金業者に借りることはやめましょう。
④性犯罪被害
借り手が女性である場合には、性被害に遭う危険も高まります。
個人間融資でお金を借りたものの返せなくなった場合に、お金を返せないという弱みにつけこまれ、性的行為やわいせつ行為を強要されたり、意に反して風俗店で働かされたりしかねません。
⑤口座買取の被害
お金が返せなくなった場合に、貸し手から、返済に変えて借り手の名義の預金口座を買い取ると言ってくる場合があります。
こうして貸し手が借り手から得た預金口座は、振り込め詐欺の受け取り口座などの犯罪行為に利用されかねません。
また、現在の法律においては、口座の譲渡自体が法律で禁止されています。
譲り渡した側も刑事罰が科される危険性があります。
もし、口座の譲渡を持ちかけられても応じてはいけません。
⑥フィッシング詐欺
個人間融資での、貸付の際に、貸し手からクレジットカード番号や利用しているサイトのアカウント情報を聞かれることがあります。
そうして貸し手が得た借り手のクレジットカードやアカウント情報を利用して、買い物やキャッシングされることがあります。
こうした行為(被害)を「フィッシング詐欺」と言います。
個人間融資掲示板の運営元はトラブルに一切介入しない
個人間融資には、上記のようなリスクがあります。
個人間融資掲示板を利用してお金の貸し借りをおこなおうとしたところ、実際に被害に遭われた方もいます。
また、貸し手側からみたときに、お金を貸したものの一切返済がないということでトラブルになることもあります。
しかし、貸し手と借り手との間で何らかのトラブルになった場合でも、個人間融資掲示板の運営元は全く助けてくれません。
下記の個人間融資掲示板サイトにおいても、個人間で生じたトラブルには一切関与・介入しない旨が明示されていたり、責任の所在を運営元に置かない(置けない)ような体裁をとっていたりします。
個人間融資掲示板 |
サイト上の注意書き |
レンタルキャッシュ |
|
パトロン |
|
マロンツリー |
|
ライフネットジャパン |
※サイト上に問い合わせ先が一切見当たらない |
※各サイトの掲載内容は2023年7月時点のものです
また、法律的に見ても、掲示板サイトは場所を提供しているだけなので、貸し手と借り手に実際に何らかのトラブルが生じた場合に、掲示板運営元の責任を問うというのはハードルが高いです。
こうした点からも見ても、個人間融資掲示板は利用しないほうがよいと言えます。
個人間融資掲示板の被害例
新聞社やニュースサイトなどの各報道機関は、悪質な個人間融資による被害が多発していると報じています。
個人と謳いながら実態はヤミ金業者であったり、見返りに性行為を求めてきたりするケースも少なくないようです。
この項目では、個人間融資掲示板で起こった実際の被害例を紹介します。
見返りに性行為を要求するひととき融資による被害
北海道在住の20代女性が、個人間融資を求める人が集まるインターネット掲示板を利用して、「ひととき融資(見返りに性行為を要求される融資のこと)」の被害に遭いました。
女性は、任意整理した経験があったため、金銭を登録貸金業者から借りることができず、個人間融資で生活をしのいだそうです。
個人間融資では、担保として裸の画像を要求されることもあります。
コロナ禍による生活困窮から、個人間融資に手を出してしまうケースもあるかも知れません。
しかし、金融庁は「見知らぬ人から現金を借りないように」と注意を促しています。
超高金利の融資による被害
埼玉県では、30人以上の女性が超高金利の融資による被害に遭いました。
貸し手は貸金業法違反、出資法違反で逮捕されています。
超高利子の個人間融資では、桁違いの利子を要求されるケースもあるでしょう。
利子の相場は、おおよそ1週間で5割と言われており、30,000円を借りた場合には、翌週に45,000円の計算になります。
貸し手は、借り手が逃げられないように顔写真や身分証写真を送らせて、「支払えないならネット上に晒すぞ」などと脅してくる非常に悪質性の高い手口を使ってきます。
個人間融資を騙った詐欺による被害
融資をする前に、保証金をだまし取る詐欺も横行しているようです。
Twitter上で個人融資の約束を取り付けた女性は、貸し手から「保証金として50,000円を振り込めば400,000円の融資をする」と提示されました。
貸し手の指示に従って50,000円を支払いましたが、その後金銭が振り込まれることはなく、貸し手と連絡を取ることもできなかったそうです。
このような被害に遭わないためにも、個人間融資は絶対に使わないようにしましょう。
危険を承知で個人融資掲示板を使う際に注意すべきこと
上記で解説したように、個人間融資は法律的に非常にリスクがあるので、利用すべきではありません。
しかし、そうしたリスクを承知の上でどうしても利用するという場合には、最低限以下のことには注意してください。
金利や借り入れ条件を念入りに確認する
借りるお金の金利や、借入のための諸条件を念入りに確認しておくのは非常に重要です。
場合によっては、個々人の解釈で定義が変わってしまう言葉、約束事などを伝えられるケースもあります。
貸元と認識を揃えたうえ、さまざまな形で証拠を残しておきましょう。
法的に適用される上限金利を知っておく
個人間のお金の貸し借りであっても、利息制限法が適用されます。
利息制限法では、利率について以下の通りに定めています。
- 貸付元金額10万円未満→年利20%以下
- 貸付元金額10万円以上100万円未満→年利18%以下
- 貸付元金100万円以上→年利15%以下
利息制限法に違反する利率について、超過部分は無効とされています。
なお、年利が109.5%を超える場合には出資法違反として刑事罰の対象となります。
もし個人間融資を利用するのであれば、最低限、この利息制限法の上限を超える利率ではないことを把握しておきましょう。
詐欺やヤミ金でないことを見極める
お金を借りる側にとって、相手(貸し手)が詐欺をしようとしているか、ヤミ金かどうかを見極めることは極めて困難です。
一般的には、個人が貸金業登録しているとは考えにくく、個人で貸し手となり金利を取っている場合にはヤミ金である危険性が高いです。
貸金業登録しているかどうかは、金融庁の情報検索サービスで検索できます。
【引用元】登録貸金業者情報検索サービス|金融庁
詐欺かどうかは、借りる際に先にお金を要求してくるかどうかなどで判断せざるを得ません。
借りる前に保証金や手数料名目でお金を要求してくる貸し手は詐欺の疑いがあると見たほうがよいでしょう。
また、借りる際の条件(金利、返済期限、返済方法)を明示してくるかどうかというのもひとつの目安です。
お金を貸す、借りるというのは、法律的には「契約」です。
契約条件をしっかりと確認しましょう。
「金銭消費貸借契約書」(借用書)を締結する
個人間でお金を貸し借りする場合には、契約書を作成すべきです。
借り入れる元金の額、借入日、返済期限、返済方法、利率等の契約条件を明確にしておかないと、後からトラブルになる危険性が高まります。
最もよいのは「金銭消費貸借契約」などの契約書を作成しておくことですが、最低限、こうした契約条件についてはメールなどの記録を明確に残すようにしておきましょう。
債務や借金問題を法的に解決したい方は弁護士にご相談を
個人間融資は、インターネットのみを介して可能なことから、利用しやすい面があるかもしれません。
しかし、利用しやすいというメリット以上に、詐欺に遭ったり、ヤミ金トラブルに巻き込まれたりするなどのデメリットのほうが大きいです。
多重債務に陥って事故情報が記録されてしまい、正当な消費者金融から借り入れができない人が、つい個人間融資を利用してしまうということもあります。
しかし、すでに多重債務などで借金問題を抱えている人が個人間融資を利用することは、更なる負債の拡大や、違法な取立、詐欺被害など事態が悪くなるばかりです。
個人間融資を利用することで状況が改善されるという見込みはほとんどないと認識しておいたほうがよいです。
多重債務や借金問題を解決するには、専門家である弁護士に相談するのがベストです。
具体的な解決策としては、やはり債務整理(個人再生・任意整理・自己破産)が挙げられるでしょう。
まずは無料相談を利用して、弁護士に現在の状況を話してみてください。
まとめ
個人間融資は、貸金業法、利息制限法、出資法などの法律に抵触する違法な融資である危険性が高いです。
また、個人間融資は以下のようなリスクが伴います。
- 融資詐欺被害
- 個人情報流出
- ヤミ金による高利貸付
- 性犯罪被害
- 口座買取被害
- フィッシング詐欺
返済の代わりに口座を譲渡させられ、その口座が振り込め詐欺に利用されるなど、意図せずに犯罪に巻き込まれる危険性もあるのです。
こうしたことからすれば、個人間融資は利用しない方がよいと言えます。
個人間融資を利用せざるを得ないくらいに多重債務などで苦しんでいる方は、借金問題の専門家である弁護士に相談しましょう。
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