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自己破産費用は法テラスの利用で安くなる?デメリットや手続きの流れも解説

富永 慎太朗
監修記事
自己破産費用は法テラスの利用で安くなる?デメリットや手続きの流れも解説

自己破産を検討する際に、「弁護士費用が高額で払えないのでは」と不安を抱えている人も多いはずです。

収入が少なく借金の返済もままならない状況で、さらに数十万円の費用を工面するのは現実的ではないと感じるのも無理はありません

そんなときに活用できるのが、法テラス(日本司法支援センター)です。

法テラスとは、経済的に困窮している人でも弁護士などの法律の専門家の支援を受けられるように運営されている公的機関です。

法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、自己破産にかかる弁護士費用を立て替えてもらえ、原則として分割払いが可能です。

さらに、生活保護受給者であれば、費用が免除される場合もあります。

本記事では、法テラスによって自己破産の費用がどのように軽減されるのか、利用条件や手続きの流れ、利用する際の注意点・デメリットなどについて詳しく解説します。

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法テラスを利用して自己破産をする場合にかかる費用

法テラスをの民事法律扶助制度を利用した場合にかかる弁護士費用としては、以下のとおりです。

債権者数

着手金

実費

合計

1社~10社

13万2,000円

2万3,000円

15万5,000円

11社~20社

15万4,000円

2万3,000円

17万7,000円

21社~

18万7,000円

2万3,000円

21万円

法テラスを使わない場合に比べ、弁護士費用が安くなる

通常、自己破産を弁護士に依頼する場合、通常は50万円〜80万円程度の費用がかかります

一方で、法テラスの報酬基準による弁護士費用は、債権者数に応じて15万円〜20万円程度と、相場よりも安価です。

経済的に厳しい状況にある人でも、費用面の心配を抑えて手続きを進められる点で大きなメリットがあるといえるでしょう。

なお、実際に自己破産を進める際は、弁護士費用に加えて裁判所に対して数万円ほどの費用を納める必要があります。

しかし、費用の大半は弁護士費用が占めるため、法テラスを利用すれば経済的な負担を大きく抑えられることに変わりはありません

弁護士費用が安くなるだけでなく、弁護士費用を立て替えてもらえる

法テラスを利用するもうひとつの大きなメリットは、法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば自己破産に必要な弁護士費用を立て替えてもらえる点です。

通常、自己破産の依頼時に数十万円ほどの費用を一括で支払わなければなりませんが、法テラスを通じて弁護士に依頼した場合は、その費用を法テラスが一時的に立て替えてくれます。

立て替えてもらった弁護士費用は、分割払いによる返済が可能で、利息などもつきません。

さらに、生活保護を受給している場合などは、立て替えてもらった費用そのものが免除される可能性もあります。

この制度により、まとまったお金がなくても、経済的・精神的な負担を最小限に抑えながら自己破産手続きを進めることができるのです。

費用がネックで手続きに踏み切れない人にとって、法テラスの利用は非常に有効な選択肢といえるでしょう。

法テラスが立て替えた自己破産費用の返済方法

ここでは、法テラスの民事法律扶助制度を利用して、自己破産の弁護士費用を立て替えてもらった場合の返済方法について詳しく解説します。

原則として月5,000円~1万円程度を分割で返済する

法テラスを利用して自己破産を申し立てた場合、立て替えてもらった弁護士費用は原則として毎月5,000円~1万円程度を目安に分割で返済していくことになります

返済額は、利用者の収入や生活状況を考慮したうえで個別に設定されるため、無理のない範囲で返済が可能です。

分割回数や返済期間も柔軟に対応されることが多く、一般的には1年~3年程度で完済を目指します

返済は、法テラスから送付される振込用紙を使って、金融機関やコンビニで支払う方法が一般的です。

ただし、法テラスへの返済を滞納した場合は法テラスから督促を受けたり、滞納が長期間に及んだ場合は支払い督促調停などの法的措置をとられたりするので注意しましょう。

生活保護受給者は返済の猶予・免除が認められることもある

生活保護を受給している人が法テラスを通じて自己破産を申し立てた場合、立て替え費用の返済について特別な配慮がなされることがあります。

具体的には、生活状況に応じて返済の「猶予」や「免除」が認められる可能性があります。

まず、自己破産による免責を受けた時点で生活保護を受給していたり、自己破産後に生活保護を受給したりする場合は、一定期間返済を猶予してもらうことが可能です。

さらに、生活保護の支給が続く見込みで、今後も返済能力が回復しないと判断された場合には、最終的に返済義務そのものが免除されることもあります

法テラスを利用した自己破産手続きのデメリット・注意点

法テラスを利用すれば、一般の法律事務所に依頼するよりもはるかに費用を抑えて自己破産が可能です。

その一方で、以下のようにいくつかデメリットや注意点があるので気をつけましょう。

  • 収入や資産についての要件を満たさないと利用できない
  • 予納金などの裁判所に支払う費用は立替えの対象外
  • 自己破産手続きに着手できるまでの期間が長くなる
  • 法テラスの紹介を受ける場合、自分で弁護士を選べない

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

収入や資産についての要件を満たさないと利用できない

法テラスの民事法律扶助制度を利用して自己破産の手続きを進めるには、収入と資産が一定の基準を下回っている必要があります

基準はお住まいの地域や家族構成によって異なります。

たとえば、東京23区内の単身者が民事法律扶助制度を利用するには、手取りの収入が20万円以下で、かつ不動産や有価証券などの資産が180万円以下であることが条件です。

複数人世帯の場合は、本人だけでなく配偶者や同居家族の収入・資産も合算されるため、世帯全体の経済状況が対象になります

そのため、自分に収入がなかったとしても、家族の収入・資産状況によっては利用できない可能性があることを覚えておきましょう。

なお、審査の際は収入や資産に関する正確な資料の提出が求められ、虚偽の申告をすると利用が打ち切られるリスクもあるので注意しましょう

予納金などの裁判所に支払う費用は立替えの対象外

法テラスでは、弁護士費用などは立て替えの対象となりますが、裁判所に支払う予納金については立て替えの対象外となります(生活保護受給者を除く。)。

予納金とは、自己破産手続きにおいて、手続き費用として裁判所に納める必要がある費用です。

一般的な自己破産手続きである同時廃止事件では数千円〜1万円程度で済むこともありますが、債権者や財産が多いなど借金状況が複雑で管財事件として進める場合は20万円以上が必要になることもあります(地域により異なる場合があります。)。

法テラスを利用しても予納金は自分で用意する必要があるため、自己破産を検討している人にとっては大きな負担となるでしょう。

特に、管財事件となる場合は与納金が無視できない金額になるため、事前にどのくらい自己負担の費用が生じるのか担当の弁護士や法テラスに確認しておきましょう。

自己破産手続きに着手できるまでの期間が長くなる

法テラスを通じて自己破産を依頼する場合、一般的に手続き開始までには時間がかかる傾向があります

法テラスの民事法律扶助制度を利用するための審査には2週間〜3週間程度かかるケースが多く、審査が完了するまでは弁護士による自己破産手続きが進められないためです。

審査に通ったあとも、法テラスとの委任契約手続きや弁護士との面談などを経て、ようやく正式に自己破産の準備が始まります。

手続きが開始するまでは弁護士による業務が進まず、そのあいだは債権者からの督促も止められません。

そのため、すでに債権者から一括請求を受けていたり、法的措置をとられていたりするなどの事情がある人の場合は、法テラスを利用せずに直接弁護士に依頼したほうが良いケースもあるでしょう

法テラスの紹介を受ける場合、自分で弁護士を選べない

法テラスを利用して自己破産を進める場合、基本的に法テラスと契約している弁護士の中から紹介を受ける形になります。

そのため、自分で特定の弁護士を選ぶことは原則としてできません

紹介された弁護士が破産手続きにあまり慣れていない場合や、相性が合わないと感じる場合でも、簡単には変更できない点に注意しましょう。

もちろん、法テラスの弁護士も専門的な知識は持っていますが、希望や要望を細かく聞いてくれるかどうかは弁護士ごとに差があるのが実情です。

自分に合った弁護士を探したい場合は、「ベンナビ債務整理」などのポータルサイトを利用して法テラスと契約している法律事務所を探し、法テラスを利用したい旨を伝えて自己破産手続きに進むのがおすすめです。

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法テラスを利用して自己破産する場合の基本的な流れと期間

法テラスを利用して自己破産手続きを進める際は、以下の2通りの方法があります。

  • 法テラスに弁護士を紹介してもらう
  • 法テラスと契約している弁護士を探し、法テラスに持ち込む

今回は、前者の「法テラスに弁護士を紹介してもらう」方法での手続きの流れを紹介します。

1.無料法律相談

まずは法テラスに連絡し、無料の法律相談を予約します。

法テラスの事務所は全国各地にあり、電話もしくはWebで相談の予約を受け付けているので、最寄りの法テラス事務所のホームページを確認しましょう。

相談は、法テラスと契約している弁護士や司法書士が担当し、借金の状況や生活状況を詳しく聞き取り、自己破産が適切な解決策かどうかを判断します。

この段階で、自己破産以外の債務整理方法についてもアドバイスを受けることも可能です。

なお、相談時間は1回30分程度と限られているため、生活状況や借入の経緯などを整理しておくとスムーズに進みます。

2.民事法律扶助の申込・審査

無料相談の結果、自己破産が適切と判断された場合、法テラスの「民事法律扶助制度」を利用するための申し込みをおこないます。

申し込みには、収入や資産状況を証明する書類の提出が必要です。

審査には通常2週間から1カ月程度かかり、審査の結果、利用が認められれば、法テラスから援助開始の決定が通知されます。

なお、扶助の申請は、担当弁護士が代理しておこなうケースが多く、申請者が一人で手続きをおこなう必要はありません。

収入や生活状況によっては、追加書類の提出を求められることもあるため、担当弁護士の指示にしたがって手続きを進めましょう

3.弁護士との契約・援助開始

法テラスの援助開始が決定すると、弁護士と正式に委任契約を結びます。

この契約をもって、弁護士は自己破産手続きの代理人としての業務に取りかかることになります。

同時に、法テラスとの間で立替払い契約が交わされ、法テラスが弁護士費用を立て替えて支払ってくれます

委任契約が完了すると、弁護士はまず各債権者へ受任通知を送付し、依頼者への督促や取り立てを止める措置を講じます。

この通知が届けば、債務者は請求の連絡から解放され、生活再建に専念できる状態となるでしょう。

以降は、債権者とのやり取りは全て弁護士が代理でおこなってくれるため、落ち着いて今後の手続きに向き合うことが可能です。

4.自己破産の申立書類作成と申し立て

弁護士と協力して、自己破産の申し立てに必要な書類を作成します。

これには、破産申立書、陳述書、債権者一覧表、資産目録などが含まれます。

必要書類が整ったら、弁護士が債務者の住所地を管轄する地方裁判所に自己破産の申し立てをおこないます。

申し立て後、裁判所から破産手続開始決定が下され、手続きが正式に開始されます

書類作成の段階では、家計簿や領収書など日常生活に関わる資料も求められることがあります。

弁護士の指示にしたがって、丁寧に準備を進めましょう。

申し立て書類の作成および申し立てには、法テラスに相談した段階から2~3ヵ月ほどの期間を要するのが一般的です。

5.破産手続きの開始

裁判所が破産手続開始決定を出すと、破産手続きが正式に始まります。

債務者に財産がほとんどない場合は「同時廃止」となり、破産手続きと同時に手続きが終了します

一方で、一定以上の財産がある場合や調査が必要な場合は「管財事件」となり、破産管財人が選任されて財産の管理・処分がおこなわれます。

この段階で、債権者集会が開かれることもあります。

管財事件になった場合は、毎月の家計収支報告や追加資料の提出などが求められることも多く、弁護士や管財人とのやりとりが増える傾向があります。

手続きに協力的であることが、その後の免責判断にも良い影響を与えるため、弁護士や管財人からの連絡や指示には真摯に対応することが大切です。

6.免責許可の決定

破産手続きが終了すると、裁判所が免責審尋をおこない、債務者が免責を受ける資格があるかを判断します。

問題がなければ、免責許可決定が下され、借金の支払い義務が免除されます。

これにより、自己破産手続きは完了し、債務者は新たな生活を始めることが可能です。

自己破産の申し立てから免責許可の決定まで、同時廃止の場合は3ヵ月〜4ヵ月程度、管財事件の場合は半年〜1年程度かかるのが一般的です。

自己破産の手続きのさらに詳しい流れについては、以下の記事も参考にしてください。

法テラスを利用して自己破産する際の審査で必要となる書類

法テラスを利用して自己破産手続きを進める場合は、収入および資産が一定基準以下であることを示すために以下のような書類の提出が必要です。

書類

詳細

本人及び同居の家族人数を確認するための資料

・本籍、筆頭者、続柄、世帯全員の記載がある住民票など

・申込みから3ヵ月以内に発行されたもの

収入を確認するための資料

・給与明細及び賞与明細、源泉徴収票など

・自営業者の場合は確定申告書の写しや、課税証明書など

・給与明細は直近2ヵ月分、その他の書類については直近のもの

資産を確認するための資料

・法テラス指定の資力申告書

・固定資産評価証明書や不動産全部登記事項証明書

勝訴の見込みや事件内容を確認するための資料

・債務一覧表

返済に使用する口座の確認のための資料

・自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書の写し

・通帳やインターネットバンキングの画面の写し

いずれも、法テラスの民事法律扶助制度を利用するために必要な書類であり、裁判所に自己破産を申し立てるために必要な書類とは異なる点に注意しましょう。

自己破産を裁判所に申し立てる際に必要な書類については、担当の弁護士に確認してもらいつつ、以下の記事も参考にしてください。

さいごに|自己破産の費用を抑えたいなら法テラスの利用を検討しよう!

本記事では、法テラスを利用して自己破産をする場合にかかる費用や、具体的な手続きの流れなどについて詳しく解説しました。

法テラスの民事法律扶助制度は、一定の収入・資力基準を満たす人であれば誰でも利用ができ、相場より安く自己破産手続きを進められます

一方で、法テラスを利用する際は担当弁護士を選べず、自己破産手続きの経験・実績が少ない弁護士や、相性が悪いと感じる弁護士にあたるリスクもあります。

確実に、かつ安心して手続きを進めたい場合は、法テラスに直接相談するのではなく、法テラスと契約している弁護士に相談し、自己破産手続きを進める「持ち込み方式」も検討しましょう。

法テラスと契約している弁護士を見つける際は、ベンナビ債務整理などのポータルサイトを利用し、無料相談によって相性や実績を確かめるのがおすすめです。

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この記事の監修者
富永法律事務所
富永 慎太朗 (福岡県弁護士会)
借金問題を解決した実績多数。ご相談者様が元の生活を取り戻せるよう、親身にサポートしています。
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編集部

本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。