過払い金請求したらどうなる?メリットとデメリットを徹底解説
過去に消費者金融から借入があった方の中には、過払い金請求のCMを見て「自分も過払い金があるのではないか?」と、考えたことがあるのではないでしょうか?
過払い金請求をすれば、払い過ぎた利息が戻ってくる可能性がありますが、戻ってくるには一定の条件がありますし、そもそも払い過ぎた利息の全てが必ず戻ってくるわけではありません。
そして、過払い金請求をすることはよいことばかりではなく、デメリットもあるため注意しなければならないこともあります。
そのため、過払い金請求をしたらどうなるのかを事前にしっかりと把握しておく必要があります。
本記事では、過払い金請求のメリットとデメリット、そして過払い金請求をしたらどうなるのかを詳しく解説していきます。
過払い金を請求したらどうなる?仕組みとメリット
過払い金請求をおこなうと、過払い金があれば、払い過ぎた利息を返金してもらえる可能性があります。
また、過払い金請求をしてもブラックになることはないため、安心して請求することができます。
ここでは、過払い金請求をしたらどのようなメリットがあるのかについて、詳しく解説していきます。
払いすぎた利息を返金してもらえる
過払い金請求をおこなうと、払い過ぎた利息を返還してもらえる可能性があります。
かつて、消費者金融など多くの貸金業者は「グレーゾーン金利」という金利帯で融資をおこなっていました。
グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限金利(15%~20%)と、旧出資法の上限金利(29.2%)の間の金利を指す俗称のことです。
利息制限法とは、業として貸付をおこなう際の金利の上限を定めたもので、貸付金額ごとに以下のように決められています。
- 10万円未満:20.0%
- 10万円以上100万円未満:18.0%
- 100万円以上:15.0%
しかし、旧出資法では29.2%という上限金利が設けられていました。
そのため、多くの貸金業者は29.2%を上限としたグレーゾーン金利を設定していました。
しかし、2010年6月に改正貸金業法が完全施行されたことによって、グレーゾーン金利は撤廃され、現在は全ての貸金業者が利息制限法の範囲内で融資をおこなっています。
そして、2010年6月以前の融資であっても、グレーゾーン金利によって貸し出され、払い過ぎた利息が生じたものは「過払い金」として取り戻すことができます。
当時の借入の上限金利を利息制限法の上限金利に引き直して、払い過ぎた過払い金を計算します。
たとえば、100万円を金利29.2%で借りていた場合、利息制限法の上限金利である15%に引き直して過払い金がいくらだったのかを計算します。
100万円を10年で元利均等返済した場合、金利29.2%の場合は約209万円の利息負担です。
一方、金利15.0%の場合の利息負担は約93万円ですので、この場合は209万円と93万円の差額である116万円が過払い金となります。
このように過払い金を請求すると、払い過ぎた利息を取り戻すことができる可能性があります。
過払金請求後に残債がなければブラックリストには登録されない
また、過払い金を請求した際に当該貸金業者に残債がなければ、個人の信用情報がブラックになることはありません。
すでに完済している借入金の過払い金を請求しても信用情報にはまったく影響ありません。
以前は信用情報には「契約見直し」という項目があり、過払い金請求をおこなうとここに情報が登録されブラックになることがありました。
しかし、2010年4月にこの項目は廃止されたため、現在は過払い金請求をおこなっても信用情報に過払い金請求をおこなった事実が登録されることはありません。
しかし、これはすでに完済した債務の過払い金請求をする場合です。
まだ借入残高が残っているローンの過払い金を請求する場合は信用情報がブラックになる可能性があるため注意しなければなりません。
過払い金を請求したらどうなる?3つのデメリット
過払い金請求をしたら、以下の3つのデメリットがあることも把握しておきましょう。
- ブラックリストに登録される可能性がある
- 過払い金請求をした業者からは借り入れができなくなる
- 家族に借金があることを知られる可能性がある
1.ブラックリストに登録される可能性がある
過払い金請求をしたら、信用情報がブラックリストに登録される可能性があります。
これは、借入残高が残っている借入金について過払い金請求をおこなうケースです。
そして過払い金請求による引き直しの結果、債務が残るケースと残らないケースによってブラックリストに追加されるかどうかは異なります。
引き直しによって債務が残るケース
過払い金請求の引き直し計算によって債務が残るケースの場合、信用情報機関が「債務整理によって債務を減額した」と判断して、ブラックリストに載る可能性が高いと考えられます。
過払い金の引き直しによって債務が残る場合、信用情報機関の中には「債務整理をした」と登録することがあるためです。
また、信用情報機関の中には、引き直しによる債務の減額を債権者との和解と判断し、この情報が登録されることもあります。
引き直しによって債務が完済されるケース
過払い金請求の引き直し計算によって、債務が完済されるケースでは、一時的に信用情報がブラックになる可能性がありますが、この情報は消すことができます。
過払い金請求があると、債権者によっては請求があった時点で「債務整理をした」と、事故情報として信用情報に登録することがあるためです。
しかし、この情報は、引き直しによって債務が完済されたことが確認されると削除されるのが基本です。
そのため、ブラックになるとしても一時的なものです。
もしも引き直しによって完済されたにもかかわらず事故情報が信用情報に残っている場合には、債務者から信用情報機関へ申し入れて情報を削除することもできます。
過払い金請求がおこなわれた時点で事故情報として信用情報に登録されるかどうかは、債権者の対応によって異なります。
そのため、過払い金請求をしただけでは問題ないケースが多いと考えられます。
もしブラックリストに載ったとしても、引き直しの結果債務が完済される場合には、すぐに情報が削除されるためそれほど心配する必要はないでしょう。
2.過払い金請求をした業者からは借り入れができなくなる
過払い金の請求をおこなうと、いわゆる「社内ブラック」になってしまうため、過払い金請求をした業者とは以後、取引することは難しくなってしまいます。
クレジットカードやカードローンで過払い金があった場合には、当該クレジットカードやカードローンは解約になるのが一般的です。
また、その後年数が経過しても、請求をおこなった業者と取引することは難しいでしょう。
なお、社内ブラックの情報は系列企業にも共有されることが一般的なため、それらの会社から借り入れることも難しくなることは押さえておきましょう。
3.家族に借金があることを知られる可能性がある
過払い金請求をおこなうと、家族に借金があることを知られる可能性があります。
自分で過払い金請求をする場合には、過去の取引履歴などの資料を取り寄せや、貸金業者との交渉が必要です。
過払い金請求にあたって電話や書類でのやり取りが増えたことにより、家族に知られてしまうリスクがあります。
家族に知られたくない方は、ご自身で請求することは避け、債務問題に注力する弁護士へ依頼することをおすすめします。
過払い金請求はできる?2つの条件
過払い金請求は、以下の2つの条件を満せば利息を取り戻すことができる可能性があります。
- 2010年6月17日以前の借り入れがある
- 5年もしくは10年の時効を迎えていないこと
ここでは、過払い金を請求するための具備しなければならない2つの条件を詳しく解説していきます。
1.2010年6月17日以前の借り入れがある
グレーゾーン金利は2010年6月18日の改正貸金業法の完全施行によって廃止されたため、過払い金が請求できる可能性があるものは、2010年6月17日以前の借入金です。
つまり、2010年6月18日以降の借入金は利息制限法の上限金利によって融資されているため、過払い金の存在はありません。
「過払い金があるかも」と考える方は、借入日が2010年6月17日以前かどうかをまず確認してください。
2.5年もしくは10年の時効を迎えていないこと
過払い金請求の時効は完済から10年のため、過去にグレーゾーン金利での借入があった方は完済日を確認するようにしてください。
また、2020年3月31日以降に完済したものに限っては、過払い金を請求できる権利があると知ってから5年が経過すると、完済から10年が経過していない場合でも時効が成立してしまいます。
完済日がいつかによって時効は異なってしまうため、早めに相談することが重要です。
取引の分断があるか否かによる時効の解釈で、相手ともめる可能性がある
なお、完済から10年を経過していても、同じ業者からお金を借りていた場合には、過払い金を請求できるケースがあります。
1回目の借金と2回目の借金が「同一の取引」と認められた場合、時効は「2回目の完済日」を起算点としてカウントできるケースがあります。
たとえば、1回目の借金の完済が2010年1月31日で、10年経った2020年2月10日に2回目の借入をおこなった場合、1回目と2回目が「同一の取引」と認められれば、1回目の借入も2回目の借入と同じ起算点で時効をカウントできるため、1回目の借入に関する過払い金も請求できます。
たとえば、クレジットカードのキャッシングを10年以上前に完済した場合、同じカードでの借入を完済から10年超のタイミングでおこなえば2つの借入が「同一の取引」と認められて、過払い金請求ができる可能性があるのです。
一方、1回目の返済が一括返済の場合などは、貸金業者が「同一の取引ではなく、分断があった」と主張する可能性もあります。
このようなケースは裁判でないと解決が難しいため、弁護士へ相談するのがおすすめです。
過払い金を請求する際の3つの注意点
過払い金を請求する際には、以下の3つの点に注意しましょう。
- 満額を返してもらえるとは限らない
- 借り入れ先が倒産していれば請求できない
- 時効を迎えていた場合は過払い金請求ができない
返還を受けられるのは全額ではありませんし、相手企業が存在していなければ返還は受けられません。
ここでは、過払い金を請求する際の注意点を3つ解説していきます。
満額を返してもらえるとは限らない
過払い金を請求しても、基本的には満額返還してもらえる可能性は低いと考えておくのが無難です。
過払い金請求は基本的には債権者と債務者の話し合いによっておこない、双方が納得できる金額で和解するのが一般的です。
貸金業社側が満額で和解するケースは少ないため、請求しても満額受け取ることは難しいといえます。
借り入れ先が倒産していれば請求できない
借入先が倒産してしまっていた場合には、過払い金を請求することはできません。
消費者金融の中には、利息収入の減少や高額の過払い金負担によって倒産してしまった業者も多数存在します。
すでに借入をしていた業者が倒産していた場合には、残念ながら過払い金を取り戻すことは不可能です。
なお、倒産せずに当時の業者が名前を変えていた場合や、ほかの会社に吸収されたり合併したりされた場合には、新たな会社へ過払い金を請求することが可能です。
時効を迎えていた場合は過払い金請求ができない
過払い金請求には時効があり、すでに時効を迎えていた場合には過払い金は請求できません。
過払い金請求の時効は、基本的に完済から10年です。
心当たりがある方は完済日から10年を経過していないか確認しましょう。
過払い金請求をするなら弁護士に依頼すべき3つの理由
過払い金請求をするのであれば弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
- 過払い金の計算を自分でするのは難しい
- 貸金業者との交渉を任せられる
- 家族に知られにくい
過払い金請求は専門的な知識が必要で貸金業者との交渉が非常に重要です。
また、弁護士へ依頼することによって家族にも知られにくいでしょう。
過払い金請求を弁護士に依頼すべき3つの理由を詳しく解説していきます。
1.過払い金の計算を自分でするのは難しい
過払い金の計算を自分でおこなうのは非常に大変です。
グレーゾーン金利から利息制限法の金利に引き直し、「いくら払い過ぎたのか」を請求する側が正確に計算しなければなりません。
計算が得意な方であれば、過払い金を計算するのはそれほど難しいものではありません。
しかし、計算が苦手な方にとっては非常に困難に感じるかもしれません。
インターネット上には過払い金の請求ツールがあるためツールを使用すれば計算できます。
しかし、計算するためには取引履歴を取り寄せるなど面倒な準備も必要です。
弁護士へ依頼すれば、過払い金の計算や取引履歴の取り寄せなどもおこなってくれます。
過払い金を正確かつ手間なくおこなうためには弁護士へ依頼した方がよいでしょう。
2.債権者との交渉を任せられる
過払い金は裁判ではなく貸金業者との交渉によって決まるのが一般的です。
一般の個人が貸金業者と交渉をおこなっても、貸金業者が強気になり請求した金額よりも低い金額を提示されてしまうケースも少なくありません。
しかし、弁護士が交渉することによって借り入れをしていた方有利で交渉を進められるため、請求額の希望がとおりやすくなります。
より多くの過払い金を受け取りたいのであれば、交渉のプロである弁護士へ依頼しましょう。
3.家族に知られにくい
弁護士に過払い金請求を依頼すると、家族に知られにくいというメリットもあります。
ご自身がみずから過払い金交渉をする場合は、自分で取引明細を取り寄せて、電話や書面で貸金業者とやり取りをおこなわなければならず、その際に家族に借入金の存在がバレてしまう可能性があります。
しかし、弁護士へ依頼することによって資料の取り寄せや、貸金業者との交渉は弁護士が代理してくれるため、ご自身が直接貸金業者とやり取りすることはありません。
自宅への郵送物や電話があるわけではないため、借入金が家族にバレてしまうリスクが非常に小さくなります。
家族に借金の存在を知られたくないという方は、弁護士へ依頼したほうがよいでしょう。
さいごに|過払い金について不安な点は弁護士に相談
過払い金を請求すると、過去にグレーゾーン金利で支払いすぎた利息を取り戻せます。
しかし、過払い金請求は請求すれば確実に取り戻せるというものではなく、貸金業者との交渉によって還付金額などを決めて和解するのが一般的で、計算も複雑なので個人が取り戻すことは簡単ではありません。
弁護士へ依頼することによって、貸金業者との交渉が有利に進む可能性が高く、面倒な計算や事務手続きも代わりにおこなってもらうことが可能です。
スムーズかつ有利に過払い金請求をおこないたいのであれば、弁護士へ相談するのがよいでしょう。
なお、過払い金は該当する債務を完済してから10年間で時効になるため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
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