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過払金請求前に知るべき「みなし弁済」とは?利息付でお金を取り戻す方法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
過払金請求前に知るべき「みなし弁済」とは?利息付でお金を取り戻す方法
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みなし弁済(みなしべんさい)とは、利息制限法で定められた金利(15%~20%)を超え29.2%以下の高利の貸付を容認にするための法制度です。

みなし弁済規定により,消費者金融やカード会社など貸金業者の多くが利息制限法を超える貸付を行ったため、多くの過払い金発生者が現れました。

2010年以降、刑事罰による利息制限法を超える貸し付けが罰せられるようになったことを機に、みなし弁済規定は廃止されましたが、現在もなお過払い金の発生者は沢山います。

今回の記事では、過払い金返還請求をする上で、抑えてきたいみなし弁済の知識について紹介していきますが、過払い金に利息を付けて返還を希望される方は特に有益な情報になると思います。

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みなし弁済規定とは|過払い金の返還請求をする上で覚えておきたい知識

旧来の出資法において利息制限法は刑事罰の対象外であったため、金利29.2%以下の貸付業務に関しては刑事罰で罰せられることはありませんでした。

そのため利息制限法で定められた金利(15%~20%)を超えてはいるが、金利29.2%以下(グレーゾーン金利)の貸付業務を行う業者を法で裁くためには、民事訴訟で訴える以外に手がありませんでした。

グレーゾーン金利を保護する法制度

刑事罰で裁かれないからといって貸金業者側にとって民事で訴えられることは厄介でしょう。そこで、ある一定の要件を満たしていれば、グレーゾーン金利による貸付業務が法的にも容認させるみなし弁済規定が誕生しました。

先ほども申しましたが、みなし弁済規定をきっかけに多くの消費者金融、カード会社が高金利の貸付業務を営むことになるのですが、みなし弁済規定をめぐり消費者(債務者)と貸金業者との間で多くの訴訟が行われました。

数多くの訴訟の結果、2010年6月の法改正をきっかけに、みなし弁済規定は廃止され利息制限法を超える貸付が刑事罰で罰せられることになりました。

参照:「グレーゾーン金利とは|過払い金を返還する為の正しい知識まとめ

みなし弁済規定を満たすための要件

この法改正をきっかけに、多くの過払い金発生者の存在が明らかになりましたが、貸金業者との過払い金返還請求において、まず問題となるのが貸金業者がみなし弁済の要件を満たした上で、貸金業務を営んでいたのかどうかです。

旧貸金業法43条によると、みなし弁済が適用されるための要件は以下の通りになります。

  • 貸金業登録された貸金業者であること
  • 貸付時に、貸金業規制法17条書面(契約年月日が記載されている)を借主へ交付していること
  • 弁済の度に、貸金業規制法18条書面(契約年月日が記載されている)を借主に交付していること
  • 約定利息の支払いが借主の任意であること

過払い金返還請求におけるみなし弁済の実情

みなし弁済の要件を抑えた上で、グレーゾーン金利内で貸金業務を営んでいた業者は、みなし弁済の適用が認められたのでしょうか。

みなし弁済の適用が認められることはない

結論から申し上げますが、グレーゾーン金利で貸金業務を行っていた大半の業者は、みなし弁済の適用が認められません。

その背景については「判例から読み取るみなし弁済と過払い金返還の関係性」にて詳しく記述しますが、みなし弁済の適用が認められないということは、不当に支払った利息に関しては不当利得(過払い金)として法的に全額、貸金業者へ返還請求できるということです。

過払い金に加えて利息の返還請求可能

また、過払い金発生者の大半は、過払い金だけでなく過払い金に課せらる利息分(年利5%)を加えて請求することができます。

法律上、不当(法的原因をなくして)に利益(利息)を受取った者に対しては、不当利得(過払い金)を請求することができますが、不当利得に加えて利息を請求できるかどうかは、利益を受け取った者(受益者)が法的原因をなくした原因が故意であったかどうかで決まります。

故意であることが法的に立証できれば「悪意の受益者」として利息をつけて請求することができますが、故意でないことが反対に立証された場合、「善意の受益者」として利息をつけて返還されません。

過払い金請求における法的原因とは「利息制限法」であり「みなし弁済」に該当しますが、主に貸金業者側の「みなし弁済」の適用要件に関する認識の相違が過払い金請求において問題になります。

参照:「悪意の受益者とは?利息を付けて過払い金返還する為の知識

判例から読み取るみなし弁済と過払い金返還の関係性

では、過去の判例を元に、みなし弁済と過払い金返還の関連性について確認していきましょう。

平成18年のシティズ判決|みなし弁済が適用されない

かつて商工ローンの扱っていた株式会社シティズに対する平成18年1月の最高裁よる判決が、現在の過払い金請求を認めるきっかけになりました。

シティズ側の主張は、「みなし弁済が適用される範囲内で貸金業務を営んでいるため過払い金は発生しない」とのことでしたが、それに対する判決は、消費者の過払い金請求は認めるべきという内容でした。

この判決により、大半の貸金業者からのみなし弁済の主張が認められなくなりましたが、グレーゾーン金利の貸付に対しては過払い金返還請求をする考えが一般的に強く根付くきっかけになりました。

適用されない理由

シティズ側のみなし弁済の適用が認められない理由は、「債務者の任意性が満たされていない」、「18条の領収書交付の要件が満たされていない」の2点です。

シティズを含めグレーゾーン金利の貸金業務を行っていた業者の多くが、契約書に「期限の利益の損失」を含めていましたが、これは債務者の任意性に反すると裁判所から見なされました。

※期限の利益の損失:債務不履行(契約書通りの返済を怠る)により分割で返済する権利を失い、債務の残高を一括で弁済しなければならない。一括による弁済は債務者の任意性に反するとのこと。

また18条の領収書の交付の要件を満たすためには、借入ごとに発行される領収書には契約年月日を記載しなければなりませんが、契約年月日が記載されていないことから、18条の領収書交付の要件が満たされていないと裁判所から判断されました。

平成19年の最高裁判決|過払い金の利息返還が容易になる

上記の裁判から過払い金請求が容易になりましたが、平成19年7月13日の最高裁における判決は、過払い金の利息返還をするために大きなターニングポイントになります。

この裁判において、貸金業者側は、「18条書面の交付はないけど、みなし弁済規定の要件を満たしている認識がある」と自身を「善意の受益者」であることを主張しました。

悪意の受益者であることを推定:貸金業者側に善意の立証義務がある

この主張に対する判決は、「みなし弁済の要件を満たすことを認識するに至るやむを得ない理由がある場合を除いて、悪意の受益者と推定する」という内容でした。

この判決の以前の裁判において、過払い金の利息を返還請求する際、過払い金発生者側が、悪意の受益者であることを立証する義務がありましたが、この判決を機に貸金業者側が善意の受益者であることを立証しない限り、過払い金に利息を付けて返還されるようになりました。

平成21年の最高裁の判決|悪意の受益者と推定できない場合とは?

上記の判決に対して貸金業者側は、平成18年のシティズ判決以前の貸金業務に関しては、先ほどの判決による、「みなし弁済の要件を満たすことを認識するに至るやむを得ない理由」に該当することを主張しました。

平成18年以前の貸付に関して利息が返還されない可能性

平成18年の判決では、「借入ごとの領収書に契約年月日が記載されていないことから、18条領収書の交付の要件を満たしていない」ことをみなし弁済が適用されない理由の一つにあげていました。

しかしながら、元来の18条領収書の交付の要件には「契約番号の記載があれば契約年月日を記載しなくてもよい」となっていたため、多くの貸金業者が契約年月日を記載しませんでした。

このことについて、貸金業者側は、平成18年以前の貸金業務に関しては、「みなし弁済の要件を満たすことを認識するに至るやむを得ない理由」に該当すると主張したのです。

一部の裁判所では、この主張を妥当なものであると見なされるため、少数ではありますが利息が減額された状態で過払い金返還の話がまとまることがあります。

参照:「過払い金請求|メリットや返還請求方法・専門家選びの全知識

みなし弁済規定を踏まえて過払い金返還をする上での注意点

みなし弁済規定の内容を踏まえた上で、過払い金返還する上での注意点について確認していきましょう。

平成18年以前の借入に対する過払い金

まず、先ほどの判例でも説明した通り平成18年以前の借入に対して発生した過払い金に関しては、過払い金に付随される利息を全額返還することは難しいかもしれません。貸金業者側も、平成18年以前に発生した過払い金の返還請求に対しては血眼になって過去に発行した領収書の控えを探すでしょう。

実際に貸金業者側が悪意の受益者でないことが推定されることはほとんどありませんが、平成18年以前に発生した過払い金の返還請求に関しては、法律の専門家へ相談することをオススメします。

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利息を付けた過払い金返還請求は裁判まで発展しやすい

また、過払い金の返還請求は、高額な返還金額を望むほどに長くなる傾向にあり、利息を付けた過払い金返還請求は裁判まで持ち越す場合が多いです。

特に、経営の傾いた貸金業者に関しては返還請求が長引く傾向にありますが、第一審で勝訴しても告訴してくるため第二審まで進むことが珍しくありません。

利息を付けて返還を希望される方は弁護士に依頼すべき

そのため利息を付けた過払い金返還請求を色々と面倒が付き物ですが、過払い金に利息を加えて返還請求を望むのであれば弁護士に依頼するのが一番、効果的でしょう。

貸金業者との交渉の代理人

その理由の一つとしては、過払い金請求をする上で貸金業者と直接、返還に関する交渉を行いますが、素人が相手の場合、足元を見られるためまともに取り合ってくれないことが多いです。

弁護士に依頼することで、依頼者側に有利な内容で貸金業者との交渉が進められる上に、過払い金返還請求の手続きがスムーズになります。

過払い金の返還金額が高額

また、弁護士に依頼した方が、返還される過払い金の額が高額であることが一般的です。交渉が上手くいけば裁判を行う前に、満額の過払い金で話がまとまる場合もあります。

訴訟の代理人

利息を付けて返還するのであれば裁判まで進むことが予想されますが、裁判が長引いた場合、平日、仕事している方にとっては手続きから出廷するために予定を空けることは負担が大きいでしょう。

弁護士に依頼すれば裁判の申立だけでなく訴訟の代理人も任せることができるので手続きの負担が少なくなります。

参照:「過払い金請求を弁護士に依頼する費用とメリットとデメリット

まとめ

利息付きの過払い金の請求をする上で、今回の記事のみなし弁済の知識を役立てていただけたら幸いです。もし高額な過払い金の返還請求を望むのであれば、一度、法律の専門家へ相談してみましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。