みなし弁済とは?適用要件や判例、廃止された経緯などを解説
みなし弁済とは、利息制限法の上限金利を超える高利の貸付を容認していた旧法制度です。
みなし弁済規定により、消費者金融やカード会社など貸金業者の多くが高金利で貸付をおこなったため、多くの多重債務者が現れました。
しかし、利息制限法の上限金利を超える貸付は違法であり、払い過ぎた利息は取り返すことができます。
2010年以降、利息制限法を超える貸付けが罰せられるようになったことを機に、みなし弁済規定は廃止されましたが、現在もなお、過払い金の発生者はたくさんいます。
本記事では、過払い金返還請求をするうえで知っておきたいみなし弁済の知識について紹介します。
みなし弁済規定が廃止されるきっかけになった判決や、過払い金請求の条件なども紹介するので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
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みなし弁済規定とは違法な金利での借金返済を認めていた旧法制度
みなし弁済規定とは、登録貸金業者による違法な金利での借金返済を認めていた旧法制度のことです。
まずは、違法な金利での貸付がまかり通っていた理由やみなし弁済が成立する要件を詳しく見ていきましょう。
みなし弁済によってグレーゾーン金利で貸付が容認されていた
貸金業の金利に関しては、出資法と利息制限法で以下のような上限が定められていました。
- 出資法の上限金利:29.2%(当時)
- 利息制限法の上限金利:15%~20%
利息制限法の上限金利を超える利息の支払いは無効となるため、返還するのが原則です。
しかし、貸金業規制法のみなし弁済規定により、利息制限法の上限を超える金利で返済を受けることも、一定の条件下において有効とされていました。
また、利息制限法には罰則がないので、出資法の上限金利さえ守っていれば、貸金業者が実質的に不利益を受けることはなかったのです。
そのため、利息制限法の範囲は超えているものの、出資法の範囲内にとどめた「グレーゾーン金利」で貸し付けることがまかり通っていました。
みなし弁済規定を満たすための要件
旧貸金業規制法43条では、みなし弁済が成立するための要件を定めていました。
主に5つの要件が挙げられるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.貸主が貸金業登録を受けている
みなし弁済規定を満たすための要件のひとつは、貸主が貸金業登録を受けていることです。
貸金業登録とは、貸金業を営むことについて、内閣総理大臣または都道府県知事の許可を得るための手続きを指します。
つまり、公的な登録をおこなわず、非合法に貸金業を営んでいる闇金業者には、みなし弁済規定は適用されないことになっていました。
2.貸付時に貸金業規制法17条に定められた契約書を交付している
貸付時に貸金業規制法17条に定められた契約書を交付していることも、みなし弁済が適用される要件のひとつです。
17条書面には、以下の項目が記載されている必要があります。
- 貸金業者の商号、名称または氏名および住所
- 契約年月日
- 貸付けの金額
- 貸付けの利率
- 返済の方式
- 返済期間および返済回数
- 賠償額の予定に関する定めがあるときは、その内容
- 上記のほか、内閣府令で定める事項
上記は法律で定められている記載事項であり、どれかひとつでも欠けていた場合は、基本的にみなし弁済は成立しません。
3.弁済時に貸金業規制法18条に定められた受取証書を交付している
みなし弁済を成立させるには、弁済時に貸金業規制法18条に定められた受取証書を交付していなければなりません。
また、18条書面には、以下の項目が記載されている必要があります。
- 貸金業者の商号、名称または氏名および住所
- 契約年月日
- 貸付金額(保証の場合は、保証にかかる貸付金額)
- 受領金額およびその利息、賠償額の予定に基づく賠償金または元本への充当額
- 受領年月日
- 上記のほか内閣府令で定める事項
なお、口座振込みの場合は、債務者からの請求がない限り18条書面は必要ないとされています。
しかし、「特段の事情がない限り、口座振込みでも18条書面を交付しなければ、みなし弁済は成立しない」といった旨の判例が出ているため、18条書面の交付がないケースにおいては、基本的にみなし弁済は認められません。
4.借主が任意に利息を支払っている
みなし弁済の成立要件のひとつは、借主が任意に利息を支払っていることです。
たとえば、貸金業者が債務者を脅したり、身体的な危害を加えたりして、強制的に利息を支払わせた場合には、みなし弁済は認められません。
5.借主が法定金利を超えた利息と認識したうえで支払いをしている
みなし弁済が成立するには、借主が法定金利を超えた利息と認識したうえで支払いをしている必要があります。
つまり、債務者が違法な金利が適用されていることを知らずに利息を支払っている場合には、みなし弁済が適用されなくなります。
みなし弁済規定が廃止された経緯
次に、みなし弁済規定が廃止された経緯を詳しく見ていきましょう。
みなし弁済によって多重債務問題が多発していた
みなし弁済規定が廃止される以前も、銀行や信用金庫などでは利息制限法の範囲内で、合法的に貸付をおこなっていました。
しかし、その分、審査が厳しかったので、借入れできずに困っている人が数多くいたのです。
そこで、受け皿になっていたのが、主に消費者金融やクレジット会社です。
消費者金融やクレジット会社では、グレーゾーンの高金利を設定していた代わりに審査を緩くしていたため、銀行などからお金を借りられない人が利用するようになりました。
とはいえ、もともとお金がない状況のなかで、高金利の利息を支払い続けていくことは簡単ではありません。
結果として、その場しのぎの借入れと返済を繰り返し、多重債務に陥る人が増えていきました。
「シティズ判決」みなし弁済の考え方が否定された
多重債務が問題視されるなかで、みなし弁済が廃止に向かうきっかけとなったのが、平成18年1月13日最高裁判所第二小法廷判決、通称「シティズ判決」です。
シティズ判決では、主に以下のような見解が示されました。
- 利息制限法の上限金利を超える部分は無効とする
- 期限の利益喪失約款により、返済が遅れると一括返済を求められてしまう条件下では、高い利息での支払いも事実上強制されていることになる
上述のとおり、みなし弁済は「任意の支払い」がなければ成立しません。
しかし、「期限の利益喪失約款」は、契約書に盛り込まれる基本的な条項であり、ほとんどの債務者は強制的に利息を支払わされていることになります。
つまり、シティズ判決は、みなし弁済規定の適用条件を厳格に捉え、実質的に否定する判決となったのです。
法改正でみなし弁済規定が完全撤廃された
2010年の貸金業法改正により、みなし弁済規定は条文から削除され、完全撤廃となりました。
また、出資法の利率も29.2%から20%に引き下げられたことにより、出資法と利息制限法との上限金利の差がなくなり、グレーゾーン金利も消滅しています。
今なお、貸金業者がみなし弁済規定の適用を主張することがありますが、裁判所が認める可能性は低いといえるでしょう。
みなし弁済で払い過ぎた利息は過払い金請求で取り返せる
みなし弁済規定が適用されたことで払い過ぎた利息は、過払い金請求で取り返せます。
そもそもグレーゾーン金利でお金を貸すことは違法であり、債権者は利息制限法による制限の超過部分を債務者に返還する必要があるためです。
なお、貸金業者が違法な金利で貸し付けていたことを証明できれば、過払い金に年5%の利息を上乗せして請求することも可能です。
ただし、2010年6月以降はみなし弁済規定が廃止されているので、借金の過払い金は基本的に発生しません。
また、完済してから10年が経過すると、時効によって過払い金を請求できなくなる点にも注意してください。
まとめ
2010年6月以前に借金をしたことがある方は、みなし弁済規定によって、過払い金が生じている可能性があります。
数百万円以上を回収できた事例も数多くあるので、思い当たる節がある場合は、一度弁護士に相談してみてください。
弁護士に相談する際は、具体的な利率がわからなくても問題ありません。
弁護士が業者から取引履歴を取り寄せ、「引き直し計算」によって、違法な金利での借金と合法な金利での借金の差額を算出してくれます。
過払い金の請求権には10年の時効があるため、できるだけ早く行動を起こすようにしましょう。
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