債務不履行とは?種類や事例・債務者のペナルティやリスクを解説!
債務不履行(さいむふりこう)とは、正当な理由なく自分の債務を履行しないことを言います。
履行遅滞、履行不能、不完全履行の3種類があり、契約違反によって債務者が金銭の支払いを怠った場合に、債権者は強制履行、契約解除、損害賠償の請求が可能です。
ここでは「債務不履行」についてご紹介します。
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借金の滞納は、「債務不履行」に該当します。そのせいで返済を催促さてれている場合、できるだけ早い段階で弁護士や司法書士といった借金問題の解決が得意な専門家に依頼することが解決への近道です。 専門家への依頼では、以下のようなことが望めます。
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債務不履行の3つの種類
債務不履行には民法上、履行遅滞・履行不能・不完全履行の3つがあり、簡単にいえば「約束事を守ること」と考えていただければと思いますが、ここではまず、その3つの種類について解説していこうと思います。
履行遅滞
履行可能にもかかわらず、履行期を経過しても履行しない場合です。例えば、金銭の支払い期日が決められているのに過ぎてしまった場合や、引き渡し日を忘れてしまい引き渡しが遅れるなど、正当な理由なく、履行期に債務者が履行しないことをいいます。
(履行期と履行遅滞)
第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
引用元:民法第412条
履行遅滞の条件
- 履行が可能である
- 履行期が過ぎている
- 債務者の責めに帰すべき事由がある(故意・過失)
- 履行しないことが違法である
履行遅滞で請求できる事
- 強制履行
- 損害賠償請求
- 契約の解除
定期行為というものもある
定期行為とは、「特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない」行為をいい、通販などで商品の届け日を指定したのに来なかった場合などが挙げられます。
(定期行為の履行遅滞による解除権)
第五百四十二条 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。
引用元:民法第542条
定期行為の履行遅滞による解除権は上記のように規定されています。
履行不能
例えば、著者のサイン入りで1点ものの書籍を購入しようと金銭を支払ったのに、契約後に店舗側の書籍が火事などで滅失してしまい、届ける事が出来ないというような、債務の履行が不可能になることを言います。
履行不能の条件
- 契約成立後に履行が不能になる
- 債務者の責めに帰すべき事由がある(故意・過失)
(履行不能による解除権)
第五百四十三条 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
引用元:民法第543条
履行不能で請求できる事
- 損害賠償請求
- 契約の解除
不完全履行
例えば、書籍の債権者(購入者)によって履行行為(金銭の支払い)がされ、店舗側も書籍の郵送を行ったものの、債務の本旨に従った完全な履行ではなく、不完全な履行であった(新品を購入したのに中古が送られてきた、または違う書籍だった)ために債権者に損害が生じた場合が該当します。
こういった場合、民法415条では「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」としており、損害賠償の請求や契約の解除ができるとしています。
不法行為との違いは?
不法行為とは、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」する行為であり、分かりやすい例としては交通事故や刑事事件などによる損害賠償請求が挙げられます。」
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法第709条
不法行為による損害賠償は上記のように規定されています。
定期行為もそうですが、結婚式当日に花嫁の衣装が時間までと届かないといったことがあれば、注文者に損害を発生させたことになりますから、業者には不法行為が成立します。つまり、契約関係がある状態で損害を受けた場合、「債務不履行」と「不法行為」が成立する事になります。
債務不履行と不法行為の消滅時効
- 債務不履行:債権者が権利を行使できることを知った時から5年、債権成立の時から10年
- 不法行為:損害及び加害者を知ってから3年又は発生から20年
借金・債務による債務不履行
借金を負っているのに返済しないというのも債務不履行とされます。
借金を返さない場合、支払えない場合のいずれにしても、金銭消費貸借契約上の問題になります。そういった場合の対策や対処法などを確認していきましょう。
借金は履行遅滞になり履行不能とは判断されない
お金がなくて返せない、というのは「履行不能」ではないかと思われる方もいるかもしれませんが、「履行遅滞」と整理されます。お金そのものがこの世からなくなったわけではないからです。
つまり、仮に1000万円の借金が返せない場合でも、借金の返済自体が不可能とは言えず、債務者が支払いや返済を忘れている、あるいは遅れている(履行遅滞)状態だと考えられるということです。
たとえ1000万円の借金でも、毎月1万円ずつ支払っていけば83年間で返済できます。少々気の遠くなるような話ですが、時間がかかっても返済できる可能性があるものに関しては、原則「履行不能にはならない」ということになります。
借金(金銭債務)を減らす3つの債務整理
消費者金融や賃金業者等からの借金で債務不履行になっているようでは元も子もありません。一刻も早くそういった状況から脱却する方法として、債務整理を行うという方法があります。
ここでは、主な債務整理の方法を以下に解説していきます
任意整理
裁判所を通さずに、債務者(借金をしている人)と債権者(お金を貸した人)が話し合いをして、和解を進めていく方法です。
【関連記事】任意整理のデメリットとメリットの正しい知識まとめ
個人再生
借金が5分の1程度までに減額できる可能性のある手続きで、住宅だけは残したいという場合でも利用できます。
【関連記事】個人再生を利用する手順と借金を大幅に減らす完全ガイド
自己破産
借金をゼロにする最終手段です。
【関連記事】自己破産とは|自己破産の方法と破産後の生活の完全ガイド
家賃の債務不履行をした場合
借金返済が難しくなっている場合には、家賃が支払えなくなっている方もいらっしゃいます。
この場合の法律関係について確認しておきましょう。
家賃の支払いが債務
家を賃借する場合には、賃貸人との間で賃貸借契約が結ばれます。
賃借人は物件を使用させてもらう代わりに、家賃の支払をする債務を負います。
家賃の支払が遅れた場合には債務不履行(履行遅滞)になります。
家賃の債務不履行は債務整理でどう扱われるか
家賃の債務不履行があるということは、借金をしている場合と同様に金銭債務がある状態になります。
債務整理をするとどう扱われることになるのでしょうか。
任意整理の場合
任意整理の場合には、対象となる債権者を選んで交渉を行います。
家賃の債務不履行も交渉の対象とすることはできますが、交渉に応じてもらえず、立退きを迫られてしまう場合もあるので、通常は銀行・消費者金融・信販会社などの貸金業者と任意整理をして、家賃の滞納を早めに解消します。
自己破産の場合
自己破産手続きにおいては、すべての債権者を対象に手続きを行います。そのため、滞納している家賃の大家さんには、貸金業者と同様に債権者として手続きに参加してもうことになります。
自己破産手続きに参加した場合には、配当があれば配当をしてもらって、残った分については免責されることになります。
個人再生の場合
個人再生についても基本的にすべての債権者を対象に手続きを行います。住宅ローン債権者を除くことができる特別な手続きがあるのですが、家賃は対象となりません。
自己破産手続きと同様に、大家さんには債権者として個人再生手続きに参加をしてもらい、減額した家賃の分割弁済をすることになります。免除の対象となった部分については債務不履行という形になります。
家賃を受け取らない場合の対抗措置
家賃を滞納した場合で、遅れてでも入金しようすると、大家さん・保証会社の中には全額でないと絶対に受け取らない、と入金を拒否する人がいます。
支払わなければ後述するように家を退去しなければならなくなるのですが、その場合には「供託(きょうたく)」という方法を利用しましょう。
供託とは、お金を受け取らない相手に対して、金銭の支払をしたことにしてくれる制度です。
債務不履行をした場合のリスク
借金を返済せず、債務不履行を行った場合、以下のようなリスクがあります。
遅延損害金の発生
金銭債権の債務不履行に対しては、遅延損害金が発生します。
期限の利益の喪失
貸金業者から100万円借り入れをして、毎月3万円の支払いをしている場合には、毎月の支払をきちんとしていれば、残った分についての請求をされても、「期限が来ていません」と断ることができます。
このような債務者側の利益のことを「期限の利益」と呼んでいます。契約内容次第では、債務不履行が一定期間続くと期限の利益を喪失する場合があり、その場合は一括請求を受ける可能性があります。
担保権の実行
債務に担保がついているような場合には、担保権を実行されることがあります。
車などの引き上げ
自動車ローンを組んで車を購入する場合には、目的物である車に担保がついている状態(厳密には債権者に車の所有権が留保されている状態)になっていることが多いです。
この場合に債務不履行をしたときには、最終的に債権者は車を引き上げ、債権に充てることができます。
自宅から退去
住宅ローンを組んで家を購入するときには、通常、目的物となる住宅に抵当権という担保権が設定されます。
そして、住宅ローン債権者は、住宅ローンの債務不履行があった場合に、抵当権を実行して住宅を競売にかけることができます。競売での売却代金を債務不履行となっている債権にあてることになるのです。
競売をされた場合には、当然自宅から退去を求められるでしょう。
保証人への請求
債務不履行となっている債務に保証人がついているような場合には、債権者は、債務不履行があるときは、保証人に請求します。
「連帯」保証人となっている場合には、連帯保証人は、先に主たる債務者に請求してくださいという抗弁(催告の抗弁)ができないことになっています(現実には、債権者は主たる債務者に請求してから連帯保証人に請求することが通常です。)。
強制履行
具体的には、履行遅滞の債務者に「早く商品を持ってくるように」と請求し、不完全履行の際は「完全な履行(足りないものを補充)するように」と請求するといったことが考えられます。さらに細かく細分化すると下記の方法があります。
直接強制
債務者が任意に債務の履行をしない場合、債権者はその履行を裁判所に請求することができ、国家の執行機関の力(債務名義)によって、債務者の意思にかかわりなく直接に債務内容を実現させる方法です。
代替執行
債務の内容が代替的作為義務(他人が代わってなすことができる義務)の場合に、債権者が第三者(通常は執行官)に債務の内容を実現させ、その費用を債務者から取り立てる方法です。
間接強制
債務を履行しない債務者に対し、一定の期間内に履行しなければ、その債務とは別に金銭の支払を課すことを警告することにより、心理的圧迫を与え、自発的な支払を促す方法です。
追完請求(完全履行請求)
例えば商品に欠陥があった場合は、新品を要求したり、商品を渡すから金銭の支払いを請求するといった行為です。
債務整理が必要な人が知っておくべき給与の差し押さえ
「強制執行といっても借金しかなくて持っていくようなものは何もないよ」と思っていても、実は給与も差し押さえの対象となります。給与は33万円以内の部分については1/4が、33万円を超える部分については全額が強制執行の対象となります。
給与の差し押さえをされると、会社に裁判所から通知がいき、その通知があると会社は差し押さえの対象になった部分については、指定された別の口座に振り込まなければならなくなります。
つまり、給与の一部が受け取れなくなる上に、会社に借金が払えていないことがバレるというリスクを負うことになります。
契約の解除
契約の解除とは、初めから「なかったこと」として扱うもので、もし代金を支払った場合には返還する義務が生じます。
(解除の効果)
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。3 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
引用元:民法第545条
賃貸借契約の契約の解除
賃貸借契約についても債務不履行によって解除の対象となります。
ただ、賃貸借契約については、1日でも債務不履行があったら契約が解除できる、というわけではなく、債務不履行によって信頼関係が破壊された、といえる状態になってはじめて契約を解除することができるとされています。
どの程度の債務不履行があったら信頼関係が破壊されたといえるかはケースバイケースですが、3ヶ月分程度の債務不履行があると、信頼関係が破壊されたとして、契約が解除されることになります。
これによって、自宅から退去をしなければならなくなります。
損害賠償の請求
例えば、届いた野菜が腐っていた為に食中毒になった場合や、旅行券の発送が遅れたため、目的の飛行機に乗れなかった場合などが該当します。
まとめ
債務不履行に関する内容は以上になりますが、商品・サービスを提供する側も購入する側も、どちらも債務不履行がおこれば今回のような行動をとる事が出来ます。
支払いができなくなったなどの場合には、弁護士に相談するなどして、債務整理等適切な対応をして頂ければと思います。
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