債務整理のデメリットとは?手続きしてから後悔しないために知っておくべき9つのこと
債務整理は、国が認めた借金問題の解決方法です。
借金が大幅に減額されたり、免除されたりと生活を立て直すための強力な味方になってくれます。
しかし、大きなメリットがある反面「信用情報に傷がつく」「財産を失う可能性がある」といったデメリットも存在します。
実際、債務整理のデメリットが気になり、一歩踏み出せていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、任意整理・個人再生・自己破産のデメリットをそれぞれ詳しく解説します。
債務整理のデメリットを正しく理解し、後悔のない解決を目指しましょう。
【早見表】債務整理によって生じるデメリットの一覧
債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法があります。
それぞれの手続きで、どのデメリットが発生するのか、一覧表を確認しておきましょう。
|
デメリット |
任意整理 |
個人再生 |
自己破産 |
|
事故情報が登録される |
〇 |
〇 |
〇 |
|
保証人に影響する |
△(回避可能) |
〇 |
〇 |
|
官報に掲載される |
✕ |
〇 |
〇 |
|
財産を処分される |
✕ |
△(回避可能性あり) |
〇 |
|
対象外の債務がある |
✕ |
〇 |
〇 |
|
一部の職業や資格が制限される |
✕ |
✕ |
〇 |
|
引越しや旅行などが制限される |
✕ |
✕ |
△(管財事件のみ) |
|
郵便物を確認されることがある |
✕ |
✕ |
△(管財事件のみ) |
|
数万~数十万円の弁護士費用がかかる |
〇 |
〇 |
〇 |
それぞれのデメリットが、具体的にどう影響するのか、これから詳しく見ていきましょう。
債務整理をする場合のデメリット|それぞれの内容と生活への影響
債務整理をする場合の9つのデメリットについて、その内容と生活への影響を詳しく解説していきます。
1.事故情報が登録される(共通)
債務整理をおこなうと、信用情報機関に事故情報が登録されます。
信用情報機関とは、ローンやクレジットカードの契約内容や支払い状況などの情報を記録・管理している機関のことです。日本には主にCIC、JICC、KSCという3つの機関があります。
そして、金融機関やカード会社は、ローンやクレジットカードの申し込みを受けた際、信用情報機関に記録を照会して、申込者の返済能力などをチェックします。
そこで、債務整理をしたことがバレて、ローンやクレジットカードの契約を断られてしまうのです。
また、信用情報に傷がつくと「分割払いが認められない」「賃貸契約ができない」「保証人になれない」といった不利益が生じることもあります。
なお、事故情報が消えるまでの期間は、手続きの種類や信用情報機関によって異なりますが、およそ5年~7年程度です。
2.保証人に影響する(個人再生・自己破産)
借金に保証人がいる場合、個人再生・自己破産をおこなうと大きな迷惑がかかる可能性があります。
個人再生・自己破産によって債務者が返済できなくなると、保証人が一括請求を受けることになるからです。
なお、個人再生や自己破産は裁判所を通じておこなう手続きであり、「債権者平等の原則」のルールが適用されます。
債権者平等の原則とは、お金を貸してくれた人は、全員平等に扱わなければならないという決まりです。
そのため、「保証人がいるこの借金だけは手続きから外す」ということができません。
もっとも、任意整理なら保証人への請求を回避できます。
任意整理は裁判所を通さず、債権者と直接交渉する手続きです。
そのため、どの借金を整理の対象にするかを選ぶことができます。
保証人がついている借金を交渉の対象から外し、これまでどおり返済を続ければ、保証人に迷惑がかかる事態を避けることが可能です。
3.官報に掲載される(個人再生・自己破産)
個人再生・自己破産に踏み切る場合は、官報に掲載されることもデメリットといえるでしょう。
官報とは、国が発行している新聞のようなもので、法律の改正や裁判所からのお知らせなどが掲載されます。
個人再生や自己破産をすると、官報に氏名と住所が2回から3回掲載されます。
しかし、一般の人が官報を目にする機会はほとんどないので、債務整理したことがバレる可能性は低いといえるでしょう。
4.財産を処分される(個人再生・自己破産)
「債務整理をすると、家や車まで全部取られてしまう」というイメージがあるかもしれませんが、実際には手続きによって大きく異なります。
- 任意整理:財産を処分されない
- 個人再生:財産の処分を回避できる可能性がある
- 自己破産:財産を処分される
自己破産では、一定以上の価値がある財産は処分されます。
具体的には、下記のような財産が処分対象になります。
- 現金:99万円までは手元に残すことができる
- 預貯金:合計残高が20万円を超える場合、超えた部分が処分の対象となる
- 持ち家:価値にかかわらず、原則として処分される
- 自動車:ローン完済かつ時価が20万円以下であれば、手元に残せる可能性が高い
- 生命保険:解約した際に戻ってくるお金が20万円を超える場合、保険は解約され、そのお金が配当に回される
重要なのは、自己破産しても「全ての財産を失うわけではない」ということです。
生活に必要な家財道具や、99万円までの現金は残せるため、自己破産をしても明日からの生活ができなくなるわけではありません。
一方、個人再生では、自己破産のように財産を強制的に処分されることは原則ありません。
住宅ローン特則という制度を使えば、マイホームを手放さずに手続きを進めることも可能です。
ただし、「清算価値保障の原則」というルールがあります。
清算価値保障の原則とは、「もし自己破産した場合に債権者に分配される金額以上の額は、最低でも返済しなければならない」という決まりです。
つまり、多くの財産を持っていると、その分だけ毎月の返済額が高くなる可能性があります。
また、自動車ローンなどが残っている場合は、車が引き揚げられることもあります。
5.対象外の債務がある(個人再生・自己破産)
個人再生や自己破産は借金が軽減・免除される強力な手続きですが、一部の債務は対象外です。
「非免責債権」に関しては、裁判所での手続きを終えたあとも支払い続けなければなりません。
代表的な非免責債権は以下のとおりです。
- 税金や社会保険料(国民健康保険料、年金など)
- 養育費
- 罰金や反則金
- 悪意で加えた不法行為による損害賠償金
非免責債権がある場合でも、債務整理そのものが禁止されるわけではありません。
むしろ、債務整理によってほかの借金問題を解決すれば、非免責債権に対しても余裕をもって対応できるようになるはずです。
6.一部の職業や資格が制限される(自己破産)
自己破産の手続き中は、一時的に特定の職業に就けなくなったり、資格を使えなくなったりします。
開始決定から免責許可決定までのおよそ3ヵ月から6ヵ月程度にわたって制限を受けるため、人によっては大きなデメリットになるでしょう。
制限の対象となる職業には、以下のようなものがあります。
- 弁護士、税理士、公認会計士などの「士業」
- 警備員
- 生命保険募集人
- 旅行業者
- 質屋
- 貸金業者
なお、自己破産を理由にした解雇は禁止されています。
肩身の狭い思いをするかもしれませんが、職業制限を受ける場合は自己破産することを早めに伝えておきましょう。
7.引越しや旅行などが制限される(自己破産)
自己破産する際には、引越しや旅行などが制限される点にも注意が必要です。
自己破産には、財産がほとんどない場合に選択される「同時廃止」と、一定の財産がある場合や調査が必要な場合に選択される「管財事件」の2種類があります。
引越しや旅行の制限がかかるのは、「管財事件」になった場合のみです。
管財事件になると、破産管財人が選任されて財産の調査・管理が始まるので、いつでも連絡が取れる体制を整えておく必要があります。
ただし、裁判所の許可があれば、引っ越しや旅行をしても問題ありません。
8.郵便物を確認されることがある(自己破産)
自己破産をおこなう場合は、郵便物を確認されることがあります。
管財事件になると、手紙やはがきなどは、一時的に破産管財人のもとへ転送されます。
そして、未申告の財産がないか、申告が漏れている債権者はいないかなどをチェックされるわけです。
なお、管財人には守秘義務があり、個人的な手紙の内容を他人に漏らすようなことは決してありません。
あくまで財産調査という仕事のために、必要な情報だけを確認しているのです。
9.数万~数十万円の弁護士費用がかかる(共通)
債務整理は、専門的な法律知識が必要なため、弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。
依頼先・依頼内容によっても異なりますが、弁護士費用の目安は以下のとおりです。
|
債務整理の種類 |
弁護士費用の目安 |
|
任意整理 |
5万円~15万円程度(交渉する会社数による) |
|
個人再生 |
50万円~90万円程度 |
|
自己破産 |
50万円~130万円程度 |
上記の表をみると弁護士費用が高いと思うかもしれません。
しかし、ほとんどの法律事務所では、無料の初回相談を実施しており、費用の分割払いに応じてくれます。
また、弁護士に依頼すると、債権者への返済が一時的にストップするため、その間に浮いたお金を弁護士費用の分割払いに充てることができます。
収入・資産が一定基準以下の方であれば、法テラスを利用してみるのもよいでしょう。
法テラスは弁護士費用を立て替えてくれ、月々5,000円~1万円程度の無理のない範囲で返済していくことが可能です。
債務整理をしたとしても実際には発生しないデメリットの具体例
ここでは、債務整理に関するよくある誤解を解説します。
1.「会社をクビになる」ことはない
債務整理を理由に、会社を解雇されることはありません。
借金はあくまで個人の問題であり、会社の業務とは関係ありません。
労働契約法で、会社が従業員を解雇するには「客観的に合理的な理由」が必要と定められており、個人の借金問題はこれに当たらないのです。
また、会社に借金をしている場合や職業・資格制限の対象になる場合などを除き、そもそも債務整理をしたことが会社に知られるケースは多くありません。
2.「選挙権がなくなる」ことはない
債務整理をしたからといって、選挙権がなくなることもありません。
選挙権は、日本国憲法で保障された国民の基本的な権利です。
債務整理後も選挙で投票したり、選挙に立候補したりすることはできます。
3.「戸籍に登録される」ことはない
「戸籍や住民票に、自己破産した記録が一生残る」というのも、完全な誤解です。
戸籍は身分関係を、住民票は居住関係を証明するための公的な書類です。
どちらにも、個人の財産や借金に関する情報が記載されることはありません。
したがって、これらの書類から家族や他人に債務整理の事実が知られることはないので、安心してください。
債務整理のデメリットを回避したいなら早めに弁護士に相談しよう
借金がどうにもならないときは、債務整理を選択するのも選択肢のひとつですが、さまざまなデメリットがあるのも事実です。
しかし、専門的な知識を有する弁護士のサポートがあれば、デメリットの影響を最小限に抑えることもできます。
- 個々のケースに見合った債務整理の方法がわかる
- 債権者からの督促が止まる
- 面倒な手続きを全て任せられる
- 家族や職場に債務整理がバレにくくなる
ただし、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
弁護士にはそれぞれ得意分野があるので、債務整理を得意としているかどうかをチェックしたうえで相談するようにしましょう。
さいごに|デメリットも多いが債務整理には借金を減らせるメリットもある
ケースバイケースですが、債務整理には下記の9つのデメリットがあります。
- 事故情報が登録される(ブラックリストに載る)
- 保証人に影響する
- 官報に掲載される
- 財産を処分される
- 対象外の債務がある
- 一部の職業や資格が制限される
- 引越しや旅行などが制限される
- 郵便物を確認されることがある
- 数万~数十万円の弁護士費用がかかる
デメリットを正しく理解していれば、今置かれている状況でどの手続きが最善か判断できるようになります。
自分だけでは判断が難しい場合には、無料相談に対応している法律事務所に問い合わせてみましょう。
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