借金返済を任意整理を用いて賢く行うための方法
毎月給料をもらっていても、借金の利息が多くてお金を自由に使えない人は多いのではないでしょうか。
任意整理を使えば、借金の利息はもちろん場合によっては元金まで減らせる可能性はあります。
また任意整理の場合、他の債務整理(借金を減らせる方法)と違って自宅や車などの財産を残したまま借金を減額することも不可能ではありません。
ここでは、
- ・任意整理の効果やメリット・デメリット
- ・専門家に依頼をした時の費用
- ・債務整理以外の債務整理(自己破産・個人再生)の方法
について丁寧に解説していきますので、借金生活で苦しんでいる人の参考になれば幸いです。
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任意整理とは借金を減額できる方法
任意整理とは、裁判所の法的手続きすることなく、債務者(お金を払う義務のある人)と債権者(金融機関などのお金をもらう権利のある人)との間の話し合いで行われる法的手段です。
ただ、債務者個人が業者と直接交渉を行うのは難しいため、専門家を通して返済方法の見直しをして、借金の減額交渉が行うのが通常でしょう。
債権者とのやりとりのみで債務の処理について見通しを付けることができる反面、あくまで話し合いでの解決であるため、債権者から同意が得られなければ任意整理は成立しません。
そのため、債権者側が強気な態度を示してくるケースもありますが、専門家に依頼することである程度の目処はつけられるのが通常です。
ただし、あくまで話し合いであるため、大幅な借金の減額が望めるものではなく、基本的には利息のカットや支払方法での譲歩を引き出すのがせいぜいでしょう。
任意整理が借金に対してもたらす効果3つ
任意整理は借金の返済方法について見通しを立てることを目的としており、今後の支払い方法の見直しについて交渉を行うことで債務者の返済負担を減らすことを主眼とする手続きといえます。
また、仮に債務者が債権者に対して過払い利息の返還を求めることができる場合、当該過払金の処理も併せて協議されるのが通常です。これらについて、具体的にどのような効果をもたらすのかを確認していきましょう。
①過払い金返還の可能性がある
任意整理の処理の中で借金の減額を求める場面としては、過払い金(※)の処理を一括して行う場合が考えられます。もし債務者において過払い金が発生していれば、その金額に応じて、貸金との精算を求めるのが通常です。
(※)過払い金…不当な金利で貸付を行われていた場合、正当な金利で利息を計算しなおした時の差額分
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②利息の免除をしてもらえる
任意整理では、債権者と2つの利息の免除についても交渉します。交渉に成功すれば以下の利息について減額・免除をしてもらうことができます。
- 経過利息…任意整理を弁護士に依頼してから、手続き完了までに発生する利息
- 将来利息…任意整理をした後に発生する利息
【免除される金額の例】
債務残高が300万円あり、金利が15%の場合は最大月々35,500円の利息の免除ができます。
③遅延損害金を免除してもらえる
任意整理では遅延損害金も協議の対象です。遅延損害金とは、契約の期日までに借金の返済を遅れた場合、滞納日数と借入残高に応じて払う損害賠償金のこと。遅延損害金は「借入残高×遅延損害年率×0.01×滞納日数÷365日」で計算できます。
利息制限法上は、遅延損害年率は金利の1.46倍が上限とされていますが、貸金業者は遅延利息を最大20%に設定している場合が多いです。
【300万円を借りて60日延滞した場合】
利率を20%で計算した場合、遅延損害金は、300万円×20×0.01×60÷365=98,630円となります。
任意整理のメリット・デメリット
任意整理の特徴は手続きの自由度の高さです。任意整理は債権者間との自由な交渉で債務整理を行うため、対象とする債権者を選べます。表に任意整理のメリット・デメリットをまとめました。
メリット |
デメリット |
手続きにかかる手間が少ない |
債権者との同意が得られなければ不成立 |
債権者を自由に選べる |
借金の減額の幅が少ない |
借金の理由を問われない |
個人情報機関への事故登録(5~7年間) |
住宅ローンを残せる(自宅を残せる) |
クレジットカード・ローンを利用できない |
職業制限されない |
強制執行を回避できない |
財産を維持できる |
― |
周囲にバレない |
― |
(関連記事:任意整理のデメリットとメリットの正しい知識まとめ)
任意整理を利用する条件は3~5年で返済できる人
任意整理後の返済期間は一般的には3~5年といわれています。そのため、任意整理後に借金の返済が見込めることが任意整理を利用するための事実上の条件と言えるでしょう。
任意整理で借金の減額を行う流れ
任意整理の手続きの流れをお伝えします。
専門家からの受任通知を債権者へ送付する
専門家へ依頼をすれば各債権者へ受任通知(専門家が借金について依頼を受けたという通知)を郵送します。債権者が受任通知を受け取った段階で、債権者からの督促が止まります。
手続きをスムーズに進めるための準備
専門家へ依頼する前に、借金の整理をする債権者の一覧と、各債権者との借入状況がわかる通知などがありましたら事前に用意しましょう。
取引履歴の開示請求
債権者へ受任通知を送付したら、今度は各債権者へ取引履歴の取り寄せを行います。取引履歴とは、債務者と債権者の借入や返済履歴などのやりとりの履歴のこと。任意整理をする上で必要な書類です。
引き直し計算
取引履歴を元に引き直し計算(※)を行い、実際に支払った金額との差額分を計算します。
(※)引き直し計算…正しい金利を元に今までの返済総額や利息を計算しなおす方法のこと。
(関連記事:過払い金計算方法|過払額がすぐに分かる引き直し計算の手順)
債権者との交渉
引き直し計算が完了次第、各債権者との交渉を行います。交渉の内容は以下です。
- 過払い金を元にした借金の精算・減額交渉
- 手続き期間中と手続き完了後の利息分のカット
- 手続き完了後の残高の支払い方法
残高の支払い方法に関しては5年程度が返済期間の限界といわれていますが、一般的に債権者が飲み込みやすい条件は3年間で36回払いが返済方法といわれているようです。各債権者との交渉が妥結し、書面化することで任意整理の処理は完了です。
任意整理を弁護士に依頼をするメリットと費用相場
以下が弁護士に依頼をするメリットと費用相場です。
メリット
- 家族に内緒にできる
- ・債権者からの催促が止まる
- スムーズな取引ができる
- 交渉力が高いため自分でやるより借金の減額がされる
- 手続きや交渉を任せられる
任意整理を利用する時にかかる専門家の費用相場
専門家に任意整理の依頼をした時にかかる費用の内訳は以下です。
- 着手金:1社につき約0~2万円
- 報酬金:1社につき約0~2万円
- 減額報酬:減額した借金の約10%
※過払い金のある時には発生しない費用 - 過払い報酬:回収できた過払い金の約20%(交渉)~25%(裁判になった場合)
(関連記事:任意整理の費用相場と任意整理の費用を抑える方法)
費用相場の例
任意整理は消費者金融などの貸金業者の数で専門家に払う金額は変わってくるため費相場は明確にできません。目安として以下に例をつくったので参考にしてください。
【5社の貸金業者から借りている場合】
交渉する会社が5社の場合は、着手金は2万円×5社=10万円、報酬金は2万円×5社=10万円です。減額した合計が65万円なら減額報酬金は10%の65,000円。
※上述した通り、過払い金がある場合には発生しません。
この場合の専門家費用は合計で約265,000円です。
弁護士の費用が払えない人の解決方法
経済的に苦しくて弁護士費用の工面ができない人は、「法テラス」を利用しましょう。法テラスは、専門家の費用を立て替えてもらうことができ、手続きが完了後に、立て替えた分の費用を分割で支払えます。
任意整理をする前に知るべき知識
任意整理を行う前に知っておくべき事前知識をまとめました。
任意整理で借金減額できる金額の例
過払い金のある場合の任意整理した時にどれだけ借金減額できるかシミュレーションしてみました。
債権者 |
任意整理前の借入残高 |
過払い金 |
任意整理後の借入残高 |
A社 |
120万円 |
30万円 |
90万円 |
B社 |
80万円 |
0円 |
80万円 |
C社 |
50万円 |
5万円 |
45万円 |
D社 |
60万円 |
10万円 |
50万円 |
E社 |
70万円 |
20万円 |
50万円 |
借入残高に対して、引き直し計算を行うと上の表の結果になります。任意整理前の借入残高の総額は380万円ですが、過払い金があると65万円も減額できました。つまり、借入残高の総額は315万円になります。
【月の返済を10万円にして各社の金利を15%で計算した場合と利息が免除された場合の比較】
利息の免除を行った場合、返済期間は32ヶ月間であり、返済総額は利息がつかないため315万円です。
一方、利息の免除がされなかった場合の返済期間は41ヶ月となり、利息の総額は878,801円となるため返済総額は402万円になります。
今回のケースでは、任意整理を行うことで、過払い金の免除額65万円、利息の免除額87万円、返済期間を9ヶ月短縮できたことが分かりました。
任意整理の期間
任意整理に期間は貸金業者の数で違いますが、大体3ヶ月~半年かかります。
過払い金が発生している人を見抜く方法
2010年より前に消費者金融で借入を行っていた場合、過払い金を受け取れる可能性があります。しかし、債権者(金融機関)との最後の取引から10年経過していると過払い金は時効により消滅している可能性があります。時効が成立しているかどうかは取引履歴を確認してください。
【関連記事】
生活保護受給中でも任意整理できる
生活保護でもらっているお金を、借金の返済に充てるのは問題だと感じられますが、受け取ったお金に関しての使い方は法律で制限されている訳ではないので任意整理自体は可能です。
ただ、住宅ローンの返済に充てることはできないので注意してください。
(参考:「生活保護」に関するQ&A|厚生労働省)
友人から借りたお金も任意整理できる
貸金業者以外で友人からお金を借りた場合でも任意整理の対象とすることは可能です。しかし、友人から借りたお金を返さないと人間関係に亀裂が入ってしまうため、よく話し合って返済するようにしてください。
任意整理以外の自己破産と個人再生も考える
多額の借金がある場合には自己破産や個人再生といった法的な債務整理を利用した方が適切な場合もあります。
自己破産
自己破産は、借金の帳消しを目的とする裁判所での破産手続きのことです。破産手続きの中で裁判所の免責決定を得ることで、非免責債権以外の債務を免除されます。
破産手続きでは破産者の支払い能力を判断するために、破産者の借金の金額や収入などをチェックします。破産者に、支払い能力がある(3年以内で返済できる)と判断される場合には破産手続きの開始決定がされませんが、破産が認められないケースは極めて稀といえるでしょう。
免責手続きにおいては、破産者が借金を作った理由を問われます。ギャンブルや風俗など、借金を作った経緯に問題がある(免責不許可事由)に該当する場合、免責(借金の免除の許可)がおりない場合もありますが、よほどのことがない限り免責の決定はおります。
【関連記事】
個人再生
個人再生は、裁判所を介して借金の減額を行い減額後の借金の返済計画を立てるための手続きのこと。個人再生で減額される借金の幅は最大で借金の10分の1です。【Plum:従前から何度も修正しています。下表でも最低弁済基準が10%と記載されており、通常の注意を払えば誤記は生じないはずです。本当に気をつけてください。】
個人再生において減額される借金(小規模個人再生) |
|
借入総額 |
最低弁済基準 |
100万円未満 |
債務額 |
100万円~500万円未満 |
100万円 |
500万円~1500万円未満 |
20% |
1500万円~3000万円未満 |
300万円 |
3000万~5000万円未満 |
10% |
個人再生を利用するには、減額後の借金を返せるだけのある一定以上の安定した収入・返済を3~5年で行えるのかが問われます。減額できる借金の額は任意整理と比べ高額ですが、あくまで法的な債務整理手続きであるため、私人間で行われる任意整理のような自由さはありません。
なお、自己破産も個人再生も主債務者本人は免責されますが、保証人が免責されることはありません。そのため、債権者から保証人に対して請求がなされることになる点は注意してください。
【関連記事】
個人再生と自己破産の手続きにかかる費用
個人再生と自己破産は裁判所を介した手続きになるため、専門家への依頼料とは別に費用が上乗せされます。
①専門家への費用相場
- 個人再生:約30~50万円
- 自己破産:約20~80万円
②裁判所への実費
裁判所の費用は、個人再生と自己破産では、費用の種類が異なります。個人再生における裁判費用は、【主に収入印紙代・官報掲載料・郵便切手代・個人再生委員への報酬】です。
<個人再生の裁判所実費>
- 収入印紙代:1万円
- 官報掲載料:1万2千円
- 郵便切手代:1600円
- 個人再生委員への報酬:約25万円(弁護士に依頼する場合はかからない)
それに対し、自己破産では収入印紙代、予納郵券代、予納金が裁判所にかかる費用になります。
<自己破産の裁判所実費>
- 収入印紙:1,500円
- 予納郵券代:3,000円~15,000円
- 同時廃止事件における予納金:10,000円~30,000円
- 少額管財事件における予納金:20万円~
- 管財事件における予納金:50万円~
【関連記事】
自己破産や個人再生に向いている人
個人再生や自己破産に適切な人は、借金が高額な方や、過払い金の発生の金額が少ない人です。
【自己破産・個人再生を使うべき人】
自己破産:借金の元金が減らなくて毎日の生活に苦しんでいる人
個人再生:借金は高額だけど、3~5年で返済の見込みがある人
任意整理を使うのは難しいなら自己破産・個人再生を使うのも検討してみてください。
まとめ
任意整理で借金の整理をすべきかどうかは、借金を抱えている人の事情によって異なります。
今回の記事が任意整理を検討されている方の、参考になれば幸いです。
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