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譲渡担保とは|身近な譲渡担保の具体例と有効に設定する方法
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譲渡担保とは|身近な譲渡担保の具体例と有効に設定する方法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二
監修記事
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譲渡担保(じょうとたんぽ)とは、債務者または第三者(物上保証人)の財産の所有権その他の財産権を担保として債権者に譲渡し、債務が弁済された場合はその権利が設定者に復帰し、債務不履行の場合はその権利を債権者に帰属させることで債務を弁済したものとする形の約定担保です。

 

民法に規定はありませんが、判例・実務上認められて広く利用されています。

譲渡担保には、種類・所在場所および量的範囲を指定してその範囲を特定した複数の動産を一個の集合物として譲渡担保の目的物とする「集合動産譲渡担保」と、債務者が有している第三者への複数の特定された債権を一個の集合した債権として譲渡担保の目的物とする「集合債権譲渡担保」があります。

譲渡担保権は、債務者が破綻した場合もその効力が失われないので、有効な債権回収手段とされています(債務を返済すると所有権は債務者に戻ります)。今回は、譲渡担保について分かりやすくご説明するとともに、身近な具体例をご紹介いたします。

 

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譲渡担保の基本的な知識

譲渡担保をざっくりと説明すると、金銭は持っていないけど担保にできる物件(物や債権など)は持っているから、その所有権を一旦債権者に渡して、両者の間で決めた期間内に被担保債権を弁済すればよいという制度です。
 
法律に譲渡担保の定めはなく、判例または慣習上の担保物権と理解されており、その法的構成については2つの考え方が対立しています(所有権的構成・担保権的構成)。
 

譲渡担保は売買契約ではなく消費貸借契約

譲渡担保の特徴として、その契約は売買契約とならず、基本的に消費貸借契約(※)となることが挙げられます。

 

消費貸借契約となるので、例えば集合物の内容が譲渡担保権設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予測されている場合、設定者はその通常の営業の範囲内で譲渡担保の目的動産を処分する権限が付与されていると認められています(最判平成18年7月20日)。
 
なお、消費貸借契約とは言っても、債務が弁済されなければ債権者に確定的に権利が帰属し、債務が弁済されれば目的物の権利は担保提供者(債務者など)に戻るという点に変わりはありません。
 

消費貸借契約とは

消費貸借契約とは、借主が目的物の種類・品質・数量が同じものを貸主に返すという内容の契約で、分かりやすいのが金銭消費貸借契約です。例えば銀行から10万円借りて返すというのがこの典型例ですが、これは最初に借りた10万円を使ってしまって後ほど準備した10万円を返すことになるので、最初の10万円と違う10万円を返す=種類・品質・数量が同じものを返す、という契約になります。
 

あらゆる物件に設定できる

譲渡担保は不動産や動産などあらゆる物件に設定することができますが、物件によってどの担保が適しているかは異なるので、それぞれに合った担保を選択するのが重要なポイントになります。
 
以上が譲渡担保の概要となりますが、正直なところ、このような説明ではよく分からない方が大半だと思います。ここでは、身近な具体例とともに、譲渡担保の使い方をご説明いたします。
 

譲渡担保が利用される場面

例1:運輸業のタクシー(動産の譲渡担保)

運輸業を営むA社は、自社で所有していたタクシー40台を1台あたり50万円の評価(合計2,000万円)で、借金をするため消費者金融B社へ担保として差し出しました。

しかし、B社にタクシーそのものを引き渡してしまうと、A社は運輸業務ができなくなってしまいます。そこで、A社は譲渡担保を利用して、B社へタクシー(=集合動産)の所有権を移転する代わりにそのタクシーを借りて、業務を行うことにしました。
 

例2:売掛金(債権の譲渡担保)

製造業を営むC社は、継続的な販売先に対しての売掛金を、D銀行に対して担保として差し出しました。売掛金をまとめると常に8,000万円以上あるのですが、急に大口の注文が入り、仕入れや製造のためすぐにD銀行から5,000万円の融資を受ける必要があったのです。そこで、C社は売掛金(=集合債権)を譲渡担保として、D銀行から融資を受けて受注案件を進めることにしました。
 
担保と聞くと不動産や預金・有価証券が一般的かと思いますが、まとまった額の融資を受けるためには大抵の場合担保が必要になり、めぼしい担保物件を有していない企業等が次の手段として考えるのが譲渡担保です。
 
譲渡担保は動産・不動産・債権と様々なものを対象とすることができるため、担保としての不動産や現金・証券はなくても、機械や車両はある、商品の在庫は潤沢にある、売掛金ならすぐに譲渡できるといった個々の事情に合わせて設定が可能になっています。
 
譲渡担保の場合、契約が締結されると担保の目的物の所有権は債権者へ移転しますが、担保設定者(債務者等)はこの目的物を「債権者から借りている」という形で使用することができるようになっており、きちんと債務を弁済できれば所有権も戻ってくるようになっていますから、非常に便利な制度であると言えるでしょう。
 

法的な性質

譲渡担保の法的性質には、様々な見解が存在しています。いわゆる、「所有権的構成」と呼ばれる考え方と、「担保権的構成」と呼ばれる考え方です。
 
法律の専門家でなければ特に意識する必要はないので詳しい内容は割愛しますが、どちらの見解であっても、担保物件の使用および収益について担保権設定者(債務者等譲渡担保を差し出す人)は担保物の維持および保存の義務があります。
 
なお、判例は基本的に所有権的構成の立場と考えられていますが、事案によっては担保の実質に即して修正を加えた判断をすることもあります。
 

所有権者でも権利を行使しない義務

譲渡担保権者(譲渡担保を差し出された人)は、形式上は目的物の所有権者になりますが、譲渡担保の契約範囲外で権利を行使しないという義務があります。
 
所有権者でも権利を行使しない義務というのはちぐはぐな感じもしますが、要は目的物が社長の自宅不動産であったり、運送会社のトラックであったりといった場合は、特約がない限り債務者(譲渡担保設定者)に占有・使用させる趣旨であると推定されるので、そのような場合は所有権者だからといって勝手に目的物を処分したりすることはできないということです。
 
もっと簡単に言えば、原則として譲渡担保を設定する際にはその目的物を債権者・債務者どちらが占有等するのかについては両者の合意で自由に決定できますが、そのような合意がなくても、一定の目的物については担保権者が権利を乱用してはいけないという義務ということになります。
 

占有改定の引き渡し

譲渡担保は所有権等を債務者から債権者に移転する契約なので、債権の場合は通知・承諾(民法467条)、動産の場合は目的物の引き渡し(民法178条)、不動産の場合は登記(民法177条)が必要になるのですが、例1のタクシーのように、目的物を債務者が占有・利用する場合は引き渡してしまうと不便です。

そこで、実際に目的物を債権者に引き渡してまた債権者から引き受けるといったやり取りを省略して、直ちに債権者から借り受けたという事実関係があったことにします。このように、債務者が自己の占有する担保目的物を以後債権者から借り受けると表示する(本人のために占有するという意思を表示する)ことを、「占有改定」による引き渡しといいます(民法183条)。
 

 

譲渡担保の目的物

次に、譲渡担保の目的物、担保できるものについて解説していきます。
 

①動産

動産とは、不動産(原則として土地及びその定着物で建物を含む)以外の有体物をいいます(民法86条)。

法律上抵当権の目的物とできる動産は、自動車など登記・登録制度が存在するごく一部のものに限られているのですが、譲渡担保の場合は目的物が譲渡可能であれば足りるので、他の担保権の目的物にできない動産であっても譲渡担保の目的物とすることができます。
 

②不動産

不動産については質権や抵当権等の設定が民法上認められていますが、これらの権利を実行する場合は民事執行法に従って手続きを進めなければなりません。

その際、手続きに時間が掛かったり目的物の価値が低く見られたりするケースもあるのですが、譲渡担保の場合、債権者は競売手続きなどによらず目的物の所有権を主張することができるので、簡易迅速に債権の回収ができるというメリットがあります。

また、譲渡担保設定者としても、無事に債務を弁済できれば所有権が戻ってくることになるので、登記が債権者にある以上は第三者等に不動産を取得される危険が低いという利点があります。
 

③財産権・債権

譲渡担保の場合は、目的物が譲渡可能でありさえすればいいので、財産権や債権もその目的物とすることができます。例えば売掛金などの債権、ゴルフ会員権や特許権などの財産権も、譲渡担保の目的物となりえます。

 

譲渡担保の取得方法

①動産の場合

動産は、債権者に担保物を引き渡すと債務者による使用継続が不可能になってしまうので、譲渡担保のメリットがなくなってしまいます。そこで、動産の場合は担保物を債務者が債権者へ引き渡すことが、譲渡担保の対抗要件(権利の変動を当事者以外の第三者に対して主張するための法律要件)となります。このとき、先に述べた「占有改定」(民法183条)が利用されます。
 
まず譲渡担保権者は、目的物を債務者等の譲渡担保設定者に預けたままにしておき、継続した使用ができるようにしておきます。その後、担保設定者が「譲渡担保権者のために占有します」という意思を表すことで占有改定による引き渡しが成立します。
 
例えば担保設定者が担保物件に公示プレートをつけて第三者に対する担保権の設定を公示することによって、担保権者が引き渡しを受けていることを示すのが占有改定の一番簡単な方法です。

ただ、公示プレートだけでは外部への明示として不十分であることから、取引の安全を確保する目的で、法人による動産譲渡時には動産譲渡登記ファイルへの登記が民法178条の引き渡しと同様の意味を持つようになりました。
 
これらの点について、詳しくは平成16年に改正された「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」が規定しています。
 

②不動産の場合

不動産の譲渡担保は、登記(177条)が必要になるため、登記を申請する場合には「譲渡担保」を原因とした所有権移転のための登記を行います。

登記申請書は法務局からダウンロードできますが、譲渡担保専用の用紙が準備されているわけではないので、売買等の所有権移転の用紙を使用し登記原因を「譲渡担保」とすれば問題ないかと思います。

なお、登記をしても引き渡しが必要になるわけではないので、担保設定者が引き続き不動産を使用することは可能です。
 

③債権の場合

債権の場合は、債権譲渡の方法によって譲渡担保権を実行します。詳しくは後述します。

 

譲渡担保の法律関係

①債権者の保有義務

先に述べたように、担保権者である債権者には譲渡担保目的物の所有権が契約締結と同時に移転することになりますが、基本的にその目的物を勝手に処分することはできません。

目的物の所有権移転はあくまで担保としての所有権移転なので、担保設定者である債務者等が債務不履行をして初めて処分権を手にするだけであり、担保権者には原則として弁済期まで目的物を保有しておく義務が課されます。

また、債権者は設定者に対して目的物を担保目的以外には利用しないという契約上の義務を負うことになります。
 

②債権者が担保物を第三者に譲渡した場合

それでは、債権者が債務の弁済期の到来前にその目的物を第三者に譲渡してしまうと、所有権は誰のものになるのでしょうか。

基本的には、債権者が所有権を有する以上、債権者から目的物を譲り受けた第三者は善意・悪意を問わず所有権を有効に取得するとされています(大判大正9年9月25日)。

事例

法的構成

動産の場合

不動産の場合

担保権者が第三者に対して担保目的物を売却した場合

所有権的構成(判例)

第三者が所有権を取得

第三者が所有権を取得

担保的構成

第三者は所有権を取得しない
ただし、192条により完全な所有権を取得しうる

第三者は所有権を取得しない
ただし、94条2項類推適用により所有権を取得しうる

担保権者が第三者に対して目的物に譲渡担保を設定した場合

所有権的構成(判例)

第三者が所有権(譲渡担保権)を取得

第三者は所有権(譲渡担保権)を取得

担保的構成

第三者が譲渡担保権を取得

第三者は原則として譲渡担保権を取得

 
登記費用の関係で、実務上は不動産譲渡担保契約の際には所有権移転請求権仮登記というものを利用することが多いのですが、この場合は登記記録上の所有者は担保権設定者のままで、担保権者は所有権移転請求権を有しているにすぎません。
 
ここからさらに所有権移転登記をして債権者に所有権を移転する場合には、債権者が無断で第三者に譲渡・売却等をするおそれがあるので、担保設定者は自分のために所有権移転請求権仮登記をしておくのがおすすめです。

所有権移転請求権仮登記のある不動産は、それを売買等する際に登記記録上の所有者と仮登記者に所有権の存在に関する確認と担保提供意思の確認が必要になるため、無断での処分を防ぐのに適しています。
 
なお、動産の場合は目的物を占有している人によって対策が変わります。担保設定者が占有している場合は無断での処分は起こりにくいですが(設定者も勝手に処分することは原則NGです)、担保権者が占有している場合に無断処分の危険性がある場合はこちらも登記を検討してみるのが良いかもしれません。
 

③債権者の一般債権者の差し押さえ

譲渡担保設定者Aさん、譲渡担保権者Bさんがいて、Bさんの債権者(一般債権者)Cさんがいたとします。譲渡担保の目的物である動産をAさんが占有し利用している場合は、Cさんがこれを差し押さえることができませんが、Bさんが目的物である動産を占有している場合や、Bさん名義に移転登記を済ませてある不動産の場合は、Cさんはこれを差し押さえることができるとされています。
 
このとき、譲渡担保の被担保債権の弁済期前にCさんが差し押さえを行った場合、少なくともAさんが弁済期までに債務の全額を弁済して目的不動産を受戻せば、Aさんは第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることができます(最判平成18年10月20日)。

逆に、弁済期後にCさんが差し押さえを行った場合は、Aさんは差押登記後に債務の全額を弁済しても、第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできないとされています。なお、受戻すというのは所有権を取り戻すということになります。
 

④債務者が目的物を第三者に譲渡した場合

債務者等の担保権設定者が目的物を勝手に第三者に譲渡した場合、所有権は誰が取得することになるのでしょうか。

この点について、原則として設定者は無権利者となるので、設定者からの取得者である第三者も所有権を取得しないと考えられていますが、目的物が動産の場合は即時取得(民法192条)によって完全な所有権を取得する余地があります。

事例

法的構成

動産の場合

不動産の場合

担保設定者が第三者に対して担保目的物を売却した場合

所有権的構成(判例)

第三者は所有権を取得しない
ただし192条により完全な所有権を取得しうる

第三者は所有権を取得しない

担保的構成

第三者は譲渡担保権付所有権を取得
ただし、192条により完全な所有権を取得しうる

第三者は譲渡担保権付所有権を取得

担保設定者が第三者に対して目的物に譲渡担保を設定した場合

所有権的構成(判例)

第三者は所有権(譲渡担保権)を取得しない
ただし192条により完全な所有権を取得しうる

第三者は所有権(譲渡担保権)を取得しない

担保的構成

第三者が第二順位の譲渡担保権を取得

第三者は第二順位の譲渡担保権を取得

 

⑤債務者の一般債権者の差し押さえなど

譲渡担保設定者Aさん、譲渡担保権者Bさんがいて、Aさんの債権者(一般債権者)Dさんがいたとします。譲渡担保の目的物をDさんが差し押さえた場合、Bさんは第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることになります。

また、優先弁済の訴えという方法で差し押さえを排除する方法もありますが、Dさんが一般債権者でなく税務署等の場合は、差押えの時期によって結論が変わってきます。

税務署Dが譲渡担保の目的物をAさんの財産として差押えをした後にAさんが債務不履行となりBさんが目的物の所有権を取得した場合、Dは譲渡担保財産について滞納処分を続行することができる結果、Bさんの第三者異議の訴えよりもDの滞納処分が優先されると考えられます。

しかし、Dは譲渡担保財産について滞納処分をする旨をBさんに告知してからでないと滞納処分ができないので、告知から差押えまでの間に目的物をBさんが更に第三者等へ譲渡した場合は、その目的物について滞納処分をすることはできないとされています。

 

譲渡担保の実行

(1)実行方法

譲渡担保を実行するには、一般的に「債務不履行があったので目的物の所有権の取得をもって弁済に充当する」という形を取ります。

この「所有権の取得をもって弁済に充当する」というのは、債権者が貸金額と関わりなく目的物の所有権を丸ごと貰うことができるというわけではなく、目的物が被担保債権額を超えるときには超過分を設定者に返還する義務(清算債務)を負います。

目的物の適正な評価額をもとに清算債務は課されるので、例えば誰かに目的物を売却した場合であっても差額を返済する義務を負うのに変わりありません。
 
1の例1で言えば、A社が返済を滞ったので、B社はタクシー40台を売却してA社の借金の弁済に充てるというのが譲渡担保の実行となりますが、A社の借金が1,500万円しかなかった場合には、B社は2,000万円のうち500万円をA社に返還しなければならないということになります。
 
譲渡担保を実行する際には、まず債権者から担保設定者への実行通知をし、その後に目的物の引き渡し・清算を行うという手順になります。
 

(2)実行上の注意点

譲渡担保自体が法律に規定がないので、その実行に関する問題処理についても基本的には判例に従って処理されることになります。また、その他の部分でも「仮登記担保法」における債務者保護の考え方を参考に処理される傾向にあるため、注意点をまとめてみました。
 

①実行の際には通知が必要

譲渡担保を実行するには、担保権者から担保設定者に「適正価格で目的物の処分または取得を行いますよ」という実行の通知をしなければなりません。

実行の通知が債務者に到達したときに、その効果として債権者は換価処分権または確定的な所有権を取得することができますが、目的物の価額よりも被担保債権額の方が小さく清算義務があるときは、清算が完了したときにこれらの権利を取得することになります。
 

②被担保債権の充当方法

被担保債権の充当方法は、「処分清算方式」と「帰属清算方式」があります。処分清算方式は、目的物を売却等して換価しその代金を債権の弁済に充当する方法で、目的物の価額>被担保債権額の場合は差額(処分の残額)を債務者に返還します。

帰属清算方式は、目的物の所有権を債権者に帰属させ、その適正な評価額をもって債権の弁済に充当する方法で、目的物の価額>被担保債権額の場合は差額分を債務者に支払うという方法です。
なお、どちらの方法によるかは契約次第になります。
 

③債務者の受戻権(取戻権)の制限

債務者には弁済を行うことで譲渡担保目的物の所有権を取り戻す権利(受戻権)がありますが、債務者が弁済期に弁済しない場合や債権者が目的物を第三者に譲渡等した場合には、債務者の受戻権は失われます(最判昭和62年2月12日)。

ただし、例外的に弁済期を過ぎてしまってからでも目的物を取り戻すことができる場合があります。処分清算方式の場合は、「処分の時」すなわち換価処分時までは受戻権を行使できます。

これは、債権者と第三者の間で売買契約が成立したときを指し、それを過ぎてしまった場合は原則として目的物を取り戻すことはできません(最判昭和57年1月22日)。
 
帰属清算方式の場合は、債権者が債務者に対し「清算金の支払いまたはその提供をしたとき」(目的物の適正価額が債務額を上回らないときには、その旨の通知をしたとき)までが受戻権を行使できる期間になります(最判昭和62年2月12日)。
 

④目的物の引き渡しと清算債務は同時履行

債務者が譲渡担保目的物を占有している場合、債権者は弁済期になれば債務者に対してその引き渡し(明け渡し)を請求することができますが、債権者に清算義務があることから、債権者は清算金の支払いと目的物の引渡請求を同時にするべきと主張することができます(最判昭和46年3月26日)。

これらは引換給付の関係にあるので、同時履行となり、債務者が適正な清算金の支払いを受けるまで目的物の引き渡しを拒んでも債務不履行にはなりません(債権者は遅延損害金などを請求することはできません)。
 

⑤譲渡担保設定者の義務

譲渡担保設定者は目的物に対し担保保存義務を負います。つまり、設定者が目的物を滅失・損傷した場合や、第三者に目的物を譲渡し即時取得させた場合には、債権者に対して損害賠償責任を負うことになります。

なお、これらの義務を負うのは譲渡担保の実行時(被担保債務の弁済期)までです。

 

譲渡担保を有効に設定する方法

動産・不動産の譲渡担保

動産や不動産の譲渡担保を設定するには、当事者間で譲渡担保設定契約を締結しなければなりません。

債権者と目的物所有者(債務者または物上保証人)が当事者となり、両者の同意によって成立します(諾成契約)。このとき、契約書など一定の様式は必要ありません(不要式契約)が、実際の取引場面では書面契約を取り交わすことが多いです。
 

①動産の場合の書式例

動産譲渡担保設定契約書

 
債権者アシロ太郎(以下、「甲」という。)と債務者アシロ花子(以下、「乙」という。)は、次の通り譲渡担保設定契約を締結する。
 
第1条
債務者乙が、債権者甲に対して負担する、平成28年12月10日付金銭消費貸借契約による、元金100万円の債務が存在することを確認し、これを平成29年4月1日までに、元金に対する年5分の利息とともに甲に持参または送金して支払う。乙が本契約に基づく債務の弁済を遅滞したときは、遅滞の翌日から遅滞金額に年1割の遅延損害金を付加して支払う義務を負う。
 
第2条
乙は、前条記載の債務の支払いを担保するため、その所有する自家用車1台(日産ジューク 中野3○0 あ××-××)を甲に譲渡し、甲は占有改定によりその引渡しを受けた。
 
第3条
甲は乙に対し、本件物件をその用法に従い、第1条の弁済期まで無償で貸与し使用させるとともに、乙はこれを借り受け、善良なる管理者の注意をもって使用する。なお、本件物件についての通常の必要費は乙の負担とする。
 
第4条
乙が弁済期に債務の弁済を怠ったときは、前条の使用貸借は当然にその効力を失い、乙は甲に対し、直ちに本件物件を引き渡さなければならない。
 
第5条
前条により甲が本件物件の引渡しを受けた時は、甲は遅滞なく本件物件を任意に換価処分し、第1条記載の元金および利息ならび遅延損害金の弁済に充当する。ただし、甲は剰余金があればこれを乙に返還し、不足金があれば乙に請求することができるものとする。
 
以上、本契約を証するためこの証書を作り各署名・押印し各その1通を保有する。
 
平成28年12月10日
住所 東京都新宿区西新宿○-○-○
氏名(甲)  アシロ 太郎 印
住所 東京都新宿区西新宿○-○
氏名(乙)  アシロ 花子 印

 

②不動産の場合の書式例

不動産譲渡担保設定契約書
 
債権者アシロ太郎(以下、「甲」という。)と債務者アシロ次郎(以下、「乙」という。)は、次の通り譲渡担保設定契約を締結する。
 
第1条
債務者乙が、債権者甲に対して負担する、平成29年2月10日付金銭消費貸借契約による、元金2,000万円の債務が存在することを確認し、これを平成30年12月31日までに、元金に対する年6分の利息とともに甲に送金して支払う。乙が本契約に基づく債務の弁済を遅滞したときは、遅滞の翌日から遅滞金額に年3割の遅延損害金を付加して支払う義務を負う。
 
第2条
乙は、前条記載の債務の支払いを担保するため、その所有する後記不動産を甲に譲渡し、甲に所有権移転登記を行う。
 
第3条
甲は乙に対し、本件物件をその用法に従い、第1条の弁済期まで無償で貸与し使用させるとともに、乙はこれを借り受け、善良なる管理者の注意をもって使用する。なお、本件物件についての通常の必要費・公租公課・保険料は乙の負担とする。
 
第4条
乙が弁済期に債務の弁済を怠ったときは、前条の使用貸借は当然にその効力を失い、乙は甲に対し、直ちに本件物件を引き渡さなければならない。
 
第5条
前条により甲が本件物件の引渡しを受けた時は、甲は遅滞なく本件物件を任意に換価処分し、第1条記載の元金および利息・遅延損害金の弁済に充当する。ただし、甲は剰余金があればこれを乙に返還し、不足金があれば乙に請求することができるものとする。
 
 担保物件の表示
所  在  東京都新宿区西新宿○-○
家屋番号  △△△△△△△△
種  類  居宅
床 面 積  1階 ○○㎡
      2階 ○○㎡
構  造  鉄筋コンクリート造2階建て
 
以上、本契約を証するためこの証書を作り各署名・押印し各その1通を保有する。
 
平成28年12月10日
住所 東京都新宿区西新宿○-○-○
氏名(甲)  アシロ 太郎 印
住所 東京都新宿区西新宿○-○
氏名(乙)  アシロ 次郎 印

※これらの書式例はあくまで簡略化した一例なので、もっと詳細に契約書を取り交わすことが多いです。
 

債権の譲渡担保

債権の譲渡担保は、債権譲渡の方法で行うことになります。その際の手順としては、譲渡担保設定者と譲渡担保権者で債権譲渡担保契約を締結し、債権譲渡の通知・承諾を行い、確定日付の証書を作成します。

このとき、確定日付の証書というのは、公証人役場の日付印や郵便局の局印など公的機関の日付(当事者等が改変できない日付)の入った債権譲渡通知書・承諾書のことを指します。

債権の譲渡担保は、譲渡の目的とされる債権の①発生原因と内容、②額、③始期と終期、④債権の種類等が明確であるなどして特定されていれば、将来発生すべき債権を目的とすることもできるので、その特定については充分に注意を払わなくてはなりません。
 
 

自己破産と譲渡担保の関係について

最後に自己破産と譲渡担保についてご紹介しておきます。
 

債務者が破産した場合

①処分清算方式の場合

処分清算方式の場合、譲渡担保権者は破産手続きによらず、任意に目的物の処分をすることができます。このとき、目的物を破産管財人が管理している場合には、引き渡しを受ければ問題ありません。譲渡担保設定者が破産していても、目的物の価額が被担保債権額を上回ればその差額を清算する義務は残りますので、この場合は清算金を破産財団に支払うことになります。

また、破産管財人は清算金の支払いを求めることができるほか、換価処分前であれば設定者同様被担保債権の弁済をすることで受戻権を行使することができると考えられます。
 

②帰属清算方式の場合

帰属清算方式の場合も、譲渡担保権者は「別除権」という破産手続きによらないで目的物を回収・取得する権利を行使することができます。

このとき、目的物を破産管財人が管理している場合には、清算金の支払いと目的物の引渡が同時履行の関係になり、破産管財人は清算金の支払いがなされるまで目的物を留置することができるとされています。
 
なお、どちらの場合であっても、被担保債権額>目的物の価額となり被担保債権に残額がある場合は、担保権者は破産債権者として配当を受けることになります(破産法103条)。
担保権者が配当を受けるためには、最後配当の除斥期間内に譲渡担保権を実行し不足額を証明するか、破産管財人との間で被担保債権厳粛合意をする必要があります(破産法198条3項)。
 

債権者が破産した場合

 債権者=譲渡担保権者が破産した場合、譲渡担保設定者は被担保債権を弁済することで目的物を破産財団(破産者の財産のことを言います)から受戻すことができます。つまり、譲渡担保の目的物の管理・処分権が債権者から破産財団へ移行するということなので、それに伴って弁済の相手方や清算金の請求先が変わるということです。

設定者が弁済期に被担保債権を弁済できないときは、債権者の代わりに破産管財人が譲渡担保を実行し清算を行い、その清算金は財団債権として扱われることになります(破産法148条)。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

譲渡担保は専門性が非常に高く、説明や解説もわかりにくい場合がほとんどです。できるだけ分かりやすく整理してみましたが、少しでも理解の助けになれば幸いです。

 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

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