亡くなった親の借金…子が払わなきゃいけない?

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公開日:2018.5.11 

亡くなった親の借金…子が払わなきゃいけない?

昨年、自己破産の申し立て件数が13年ぶりに増加したそうです。手軽な銀行カードローンの普及の影響ではないかとも言われています。

 

それだけお金を借りるのが簡単になっているのだと言えそうです。カードローンや消費者金融などからの借金の他、住宅ローンや奨学金、クレジットカードのリボ払いなども含めると、実際に借金がある状態の人はかなりの数にのぼるでしょう。

 

借金が珍しくない現代、これを残したまま亡くなる方も少なくはありません。もし自分の親が借金を残して亡くなったら子としてこれをどうすればよいのでしょう?

 

和田金法律事務所の渡邊寛弁護士にうかがいました。

 

■借金も財産とともに相続される

親が亡くなった後に貸金業者から督促状が届いた場合、子には支払いの義務はありますか?

 

「支払う義務があります。親が亡くなった場合、その子は法定相続人になり、プラスの財産とともにマイナスの債務も相続します。この時、借金のように分割可能な債務は、相続分に応じて分割して相続します。

 

(渡邊弁護士)不動産などの分割しにくい財産がある場合も、相続人同士で話し合って財産を分け合う遺産分割を行うことができますが、借金のようなマイナスの債務は遺産分割の対象にはなりません。そのため、他の相続人の方が多く遺産を受け取っていたとしても、貸金業者に対しては法定相続分の借金について返済の義務を負うことになります」

 

■保証人としての債務も相続対象

亡くなった親が誰かの借金の保証人、連帯保証人になっていた場合はどうでしょうか? 子が保証人としての債務を負う可能性はありますか?

 

(渡邊弁護士)「借金と同様に保証債務として法定相続分に応じて相続するのが原則です。ただし、身元保証のような特に個人的な信頼関係に基づく保証や、継続的取引についての限度額のない包括的な信用保証は相続されません。そのため、保証の内容や、対象となる借入が親の生前になされたものか死後になされたものかで責任の有無・範囲が違ってきます」

 

 

■借金を相続したくなければ相続放棄

とはいえ、いくら親のものだといってもマイナスを受け継ぐわけにはいかない場合もあります。この債務を拒否するにはどうしたらよいのでしょうか?

 

(渡邊弁護士)「原則として支払いは拒否できませんが、例外的に相続放棄が認められることがあります。相続人が相続放棄をすると、初めから相続人でなかったことになりますので、プラスの財産もマイナスの債務も承継しません。

 

(全部放棄するのではなくプラスの財産の範囲内で債務を承継する限定承認という手続きもあります。限定承認はバランスがいいようにも思えますが、相続人全員で申立てなければならず、清算手続きの手間がかかることもあってあまり選択されません)」

 

相続放棄でマイナスの債務を拒否するには、プラスの財産も放棄しなければならないのです。どちらかだけを手に入れることはできません。

 

「相続を放棄する場合、原則として、相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申し立てなければなりません。例外的に、自分が相続する財産が全くないと信じていて、相続財産の有無を調査しなかったことに過失もなかったようなときは、相続放棄が認められることがあります。

 

この場合でも、貸金業者の督促状を受け取ってから3か月以内に相続放棄の申立てをする必要があります。

 

他方、相続後、督促を受けるまで数年経っていたとか、財産を承継したけれど督促された借入については知らなかったとかという事情だけでは相続放棄は難しいように思います。

 

ただし、長いこと取引も返済もなかったのであれば、消滅時効が完成している可能性もあります。なお、相続放棄も消滅時効も、一部でも返済してしまうと申立てや主張ができなくなるおそれがありますので注意が必要です」

 

原則的に、親の借金を子が返済する義務はありません。しかし親が亡くなった場合は債務を相続することになるのです。親も子も、このようなマイナスの財産の相続の可能性や手続きについての知識を持ち、場合によっては生前に話し合っておくことが大切です。

 

*取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。
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本記事はベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)に掲載される記事は弁護士・司法書士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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