2022年4月1日より成年年齢が18歳に引き下げられるとともに、今までの制度と同じであれば18歳以上は親の同意がなくてもクレジットカードを作ることができることになります。
キャッシュレスが進んでいる背景もあり、クレジットカードを持つことで生活が益々便利になるでしょう。しかし便利になる一方で、クレジットカードを上手に利用できないと多重債務に陥り生活が破綻してしまうなどのリスクが生じます。
子供が上手にクレジットカードと付き合っていくには、家庭内での教育が必要です。
では具体的に何をどのように伝えればいいのか、秋田大学の堀江さおり先生にお話をお伺いしました。
堀江 さおり
秋田大学 准教授
民間企業,私立中高一貫校非常勤講師,国民生活センター,公正取引委員会,宮崎大学教育学部講師を経て現職。
専門は,家庭科教育,消費者教育,金銭・金融教育。
|
子供がクレジットカードを持つ際にまず考えるべきこと
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)編集部:子供がクレジットカードを持つ際、まずなにを考えるべきでしょうか?
堀江先生:
まず、クレジットカードを何枚持つかを考えることが重要です。
4~5枚持っている人も多くいますが、「多くのクレジットカードを持つ行為が決して良いことではない」と知っておかなければなりません。
クレジットカードの枚数が増えれば増えるほど、管理しにくくなってしまいますし、引き落としのタイミングがバラバラだとお金の管理も難しくなります。
クレジットカードを使用するのであれば、目に見えないお金と現金の両方を管理していかなければいけません。
給料日など自分が収入を得るタイミングや生活スタイルを踏まえて、どのカードを作るのか吟味する必要があります。
|
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)編集部:
なるほど。最近は魅力的な特典やキャラクターデザインのカードも多いため、つい増やしたくなってしまいます。
堀江先生:
そうですね。
特典に目がいきやすいですが、クレジットカードを使うことは「借金する行為である」と認識させておくのも重要です。
支払えないからと踏み倒せるものではないことを前提として、理解させておく必要があるでしょう。
|
子供がクレジットカードを持つ際に必要な家庭教育①
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)編集部:
子供がクレジットカードを持つ際、家庭ではどのような教育が必要なのでしょうか?
物欲などに任せてお金を使わないように、我慢を教えることも必要になってくるかなと思うのですが…。
堀江先生:
我慢が必ずしもよい結果に結び付くわけではありません。
お金は限られているからこそ、しっかりと使い道の優先順位を考えることが重要になってくると思います。
優先順位は、今お金を使うことによって、この後の生活がどのように変わるのか、どのような満足が得られるのかなどを考え総合的に判断します。
短絡的に「買いたいから買う」とお金を使ってしまうのは非常に危険です。
|
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)編集部
なるほど、我慢ではなく優先順位決めが重要なのですね。
堀江先生:
そうですね。
友人が持っているからと言って、ブランドものを欲しがる子供も多いのですが、今買ってしまった場合、他の何かをあきらめる必要がありますよね。
でも、諦めたものが本当に諦めてよかったものなのかをしっかり考える必要があります。選ばなかったことによって得られる利益は何か、という考え方は重要です。
自分の置かれている状況でベストチョイスできる力を育てることが欲望のコントロールにもつながっていくと思います。
|
子供がクレジットカードを持つ際に必要な家庭教育②
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ):
先ほどは考え方について教えてもらいましたが、手続きなどについても家庭でしっかり教えておくべきでしょうか。
堀江先生:
クレジットカードに申し込む際、多くのケースでリボ払いをすすめられるので、リボ払いの仕組みについてはしっかり教えておくべきだと思います。
デメリットを知らないまま、子供が使ってしまうと、最終的に返済できず多重債務になってしまう可能性もあります。
|
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)編集部
事前知識なくリボ払いを使用し、苦労した思い出があります…
クレジットカード会社のCMを見て、お得と思いこんでいました。
堀江先生:
申し込みの際によく理解できないままリボ払いに誘導されてしまうと、返済が困難になってしまう可能性があります。
最近では情報があふれているため、CMも含め情報の精査が重要です。
私たちは基本的に、1番最初に引っかかってきた情報を信じやすい傾向にありますが、インターネット検索の1番上にある情報が必ずしも正しいとは限りません。
また、高校生くらいだと周りの同調圧力も含めて、人の目を気にする子が多くいます。そうなると、ネット上の口コミにこだわりやすくなるでしょう。
しかし、ネット口コミやランキングサイトは何とでも書けるため、情報の正しさを担保できていないこともあると思われます。
まずは、クレジットカード協会などの中立的な団体の公式HPから、一般的なクレジットカードの選び方や仕組みなど基礎知識を身につけましょう。
親子そろって確認するのがベストですが、一緒に確認することが難しい場合、サイトタイトルを教える、こういうものを見て勉強するよう伝えるなど最低限のアドバイスは必要です。
お金ひとつ取っても、人生設計ひとつとっても、「正しく選べること」がすごく重要になってきているので、若いうちから「選ぶ嗅覚」を鋭くすることが必要だと思います。
|
堀江先生:
また計画的にお金を使っていても、給料の減額や解雇などにより急に返済できない状況になってしまうかもしれません。
正しい解決方法を知らないままだと、負の連鎖がどんどん続いていく可能性もあります。
失敗してしまったらちゃんと自分で行動してそれを解決していかなければいけないことや、自力解決ができない場合は相談先を探して対処すべきことも伝えておく必要があります。
|
親が知っておいてほしい子供の金銭事情
堀江先生:
今の子供たちの付き合いは親世代の子供時代よりもお金がかかる傾向にあります。
昔のように自然の中で遊ぶだけでは、友達関係も成り立たなくなってきていると思います。親世代と子供世代ではお金の感覚や捉え方が大きく異なっているのではないでしょうか。
そのため、大人の価値観を子供に押し付けるのではなく、子供の金銭事情も考慮してあげることが必要です。
ただ、すべてにお金をかけられるわけではないので、優先順位をつけて子供たちに適した方法を一緒に探していく必要があると思います。
|
成人年齢が18歳になり同意なくクレジットカードを作れるようになった場合のリスク
ベンナビ債務整理(旧:債務整理ナビ)編集部
成人年齢が18歳に引き下げになった場合、今のままでいくと18歳になった時点で親の同意なく、クレジットカードを作れるようになります。
そうなった場合、どのようなリスクが考えられますか?
堀江先生:
18歳で安定した収入がない場合、そもそもクレジットカードの審査に通るのか、というのが1番の問題になると思います。
クレジットカード会社が未回収になる可能性のある人に、クレジットカードを発行するとは考えにくい気がします。
成人年齢が18歳に引き下がるからこそ、審査が厳しくなる可能性も考えられるのではないでしょうか。
返せない人に貸しても、お互いに苦しい思いをするだけなので。
その一方で、クレジットカード会社を含め貸金業者がビジネスチャンスととらえるのであれば、いいカモにされるリスクも考えられますので、どちらにせよ家庭でしっかりと教育する必要があるでしょう。
|
まとめ
子供がクレジットカードを持っても、自分の収入に見合った使い方ができるようにするためには、家庭内の教育が重要です。
クレジットカードに関する基礎知識を一緒に確認することはもちろん、自分の置かれている状況でベストチョイスを選べる力を育ててあげられることが求められます。